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『Boon』は雑誌のあり方をどう変えようとしているのか? 山口編集長に聞く

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 90年代のストリートカルチャーの発信源だった雑誌『Boon』(祥伝社/刊)が休刊から6年半の沈黙をやぶり、2014年10月に“復刊”。女優の広末涼子さんが表示を飾り、「’90s即GET指令」を巻頭特集として展開し、大きな反響を呼んだ。

 インターネット上では復刊に対して「懐かしい」という声をはじめ、「待望の復活」など好意的な意見が多くみられた。
 近年、『Olive』や『東京ストリートニュース!』といった80年代から90年代にかけて影響を持った雑誌が1号限りの復活を遂げるなど(ただし『Olive』は『GINZA』の付録として)話題になった。しかし、この『Boon』は1号限りではなく継続して発行するという目的を持っての復刊であり、その2号目となる『Boon』2015春号が4月9日に出版された。
 春号の巻頭特集には「エアジョーダン解体新書1985-2015」、第二特集には「激レア新世代」と全盛期の『Boon』ファンにとって馴染みのワードが目に入る。

 新刊JP編集部は再び『Boon』編集長の山口一郎さんにお話をうかがい、『Boon』復刊号の手ごたえと、最新号の内容、そして今後の『Boon』や雑誌の進むべき道についてお話をうかがった。今回はその後編をお伝えする。
(インタビュー・構成:金井元貴)

■『Boon』復刊を通して見えた雑誌の新たな可能性

――巻頭特集の「エアジョーダン解体新書1985-2015」の中でも、最も力を入れた企画はなんですか?

山口:これまでに発売されたエアジョーダン全型を一覧で並べている年表ページですね。エアジョーダンはこれまで29のオリジナルモデルあるのですが、出されていない年もあるんです。ただ、この年にこれが出た、出ていないというのがはっきりしていないところがありまして、例えばエアジョーダン2は1987年発売説とそうではないという説もあって当時の資料も少なく検証が難しいんです。さらに、NIKE JAPANのほうに問い合わせても過去過ぎて断言しにくい、と。そういう状況下で調べ上げたのが、このページです。

スニーカーに非常に詳しいスタッフがいるのですが、2人とも「エアジョーダンが全て並んでいるところを雑誌で見たことがない」と言っていたので、おそらくオリジナルモデルを並べるだけでも世界で初めてではないかなと思います。

――第2特集の「激レア新世代」はまさに『Boon』らしさが溢れていますね。

山口:そうですね。実はジョーダン特集は当初賭けだと思っていたんです。というのも、スタッフ全員が集まった打合せで、「エアジョーダンでいこう」となったときに、スタッフの中から「(エアジョーダンに)興味がない」という声もあったんです。「エアジョーダン」に特化することでターゲットがしぼられてしまうのではないかと。確かにその通りなんです。その後、街に出て調べに行って「やはりエアジョーダンで間違っていない」と思ったのですが、それでも『Boon』らしさをより増すような特集は必要じゃないかと考えました。

「激レア」というワードは『Boon』の武器で、いま枯渇しているものだけではなく、将来値上がりするから今のうちにゲットしておけ、という視点も入っています。「激レア」という器を用意して、ヴィンテージ古着とか、今のヴィンテージとか、ネオヴィンテージといったものを入れていくとか、次にレア化しそうなものを有識者に語ってもらうとかですね。過去現在未来のレアを網羅するような特集になっています。

――さらに、復刊号に引き続き、今回も「街のキーワード」が健在です。

山口:ここでは、パッと思い浮かんで取り上げておきたいけれど、2ページ程度でしかやれないようなネタを取り上げています。

今回もかなり挑戦的ですよね。「愛煙のススメ」とか、世の中が禁煙の流れにある中で本当にやってしまっていいのかと(苦笑)。ただ、こうした世の中の流れに対するアンチテーゼ的なことができるのも『Boon』の強みですし、もちろん煙草が嫌いな人に煙草を勧めるという企画ではなく、煙草を嗜んでいる人たちに向けた企画ですから。そういうことをやっている一方で、SIMフリーについて専門家に話を聞いてみたり、地震予知を検証してみたり、本当に雑多ですね。

――グルメ系では「発掘! 何食ってもウマイ中華料理店」が目に入りました。

山口:これは企画の成り立ちがバカバカしいというか(笑)、ご飯を食べているときに「あの店、何食っても美味しいんだよね」と誰かが言ったんですね。そのとき、なぜ人はほめるときに「何食っても美味い」と言うんだろう、と。じゃあそのキーワードでお店を探してみようというのがはじまりです。そういうノリも『Boon』らしいと思いますね。

――『Boon』は今後、季刊本として出版されていくことになっています。そこでお伺いしたいのですが、現在雑誌の売り上げが大きく落ちている中で、今回の復刊は一つの成功ケースになると思うのですが、雑誌の可能性について見えてきたものはありますか?

山口:正直言いますと、この『Boon』はかなり珍しいケースだと思っています。もともと部数が減少して、ビジネスとして成り立たなくなった雑誌で、それを再び掘り起こして読んでもらうというのはかなり無謀な挑戦だったと思います。ただ、このように好意的に迎えていただけて、ある程度成果も出ているということは、やりようで雑誌の可能性を広げられるということを示したと思いますし、雑誌が雑誌として存在を示す方法はまだいくつもあるのではないかと思えるようになりました。

――前号のインタビューの際に、山口さんは「媒体を維持していくときに、どういう形態が必要なのかセットで考えていく必要がある」と語っていらっしゃっていましたが、それは変わらない想いでしょうか。

山口:それは変わりません。この『Boon』は紙に親和性の高い世代の方々に読んでもらっているのは確かです。ただ、先を見据えたときに紙のままでいくのかというと、そこにこだわる必要はないと思います。

私自身は紙が好きです。だけれども、『Boon』が『Boon』らしくあることを考えたときに、その器が紙であるかウェブであるかというのは、そのときに最も適した器を選ぶべきであって、器にこだわるのは二の次なのではないかと考えているんですね。

――なるほど。

山口:そもそも雑誌に対する考え方を大きく変えないといけない時期だと思っています。どうしても雑誌といえば50万部、60万部売れて、その時代の象徴となる存在だとイメージしてしまうのですが、そういう時代ではなくなってきている。もっとスモールな形、小さな器ではじめて、その分、自由度を高めてコンテンツを作るというやり方もできますよね。

『Boon』が好きな人たち、『Boon』のマインドにシンパシーを感じてくれる人たちと結び付いてコミュニティを築き、それを長く維持していくというやり方でやっていくこともできるわけで、そのパイはビジネスとして成り立てば全然小さくても構わないと思います。

――では、『Boon』の読者のみなさまに春号の読みどころをお聞かせ下さい。

山口:今回に関してはまず「エアジョーダン」ですね。どういう反応が返ってくるかがとても楽しみです。いろいろなご意見を伺えればと思います。

また、「エアジョーダン」を柱として据えていながら、「激レア」という『Boon』ならではのキーワードを使った特集もありますし、「街のキーワード」は『Boon』らしさの象徴のようなところですから、クスッと笑って楽しんでもらいたいです。好きなところを拾って読んでほしいですね。

――7月には夏号の出版が予定されていますが、具体的な企画は決まっていますか?

山口:もう考えています。春号を作っている段階から巻頭特集でいこうというコンテンツがあります。ぜひ楽しみにしていてください。

(了)


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