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「観光地より自分が面白い場所へ」 蔵前仁一さんインタビュー

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蔵前仁一著「よく晴れた日イランへ」より

こんにちは。TRiPORTライター赤崎えいかです。旅人ならば「旅行人」が出版している本を、一度は手にしたことがあるはず。ボロボロになるまでお気に入りの本を何度も読み返しているのは私だけではないと思います。本のなかには、まるで自分がその国の風に吹かれているかのような言葉や写真、そして心を揺さぶるような情報がいっぱい詰まっていることもあり、旅への気持ちを高揚させてくれるものばかりです。

今回は多くの旅の本を執筆され、そして「旅行人」を設立し、現在も旅を続ける蔵前仁一さんにインタビューさせていただきました。前編では「これからの旅」について。後編では「旅を仕事にすること」。そして新刊の「晴れた日にイランへ」についてお伺いしました。

観光地より「自分にとって」面白いところへ

ー自由に旅ができるようになった現在でこその「旅の魅力」とはなんでしょうか?
自分が旅に出ようと思うのは「おもしろい」から。そう感じないと旅になんて出るわけがない。他の人を旅に出させようとして「視野が広がるよ」とか言っても出るわけがないんだよね。学校の授業みたいに「歴史を学ぶべき!」というように旅を勧めたって、それで旅に出るのは超真面目な人だけだよ(笑)。
何年か前に鉄道の本を作ったんだけど、そのとき初めて、鉄道マニアがセルビアに行っている現状を知った。有名な鉄道があるらしくて、マニアはわざわざセルビアまで行って、週に一度か二度だけ運行される蒸気機関車に乗るんだよね。アメリカ鉄道の本を作ったときに知ったのは、砂漠みたいな何にもない場所にあるNASAのロケットを積んだ貨物列車とかを見に行くためだけに、わざわざレンタカーを借りて行っているということ。鉄道マニアの人たちは自分の楽しみのためならどこの国でも、どんな荒涼の地でも行くんだよね。

世界遺産とか観光名所は確かに人気がある場所で、一般的には「美しい」「おもしろい」と言われてはいるけれど、必ずしも、その人や自分がそれを見て感動するとは限らない。きっと万人受けするものはもうあまり魅力的ではなくなってきていて、それより自分の好きなものを追求するほうがよくなってきている。マニアやオタク的なもの、個人的な趣味のようなもののほうが旅へ行く強い動機付けになるし、今はその気になれば、それが簡単にできるような時代になった。

ーネットで見られるものでも実物を見に行ったほうがいいと思う理由はありますか?
別に観光地に行く必要がないとは言わないけど「とりあえずエッフェル塔を見に行こう」っていう動機だと、動機としては薄いし、それほどの感動が得られない可能性が高い。そういうのはハッキリ言って、大して面白くないよ。だけど、そこに到着するまでにいろんなことがある。道に迷ったり、騙されたり…。観光地で何かを見たときの感動より、実際に自分が体験したり、発見したりしたことのほうが断然面白くて、心に残る。
僕がまだフランスなどには行ったことがない理由は、なるべく日本と違うところへ行きたくて、ほとんど情報がないところを好んで行っているから。物価が安くて、あまり知られていない国で、日本の常識がほとんど通じないような場所。アメリカでは日本の常識がほとんど通用するんだよ。感覚的に理解できる場所に行っても面白くないんだよね。

「途中」こそ、旅の醍醐味

ー常識が通じない国へ行くと、どうして楽しいのでしょうか?
異文化だからね。常識の範囲内で理解できるものを見たって、違う見方ができるようにはならない。それはただの確認行為だよ。自分が本当に驚くものは、もっと違うところにあるんだよね。それはどこにあるかわからないから、たまたま出会うために行動するしかないんだよ。
例えば、タージマハルを見に行ったときに、まっすぐ前だけを見ていたらタージマハルしか見えない。でも、横を見るとまた違う世界が広がっている。タージマハルのすぐ近くの街の壁に描かれている絵がとてもキレイだったり、たまたま入ったお店の料理がとてもおいしかったり…。他にも、現地の人と写真を一緒に撮ったとかさ。そういうものの積み重ねで世界は構築されていて、それが本当の世界。「本当の」って言うと変な感じがするかもしれないけれど、実際に行くと感覚としてそれが理解できると思う。
旅の目的地を設定するのはいいと思うけど、なるべくなら陸路で行ったほうがいい。やっぱり目的地に行くまでの「途中」こそ、旅の醍醐味だよね。

蔵前仁一著「よく晴れた日にイランへ」より

世界は結構面白い

ネットでその目的地を見たときに「これでいいや」って満足できる人は、行く必要はないですね。行っても写真以上のものを発見できないだろうから。もったいないとは思うけど、行く必要がないと感じる人に「行ったほうがいいよ」と言っても、それは無駄な努力だよね。
一歩出れば、世界には結構面白いことがある。それこそ今はグーグルマップを広げるだけでも、実際にその場所までの行き方を調べることができる。そこにホテルのマークがあればもう現実的にそこへ行ける。行こうと思えば、それだけでも旅行できるんだよね。

[蔵前仁一(くらまえ・じんいち)
作家、グラフィック・デザイナー、編集者。1956年鹿児島県生まれ。慶応大学法学部政治学科卒。1980年代からアジアを中心に世界各国へ旅をする。1995年に有限会社旅行人を設立し、旅行雑誌、ガイドブックなどを発行する。著書に『新ゴーゴー・インド』、『新ゴーゴー・アジア』、『シベリア鉄道9300キロ』、『わけいっても、わけいっても、インド』、『バルカンの花、コーカサスの虹』(いずれも旅行人刊)、『あの日、僕は旅に出た』(幻冬舎)など多数。
旅行人サイト
*最新刊『よく晴れた日にイランへ』(旅行人)は2015年4月15日発刊。]

(インタビュー・写真・ライター:赤崎えいか

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