日本の民営化の行方 

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【高橋洋一・株式会社政策工房 代表取締役会長】

 先般の大塚家具の父娘のバトルでは驚いたことが多かった。その一つに、上場会社なのに同族会社のような株主構成だ。日本では、上場は一種の社会ステータスを獲得するために行うことが多く、大塚家具のような事実上同族会社であっても、上場されているところは少なくない。 
 これほどの極端な同族会社とはいわないまでも、日本では安定株主が多く、浮動株主が少ない。これは、コーポレートガバナンスの上でも問題ではないだろうか。こうした株主構造では、客観的な財務諸表分析はあまり重要視されないで、内輪のロジックが優先しがちであろう。
 日本のか浮動株主比率は、先進国の中では高いほうとはいえない。アメリカ、イギリス、スイス、オーストラリアなどの市場は、浮動株主比率が9割程度もあって、開かれた市場である。一方、中国などの新興国は、上場していても政府や関連会社が大株主となっており、浮動株主比率は2~4割程度で低い。世界の市場は、先進国と新興国があるので、平均の浮動株主比率は7割程度である。日本は先進国の中では最低ランクだ。
 浮動株主が少ない日本では、先進国ではまずみられない「親子上場」がある。そういえば、日本郵政の上場は、親子上場で今年最大の上場劇としてすでに話題になっている。
 日本郵政は、親子上場のみならず、途上国のような政府が大株主だ。もちろん、はじめの上場では仕方ないのであるが、問題なのは、将来にわたって金融2社に対しても、政府が実質的に株を保有し続けるという点だ。
 筆者が役人時代に担当した小泉政権での郵政民営化では、金融2社は政府が株を持たない完全民営化とされていたが、その後の政治情勢で覆されたわけだ。つまり、民主党への政権交代の後に郵政民営化法が改正された結果だ。
 その際、政策投資銀行と商工中金でも、同じように、政府が株式を保有しないという完全民営化方針が覆され、政府が株式を保有し続けるという制度改正が行われている。そして、そうした制度に基づいて、最近天下りが復活している。
 残念ながら、そうした制度改正を元に戻すような政治的なパワーは今のところあまり感じられない。民営化路線を敷いた小泉氏が、今や反原発の運動家のようになっているが、政治家の感性にはこれも微妙に影響している。金融会社に対して政府が株主になるという現在の途上国のような状況は明らかにおかしいが、それを政治的リスクをかけてまで元に戻すようなパワーがなかなかでにくいのが現状である。 

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