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木村拓哉 『アイムホーム』で「完全に脱皮した」との評価も

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 さて、今回のクールの当たり作品はどれか。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が俯瞰した。

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 いよいよ春ドラマが始まり、注目作がズラリ並んでいます。まずは有名な「原作」があって、ジャニーズが主役を担う3作品をピックアップ。『ようこそ、わが家へ』(フジ系月曜21時)、『アイムホーム』(テレ朝系木曜21時)『アルジャーノンに花束を』(TBS系金曜22時)のスタート具合はいかに?

 ドラマの面白さを創り出す要素は3つある。

 脚本、演出、役者。この3つが、それぞれ力を十分に発揮して、三位一体となって溶け合った時、最高に面白い作品が出来上がるのではないか、と思います。その視点からスタート回を見回せば……。

●『ようこそ、わが家へ』

 原作は、あの『半沢直樹』の著者・池井戸潤氏による同名の小説(小学館)。主役は相葉雅紀。冒頭、のっけから大写しにされた一本の「傘」。印象的にアップされ、次のシーンでもふっと目に入る。また次のシーンでも。

 日常的な道具である「傘」が、物語の助走路を引っぱっていく小道具として効果的に使われる。そして物語の原点となる「事件」の原因の一つにもなる。

 ところが。驚いたことに、原作に「傘」の描写は無い。まさしく、脚本と演出によってドラマ化独自の仕掛けが生まれている。池井戸小説という、いわば骨組みがしっかりとしたフィクション世界の面白さを、いかに映像化しビジュアル表現に落とし込んでいくのか? 冒頭の「傘」一本にさえ、ドラマ作りの工夫と冒険が見てとれる。

 ナレーションも、小説には無い要素。ゆっくりと静かに語る主人公のナレーションが、実に効いている。誰もが抱えていそうな迷いある平凡な人生、日常の中に潜む、はがゆい思いの吐露。ナレーションによって主人公の性格や人物像がしっかりと立ち上がる。キャラクターの輪郭が見えてくる。

 その役を演じる相葉雅紀自身、お人好しでちょっと情けない等身大の現代人になりきれている。そう、ドラマ『ようこそ、わが家へ』の入口は脚本、演出、役者ともに、これからを期待させるに十分の手応えです。

「傘」だけではない。原作とドラマでは、主人公が父から息子へと変わっていたり、オリジナルのキャラクターが登場したりとあちこちに発見が。原作を読みながらドラマ画面を味わう「デュアル」鑑賞法も楽しめそうです。

●『アイムホーム』

鳴り物入りで始まったキムタクのテレ朝連続ドラマ初主演作。原作は石坂啓の漫画「アイ’ム ホーム」(小学館)。主人公は、単身赴任先の事故で記憶を無くしたサラリーマン・家路久(木村拓哉)。

 妻の恵(上戸彩)や息子が仮面をかぶっているようにしか見えないとまどい。家路は手元に残った10本の鍵を握りしめつつ、自分の過去を探し始めるという物語。

 何といっても、まず役者力が突出している。さすがキムタクと、初回で息を呑みました。抑制の効いた演技が実にいい。矛盾やとまどいにひとつずつ向き合っていく人物描写がとても丁寧で、無駄や過剰がなく、リアルな感覚で伝わってくる。

 キムタクといえば、出発点は誰もが認める超二枚目アイドル。その時期が過ぎても役柄を担わされ続け、時にその姿は痛々しく映った。「何をやってもキムタク」などと揶揄される時期もあった。今回、主人公の心の模索を淡々と語るナレーションには、超二枚目として登場しなければならなかった「ロン毛ヤサ男」の悲哀を完全に乗り越えた、静かな円熟と落ち着きを感じます。この作品で役者・木村拓哉は次のステージへと完全に脱皮した。そう説得されるようなオープニング。

 もちろん、その背景には脱皮させた演出の力があり、原作を上手に活用して10本の鍵の謎を1回ずつ配するといった凝った構成、ストーリーに毎回落ちをつけていく脚本の力が効いている。

●『アルジャーノンに花束を』

 1960年代に発表されたダニエル・キイスの世界的なベストセラーが原作(日本版・早川書房)。現代日本に舞台を移したこのドラマ。山下智久演じる主人公・白鳥咲人は、6歳児並みの知能しか持たない精神遅滞者。その青年が、手術で高いIQを手に入れるという筋書きは原作と同じらしい。

 たとえ世に名だたる原作があり、主役がジャニーズであっても、ドラマとして注目され、楽しんで見続けることになるかどうかは、別の問題。

 ドラマの3要素--脚本、演出、役者の3つの力が揃った時こそ、架空の世界が説得力をもってぐんと迫ってくる。もし脚本と演出が不十分であれば、役者の持ち味を生かすこともできないし、見続けていく気力も今ひとつ沸いてこないのです。


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