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将軍様の魅惑のポップスを追え――書籍『北朝鮮ポップスの世界』を紹介

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物理的に近いのに、とにかくものーすごーく遠い国といった印象の北朝鮮。いわゆるニュースとしての状況はここ日本にも限定的に入ってくるが、その音楽といったらどうだろうか? それこそたまにニュース映像に紛れてなにかの式典や現地のテレビ番組の紹介で情報が入ってくるぐらいではないだろうか?

そんな北朝鮮の音楽に迫った書籍『北朝鮮ポップスの世界』を紹介しよう。

本著は在日コリアン2世の高英起と、カルロス矢吹による対談形式によるもの。まさに読んで字のごとくな北朝鮮の音楽について、第2次世界大戦後、朝鮮戦争での南北分断を経て、特殊な独裁国家のなかで生まれた、かの国の音楽を歴史的に追っていくというものだ。

もちろん、その成立からして独裁国家のプロパガンダ・ソング・オンリーである。本著は、たしかにいろいろ問題ありなあの国のそうした状況をちょっと横に置いといて(とはいえ深く音楽にも関係しているので触れている)、しかしその音楽に関して言えばどうなのか? といった切り口で、現在までの北朝鮮の音楽を紹介している。

その音楽は全てがやはり、政府主導のもと、独裁体制維持のプロパガンダ・ソングとして作られているのだが、そこはやはり政府からの「下知」とはいえ、それを民衆に行き渡らせるための”大衆性”を備えている。その部分こそを”ポップス”として解釈、そのテーマの下でさまざまな楽曲を歴史順に紹介している。軍歌、旧共産圏つたいで影響を与えるヨーロッパの音楽、さらには朝鮮半島現地の民謡の影響などによって形成された初期の楽曲にはじまり、プロデューサー、金正日の存在、そして1985年に結成され、最近でもときおりネットの動画などで話題になる電子音楽楽団、ポチョンボ電子楽団、最新の金正恩体制下の新たな楽団、モランボン楽団などなど、魅惑の北朝鮮ポップスの世界が広がっている。

日本でのイメージではあまり見えてこない、国交のある国々との交流など、そんな実は”オープンな(といってもかなり特殊)”な側面もちらり。最近ではゴスペルやアイドル・グループの影響も? という驚愕の内容も含めて、あの国の音楽を紹介している。”モダン”さの象徴として、外の世界のポップ・ミュージックを取り入れんとする側面と、ある種の制限やかの国の”良識”と、それらが絶妙な力関係で作用する混沌から生まれる”ポップス”。味わい深すぎて! もっとも近い場所にある音楽のファイナル・フロンティア、北朝鮮ポップスを本著で。
(河村)

・高英起、カルロス矢吹著『北朝鮮ポップスの世界』
http://kadensha.net/books/2015/201503kitachosen.html

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