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編集者の蔵前仁一さんが語る「旅を仕事にするということ」

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蔵前仁一著「よく晴れた日にイランへ」より

こんにちは。TRiPORTライター赤崎えいかです。「旅が仕事になったらいいな…」と考える人もいるでしょう。旅をして、それを本にして、そして出版社「旅行人」を立ち上げ、多くの本を出版されてきた蔵前仁一さん。前編に続いて、後編では「旅を仕事にする方法」についてインタビューしてみました。


ー蔵前さんのように「旅を仕事にする」ことに魅力を感じる人もいますが、そのことに関してはどのように感じていますか?
旅に出て、そのことを文章にして売れればいいと思うよ。売れればそれでいい。自分がしたことに対して、誰かがお金を払ってくれるかどうか、どういう風にそれができるのかが問題。1ヶ月10万円必要な人と、100万円必要な人ではやり方が違ってくるからね。
一番単純で現実的な旅の仕事としてガイドブックの仕事があるけれど、向き不向きがある。僕は少しやったことがあるけれど「本当に向かないな」と。そもそも方向音痴だから描いているうちに地図がよくわからなくなっているんだよね(笑)。僕は全く向かないとそこでわかったので、ガイドブックを作るときは全部他の人に取材してもらっている。

自分が泊まりもしないホテルに行って、部屋を見せてもらったり、「カードは使えますか?」って聞いたりしなくてはいけないことが僕にとってはストレスで、ガイドブックの仕事で食べていこうとするなんて苦痛以外の何物でもないなと思った。
だけど、人によっては取材が得意で、それが楽しくてしょうがない人もいる。それによって増えていく知識の蓄積で、旅がますます楽しくなる人もいる。
どのようなネタを掴むかが決め手で「その人じゃないといけない」というネタがあるかなんだよね。ダイヤモンドが好きなら、世界中のダイヤモンドに関係する場所を渡り歩いて「ダイヤモンドといえばこの人!」というところまでいけばお金になる。その人にとって、ダイヤモンドに精通することは楽しいだろうし、それを追求する旅は面白いはずだよね。何か自分の好きなことを10年も突き詰めていけば専門家になれるし、そしたらそれが仕事になる。それで大金持ちになれるのかはわからないけれど、好きなものを追いかける人生は絶対に楽しいと思うよ。

ー4月15日に新しく「イラン」の本が発売になりますが、どうしてイランを選ばれたのですか?

僕は24年前、アジアを横断したときにイランを通っているんだけど、そのときはメジャーな観光都市を旅行しただけだった。戦争が終わったばかりで状態が悪く、情報も少なかったので他の場所へは行けなかったんですよ。今でも日本にはイラン情報が少ないし、あったとしてもほとんど世界遺産の情報など、メジャーなものばかり。そうではなくて、例えばザグロス山脈という場所には、今にも崩れそうな何百件の家々が山肌にへばりついている村がある。電気は一応通っているけど、ほとんど自給自足の生活をしていて、携帯電話は圏外。急病人が出ると、遠くにある電波のある場所まで走って行くんだって。
他にも女の人がヘジャブ(※イスラム教の女性に義務づけられている頭を覆うベール)を被らなければいけないというのは事実だけれど、実際は被りさえすれば何でもいいということもある。そういったものを紹介したいと思ったのが、イランを選んだ理由かな。

ー「中東は危険・怖い」というイメージが一般的に先行すると思うのですが、実際はどうでしたか?
まずイランとイラクの区別がつかない人が多いよね(笑)。名前は似ていても全然違うんだよ。本にも書いているけれど、イランは全く問題ない! もちろん危険がないわけではないけど、パキスタン寄りの一部の場所さえ避ければ問題ないと思う。

ーイランでは絨毯も見に行ったんですか?
絨毯好きの僕としては、イランのものは特にきれいだから見逃せない。一般的にペルシャ絨毯と呼ばれているのは街の工房で作られているもの。僕はそれではなく遊牧民が織っているトライバルラグが特に好きなんですよ。絨毯屋さんに聞いたら、今でも遊牧民が織っていると言うから驚いた。そして会いに行ってみたら、今の遊牧民は携帯電話を持ってるからすぐに連絡が取れて簡単に会えた(笑)。

蔵前仁一著「よく晴れた日にイランへ」より

ーTRiPORTの読者には女性も多いですが、女性一人で行っても問題はなさそうですか?
女性一人だとオススメはできないね。インドでも勧めないよ。それと同じ感じかな。イランはイスラム圏だから、女性が一人で旅行すること自体が非常識になってしまうんだよね。そういう意味でオススメはできないけれど、実際は女性でもイランを旅している人はいるよ。

ーイランはより多くの人に行って欲しいと思える国ですか?
ヨーロッパのような雰囲気の旅行を楽しみたい人には勧めないけれど、トルコやエジプト、インドなどに興味がある人は行ってもいいんじゃないかな? インドよりは気軽に行けると思うし、新しい驚きに溢れている国だからぜひ行ってみて欲しい。

「観光地より自分が面白い場所へ」 蔵前仁一さんインタビュー

[蔵前仁一(くらまえ・じんいち)
作家、グラフィック・デザイナー、編集者。1956年鹿児島県生まれ。慶応大学法学部政治学科卒。1980年代からアジアを中心に世界各国へ旅をする。1995年に有限会社旅行人を設立し、旅行雑誌、ガイドブックなどを発行する。著書に『新ゴーゴー・インド』、『新ゴーゴー・アジア』、『シベリア鉄道9300キロ』、『わけいっても、わけいっても、インド』、『バルカンの花、コーカサスの虹』(いずれも旅行人刊)、『あの日、僕は旅に出た』(幻冬舎)など多数。
旅行人サイト
*最新刊『よく晴れた日にイランへ』(旅行人)は2015年4月15日発刊。]

(インタビュー・写真・ライター:赤崎えいか

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