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よみがえれ「ぶらくり丁」、頑張れ「リノベーションスクール@和歌山」

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和歌山県の県庁所在地・和歌山市では、アーケード街「ぶらくり丁」をはじめとする中心街の空洞化が深刻な問題となっている。しかし、再び活力を取り戻すために「リノベーションスクール@和歌山」という活動が行われているという。最新事情をレポートしよう。典型的なシャッター商店街「ぶらくり丁」はどうなるのか?

筆者は和歌山市の出身である。「ぶらくり丁」と、その向かいにあった「丸正百貨店」(いまは存在しない)は幼いころ、ハレの日の買い物に訪れた場所。中学の学生服に高校入学時の腕時計、就職活動用スーツを買ったのも「ぶらくり丁」だった。しかし、今はその面影もないという。実態をつかむため、まず久しぶりに「ぶらくり丁」を歩いてみた。

【画像1】平日の夕方5時過ぎの、ぶらくり丁周辺の様子。地方銀行の本店も近いが、人影の少ない大通り(写真撮影:井村幸治)

平日の夕方、帰宅の時間帯だが人影はまばら。アーケード内には昔からの商店も一部残っているが、顔ぶれも様変わりして就職支援センターなどの公共施設、場外馬券売り場、カラオケ店、遊技場などが多く、そしてシャッターを閉じた店が目立つ。バブル期には県下の商業地最高地価を記録した入り口角地の店舗が、テナント募集中となっている姿が「いま」を象徴しているようだ…。

和歌山市では人口減少に加えて、市の郊外エリアに新興住宅地やショッピングモールができたことでドーナツ化現象も起こり、中心部の空洞化が急速に進んだ。商業地の地価もピーク時に比べると8割程度下落している地点もある(公示地価ベース)が、それでもテナントが埋まらず空き家や、空き店舗が多い。悲しく、寂しいけれど、これが現実だ…。

しかし、この和歌山の中心市街地に再び活力を取り戻すため、「リノベーションスクール@和歌山」という活動が行われているという。このスクールの第1号事業化案件である「石窯ポポロ」で「リノベトークライブ」イベントが開催されると聞き、取材をさせていただいた。リノベーションスクールは、シャッター商店街の救世主となるのか?

リノベーションスクールとは、受講生がチームを組んで数日間にわたるレクチャー&ワークを行い、遊休不動産の事業化プランを練って不動産オーナーへ提案を行うというもの。「リノベーションスクール@北九州」(http://suumo.jp/journal/2013/09/10/51440/)での成功を皮切りにして、現在では全国各地で活動が行われており、和歌山では2014年2月に第1回、10月に第2回目のスクールを開催している。

スクール運営主体となるのは「リノベーションわかやま」事務局。行政主導型ではなく、完全に民間の力による活動だ。すでに7つの物件に対する提案が行われ、最初の事業化案件となったのが、2015年2月8日にオープンした農園レストラン「石窯ポポロ」だ。

「石窯ポポロ」を運営する吉川誠人さんは、地元で無農薬野菜の栽培や食育に取り組んでいるNPO法人「にこにこのうえん」のオーナーでもある。第1回のスクールに参加し、ぶらくり丁の物件に対して「消費の場から創造の場」へというコンセプトのもと、地産地消の石窯ピザ、クラフト制作工房、有機野菜マルシェなどを実施するプランを提案。昨年5月には提案の実証実験となる「ポポロハスマーケット」を開催し、約1万人の集客があったことで事業化が現実となった。

吉川さんは実際に店舗運営に関わる事業主体として“家守会社(やもりがいしゃ)”株式会社紀州まちづくり舎を設立し、代表に就任されている。

【画像2】3月8日には第3回ポポロハスマーケットが開催された。今後も手づくりとロハスにこだわった商品や飲食の販売を行うてづくりイベントとして毎月行われるという(写真提供:NPO法人市民の力わかやま)

【画像3】2015年2月、ぶらくり丁にオープンした「石窯ポポロ」。店名の「ポポロ」は「市民」の意味で、「みんなの集まる場所にしたい」との思いが込められている(写真撮影:井村幸治)

