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「声を掛けただけ」一般人を犯罪者に豹変させる「不審者」扱いの功罪

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決めつけや思い込みが「優しい人」を犯罪者に豹変させる

「不審者を見かけたら110番」「知らない人についていってはいけません」。よく防犯啓発に使用される言葉で、警戒心を養い犯罪を未然に防ぐ狙いがあります。ごく当たり前なことで、疑問を差し込む余地はありません。しかし、疑問に感じないことが大きな落とし穴となることもあります。

犯罪を企む者も未然に防ぐ者も「唯一無二」であり、同じ人はいません。「不審者」や「知らない人」も話し手と聞き手では、違う印象を持たれて当然です。つまり、公園で子どもに声をかける大人を見て「不審者」と感じる人がいれば、「優しい人」と感じる人もいるはずです。注意すべきは、決めつけや思い込みで疑いを強めれば、「優しい人」を犯罪者に豹変させることがあることです。犯罪を未然に防ごうとする場合、一人一人異なる犯罪者に焦点を合わせることはこうした危険をはらんでいます。

犯行を企む者の「捕まりたくない」という意識は共通

犯罪の発生には「犯行を企む者」「標的(犯行対象)」「犯行機会(チャンス)」の3要素が必要です。「犯行を企む者」は、それぞれ異なる考え方や経験を持っており、共通点を見出すのは困難です。「標的」も犯行を企む者の価値観や趣味嗜好に委ねられています。しかし、「犯行機会」には、犯行を企む者の「捕まりたくない」という意識が共通しています。

犯行機会をなくす、もしくは減らす努力が効果的な防犯対策となり、安全・安心への近道といえます。具体的には「夜道は暗がりを避ける」「鞄は建物側に持つ」などが、犯行機会に焦点を合わせた防犯対策です。防犯対策は何も起こらないことが前提で、その効果が目に見えないことから意識の低下が進みます。徐々に低下する防犯意識は自分では気づき辛く、犯行機会をつくり出してしまう場合があるので注意が必用です。

犯行機会をなくす、減らす環境づくりは最も効果的

しかし、高い防犯意識を維持することは困難で、環境に頼る手法(規範意識を誘発する環境づくり)が考えられています。「防犯環境設計(CPTED)」といい、物的な環境を適切に整備・管理し、効果的に利用することで、犯行の機会を減らすだけでなく犯罪不安を軽減します。今では人や社会の生活の質を向上させるという考え方に基づき、公園など公共施設の整備に生かされています。例えば、警察官が立つ交差点では交通事故が激減するように、人の意識は環境によって変化することを利用した防犯対策です。

また、コミュニティーの促進(人間関係の改善)による手法も見直されています。具体的な例として「美化運動」や「交通安全運動」が挙げられ、規範意識の高い地域では、犯罪の発生率が低いことも報告されています。そして、注目すべきは「犯罪発生率の低下」です。

犯罪を未然に防ぐ対策は、同時に犯罪者をつくらない対策でもあります。犯行を企む者も犯行に至らなければ犯罪者にはならず、被害者もつくりません。犯行機会をなくす、減らす環境づくりは、最も効果的な防犯対策であり、人の育成にも適しています。

家族や地域の在り方を見直す必要がある

犯罪の発生し難い環境とは「割れ窓理論」になぞられた「規範意識(秩序)」が維持された環境です。「割れた窓を放置すれば、やがて全ての窓が破られ、軽微な犯罪が積み重なり、重大犯罪を誘発させる」というこの理論は、過去の重大犯罪や犯罪多発地帯を分析したもので、世界各地で成果を上げています。

突出した例として、ニューヨークの地下鉄が挙げられます。世界一危険と評されたこの場所は、落書きや飲酒、ドラッグなどの温床となっていましたが、落書きを消し、警察官によるパトロールなど「規範意識(秩序)」を維持した結果、汚名を返上することに成功しました。

このように環境を整えることは、犯罪を未然に防ぎ、犯罪を企む者を遠ざける効果があります。他人事とは思えない凶悪犯罪が目立つ昨今、犯罪を未然に防ぎ、同時に犯罪者をつくり出さない環境づくりに目を移し、家族や地域の在り方を見直さなければならないと痛感します。

(神田 正範/防犯・防災コンサルタント)

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