「逃げで辞めるな!」――ワタミ・渡邉美樹氏の「新入社員に送る言葉」を振り返る

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「逃げで辞めるな!」――ワタミ・渡邉美樹氏の「新入社員に送る言葉」を振り返る

新入社員が入社して1週間ほど経ちました。これから頑張ろうと燃えている人も、早くも壁にぶつかっている人もいるかと思います。

私がワタミの新入社員だったのは、もう5~6年も前になりますが、当時ワタミの渡邉美樹さんが新入社員向けに話をしたメモが手元に残っていたので、その一部を紹介したいと思います。自分には、いま見返しても参考になる内容です。(文:ナイン)
他人と比べるな。「昨日の自分」と比べなさい

新入社員の頃は、同期たちと一緒のスタートラインに立ちます。ですが、入社して何年か経つと、徐々に「出世が早い人・遅い人」に分かれ、同期が自分の上司になる可能性もあるでしょう。

私は、自分より出世が早い同期をみて「最初は俺と同じ店で働いていたのに、あいつはもう店長か。それに比べて俺は…」と劣等感を抱いたこともありました。

こういった気持ちを見越してか、渡邉さんは入社式で「出世が早いか遅いか、そんなことはどうだっていい」とバッサリと断じ、さらにこう続けました。

「人と比べて自分を見るのではなく、昨日の自分と今日の自分を比べなさい。昨日の自分より少しでも成長していればいい。こうして1年もすれば劣等感を感じてぐずぐずしていた人より、ずっと成長できる」

そしてウサギとカメの話を引き合いに出し、「ウサギは自分より足の遅いカメを見て、優越感を感じサボってしまった。カメは、自分とゴールだけ見ていたんだ」と続けました。

渡邉さんは「私も体の重い亀のように、ゆっくりでいいから一歩一歩進んでいこうと思っている。皆も今の自分に出来ることを、120%の力で頑張ればいい」と言っていました。

確かに、他人と比べて感情を抱くのも、人間ですから避けられないこと。しかしそれに囚われてばかりいて地道な努力を忘れてしまっては、その差は開くばかりです。この言葉は、いまでもなるほどなと思います。
「自分に対する厳しい基準」を他人に求める危険性

また渡邉さんは、「逃げで辞めるな」ということも言っていました。渡邉さんはワタミを創業する前、佐川急便にドライバーとして働いていました。仕事は過酷を極め、1日20時間労働で寝る時間もろくにとれず、あまりに眠いときには赤信号で止まった間に寝ていたそうです。

こうした厳しい環境に渡邉さんも「もう嫌だ。辞めてやろう。こんなに苦労する必要なんてない。明日にでも辞めてやろう」と何度も考えたそうです。ですが、心に引っかかるものがあったそう。

「俺は起業する資金を作るため、佐川急便に入ったんじゃないのか。もし辞めたい気持ちが100だとして、その内にたった1でも逃げたい気持ちがあるのなら、俺は辞めない。一度でも逃げたら、もう終わりだ。理屈なんかいらない。起業するという夢を叶えるまで、絶対に逃げない」

そのように考え、思いとどまった渡邉さんは、佐川で1年かかって300万円の資金を貯めて、ワタミを起業しました。私も自分が新しい道に進もうと考えて辞めるとき、この入社式の話を思い出したものです。

ただ、この話には危険な要素もあると思います。本当に辛くなっても「辞めてはいけない」と無理をしてしまい、心身を壊しては元も子もないからです。それに会社に対する不満を抱き、「こんなところにいられるか」と逃げたって、本人の責任とも限りません。

冒頭の「120%の力で頑張ればいい」という話にも、そういう要素はあります。自分に厳しく生きてきた渡邉さんが、他人にも同じ基準を求めたとき、周囲から「ブラック企業」と呼ばれるようになった典型的なエピソードと言えるのかもしれませんね。

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