【画像4】石窯や煙突、店内の壁塗りまで店舗のほぼすべてをDIYでつくりあげたそうだ。トークイベントには地元を中心に、リノベーションに関心を持つ人たちが多数集まった(写真撮影:井村幸治)自らリスクをとって、主役となる地元の人材を育てていけるかがカギ

家守会社 株式会社紀州まちづくり舎とは“民間自立型のまちづくり会社”ともいえるもの。その仕組みや今後の展開についてリノベーションスクール@和歌山の事務局を担当し、株式会社紀州まちづくり舎の取締役でもある三浦研祐氏に伺った。

「リノベーションスクールで提案された案件の運営は、不動産オーナーと契約を交わした家守会社が中心となります。個人や有志が行うのではなく、会社組織として事業を運営するかたちですね。事業資金は各種の助成金やクラウドファンディングを活用することもありますが、紀州まちづくり舎のように事業者自らが家守会社に出資することもあります。リスクをとって本気で取り組むことが必要になりますから、人材発見や育成が非常に大切。まちづくりは、ひとづくりから始まるのです」と三浦さん。

なるほど、机上でプランを練るだけでなく、実際にお金も出して汗もかく事業運営の主体となる人材が誕生することが、まちの再生につながる一番のポイントなのだろう。逆にスクール受講者からの視点でみると、地元で起業するためのありがたいスキームとも考えることもできそうだ。

「北九州の場合、スクール受講者は全国各地から集まったようですが、和歌山は8割が地元からの参加。だから、毎週のように集まって案件を進めていけるというメリットもあります。和歌山大学の学生も参加しており、まちづくりや建築系の進路を選んだ人もいたようです」と三浦さんは語る。海外旅行客向け施設や水辺の活用もあり、街をリノベートしよう!

ほかの案件や、今後の展開はどうなるのだろうか?
「スクールではカフェ、ゲストハウス、コワーキングスペース、スイーツショップなどの提案が行われ、現在もそれぞれ検討がすすめられています。ただ、古い建物は耐震構造や上下水道のインフラ設備など実際に取り掛かると浮上してくる問題や、用途変更をともなうケースでは法律上のハードルもあり、プラン変更などに少し時間を要しています。しっかりと進捗をサポートしていきたいですね。

また、紀州まちづくり舎では、スクールでの提案案件以外にも和歌山を元気にするための取り組みを行っています。例えばポポロの2階をゲストハウスに改装できないかと、DIY作業をすすめているところです」と三浦氏。

たしかに、和歌山には熊野古道や高野山という世界遺産もあり、白浜を始めとする温泉や観光資源も多い。LCC拠点となりアジアからの旅行客が急増する関西空港からも約1時間とアクセスは良好だが、宿泊施設や受け入れ体勢は十分ではない。

ゲストハウス、シェアハウスというニーズもあるかもしれない。また、市内を流れる市堀川の水も昔と比べるとかなりきれいになっている。岸には遊歩道も設けられているので、水辺資源を活用したまちづくりもありえそうだ。

【画像5】ぶらくり丁の宝飾店には海外からの旅行客の姿も。石窯ポポロの2階ではDIYでゲストハウスづくりを始めようとしている(写真撮影:井村 幸治)

【画像6】市堀川の岸辺には遊歩道が整備されている。大阪ミナミの道頓堀川沿いと似たロケーションだ。ミナミのようなにぎわいに近づくことを願う(写真撮影:井村 幸治)

故郷の街に住んでいなくても、なつかしい街が寂れていくのをみるのはつらいこと。こうした活動が行われていることを、ひとりでも多くの人に知ってもらう事で、協力者や参加者が増えることを願う。文字通りリフォームではなくリノベート、和歌山の中心街に新しい価値をもたらす可能性を秘めた火種を大きくしていきたい。●リノベーションわかやま
HP:http://renov.shimin.or.jp/
●石窯ポポロ
HP:https://www.facebook.com/ishigamapopolo
元記事URL http://suumo.jp/journal/2015/04/06/81351/

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