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地銀再編「中小企業支援をしないなら存在意義はない」と識者

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 これまで地域に根ざした金融サービスを行ってきた地方銀行(地銀)が、営業エリアの垣根を越えた再編を加速させている。

 昨年末、肥後銀行(熊本)と鹿児島銀行(鹿児島)、横浜銀行(神奈川)と東日本銀行(東京)が立て続けに経営統合を発表したのに続き、今度は関西を地盤とする大正銀行(大阪)が香川銀行や徳島銀行を傘下に置く「四国連合(トモニホールディングス)」の傘下入りを検討している模様だ。

 地銀同士が連携を深めている背景には、将来を見越した経営不安や危機感がある。

「いま地銀の経営状況は取引企業の業績回復により、不良債権の発生に備えた貸倒引当金が不要になっていることや、投資信託・保険の販売手数料収入が好調なことから、おおむね増益になっている。

 だが、稼ぎ頭である融資ビジネスは超低金利が続いているために利ザヤの悪化が止まらない。さらに、人口の減少が追い打ちをかけてくれば健全な経営が持続できる保証もなくなる。そこで他行と連携した金融商品の拡充、他エリアに足を延ばした法人営業の強化などの目的で経営統合を決断する地銀が増えている」(全国紙経済部記者)

 地銀の統合で経営体質が強くなれば、コスト削減効果も相まって融資基準が緩和され、地元経済が活性化する――。こんなシナリオを期待している中小企業の経営者がいたとしたら、早合点といわざるを得ない。

 金融ジャーナリストの小泉深氏は、「地元住民の生活は何ら変わらず、地域も疲弊したまま銀行だけ統合されていく」との懸念を示し、こう続ける。

「いまの地銀は自己資本を積み上げてBIS規制(国際業務を行う銀行の自己資本比率に関する国際統一基準)もクリアするほど運転資金は潤沢です。にもかかわらず、本業の融資事業が伸びないのは、そもそも“貸してナンボ”の世界で貸していないから。

 バブル期前の地銀なら、たとえ赤字企業でもあらゆるビジネスモデルや市場予測を示しながら将来性にかけて融資する力がありました。それがバブル崩壊や金融危機を経て、少しでも破綻リスクがある企業には貸さなくなりました。

 そのため、地元の信用金庫が必死になって稼いだ企業を持っていったり、他行と中堅企業を奪い合ったりするだけで、自分では何もしていないのです」

 地銀がここまで萎縮してしまったのには、監督官庁として銀行への立ち入り検査を行う金融庁の責任も大きい。抜き打ちで行なう資産査定で融資に対する引当金不足を厳しく指摘し、不良債権処理を迫ってきた歴史があるからだ。

 最近、この立ち入り検査は貸出金の「量」から、融資案件の収益性などを見る「質」へと変わってきたとの指摘もあるが、前出の小泉氏は「マニュアル行政自体が変わらなければ地方の活性化も望めない」と警告する。

「金融庁が用いる金融検査マニュアルのベースはあくまで国際銀行の基準に則っているため、海外支店のひとつも持たない日本の地銀経営に即したものではありません。

 また、メガバンクだろうが地銀だろうが一律に『過去しか見るな』と決算書に基づく融資を徹底させ、マニュアルで数字の順守ばかりを求めてきました。こんな縛りを続けていたら、将来有望な企業のビジネスモデルや商品を発掘できるわけもなく、魅力ある地域の活性化に繋がるはずがありません」(小泉氏)

 2020年の東京五輪後には現在105ある全国の地銀が半分以下に集約される可能性も囁かれているが、国民にメリットもない再編が本当に必要なのか。

「今後も東京、大阪、名古屋といった大都市圏、その他、中四国は岡山と広島、東北は仙台、北海道は札幌などと集約されていき、どこの銀行が母体となって生き残るかの戦国時代が当面続くでしょう。

 しかし、地方の埋もれた中小企業を必死に支援しない地銀はそもそも存在意義がありませんし、大同団結しても地方が活性化しないならメガバンクだけでいいという議論が起きてもおかしくありません」(小泉氏)


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