ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

刑事司法の危機

DATE:
  • ガジェット通信を≫

 民事事件の和解期日などのときには、裁判官などが当事者それぞれから言い分を聞くので、かなりの待ち時間がある。そのため弁護士は文庫本などを持ち歩いていて、待ち時間は読書時間となる。私は小型のノートを持ち歩き、読んでいる本の中で興味のある記述に当たると、その記述を、ノートを備忘録として書き留めておいた。今読み返してみると、刑事事件に関する次のような書き写しがあった。

 ハーバード大学ロースクール教授であるアラン・ダーショウィッツが「若き弁護士への手紙」という著書で、刑事司法ゲームにおける13の法則というものをあげている。
(1)ほとんどの被告人は実際に罪を犯している
(2)すべての弁護人、検察官及び裁判官は法則1を理解し正しいと信じている
(3)罪を犯した被告人を憲法を守りながら有罪にするよりも憲法を守らないで有罪にする方が容易だし、憲法を守りながら有罪にすることは不可能な場合がある
(4)罪を犯した被告人を有罪にするために自分が憲法上の権利を侵害したかどうかについて嘘をつく警察官は大勢いる
(5)すべての検察官、裁判官、弁護人は法則4を知っている
(6)罪を犯した被告人を有罪にするために憲法上の権利を侵害したかどうかについて警察官が嘘をつくことを黙示的に奨励する検察官は大勢いる
(7)すべての裁判官は法則6を知っている
(8)ほとんどの原審の裁判官は警察官が嘘をついていると知っていても警察官の言っていることを信じるふりをする
(9)すべての控訴審の裁判官は法則8を知っているが嘘をついている警察官を信じているふりをする原審の裁判官を信じているふりをする
(10)ほとんどの裁判官は憲法上の権利が侵害されたかどうかについて被告人が真実を述べている場合でも被告人を信じない
(11)ほとんどの裁判官や検察官は起訴された罪を犯していないと知りながら有罪とすることはない
(12)法則11は犯罪組織の一員・麻薬の密売人・職業的犯罪者及び潜在的密告者には適用されない
(13)正義を欲する人間などはいない
というものである。

 教授は刑事司法をかなり悲観的に捉えている。もちろんアメリカでのことだからそのまま日本に妥当するのかとの疑問もあろう。しかし同じような問題は日本の刑事司法の根底にもある。昔から幾度も刑事司法の危機が叫ばれてきた。

 簡単に私の考えを述べよう。
 第1法則と第2法則が相まって本来の「無罪推定の原則」が「有罪推定の原則」に変貌している。
 第3法則と第4法則及び第6法則は違法捜査の横行とこれを組織ぐるみで隠ぺいしようとする捜査機関の体質を言い当てている。
 第5法則、第7法則~第10法則、第13法則は罪を犯したのだから経緯はどうあれ有罪にすべきとの歪んだイデオロギーが法曹界を支配しているのではないかと思わせる。
 第10法則だけを単独で見るとそのとおりだと思うが、裁判官らに罪を犯していないと知らせるまでに被告人側が闘わなければならないとすれば「合理的な疑いを入れない程度の立証」義務が検察官にあることと、矛盾することになる。
 第11法則は第12法則を導き出すプロローグにすぎないのかもしれない。
 第12法則は冤罪率が最も高いのは組織的犯罪者であることを裏打ちするものである。

 あまりに悲観的すぎるのは問題だが、現在の刑事司法に各法則が指摘する問題点があるということは認識しておくべきであろう。

元記事

刑事司法の危機

関連情報

第1回 はじめに(ある弁護士の獄中体験記)
ツイッター上での悪口は犯罪になりますか?(なっとく法律相談)
通信傍受捜査の対象が拡大へ(今週の話題 ~法律はこう斬る!)

法、納得!どっとこむの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。