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安倍官邸 TV局トップとの会食と報道統制でテレビ手なずける

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 テレビ番組のコメンテーター降板をめぐり政権が圧力をかけた、かけていないなどの議論がかまびすしいが、政治の側はどのようにして、テレビを萎縮させたのか。ジャーナリストの武富薫氏が安倍政権のメディアコントロール術に迫る。

 * * *
 安倍晋三首相はテレビ報道に「公平中立」を求め、政権に不利な報道への監視を強めるやり方をとっている。そうした安倍政権のメディア対策の姿勢を象徴するのが「萩生田文書」だ。

 解散直前の昨年11月、安倍側近の萩生田光一・自民党総裁特別補佐が在京民放キー局の自民党記者クラブキャップを個別に呼び出し、自民党筆頭副幹事長(萩生田氏が兼務)名で各局の「編成局長」「報道局長」に宛てた文書を手渡した。

『選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い』と題した文書では、〈衆議院選挙は短期間であり、報道の内容が選挙の帰趨に大きく影響しかねない〉と指摘し、番組への〈出演者の発言回数〉〈ゲスト出演者等の選定〉〈特定政党出演者への意見の集中がないよう〉〈街角インタビュー、資料映像等で一方的な意見に偏る、あるいは特定の政治的立場が強調されることのないよう〉という4項目について「特段の配慮」を求める内容だった。

 自民党のテレビへの報道介入は今回が初めてではない。メディアが権力をチェックするのは報道機関として当然の責務であり、テレビの報道も、政権党の自民党により厳しい目を向けてきた。だが、自民党には「テレビの報道が偏向している」と被害者意識が強く、とくに選挙が危うくなるとメディア統制を強めてきた。

 例えば、スキャンダルが続出した森喜朗内閣末期の2001年4月、自民党は党内にテレビの政治報道が公正、公平さを欠いていないかどうかを監視するための「テレビ報道番組検証委員会」を組織し、党本部にビデオデッキを何台も設置して各局の番組を録画して番組をチェックする態勢を取った。

 それでも、これまではテレビ局側はそうした圧力をはねのけてきたのだ。そこで安倍首相は第2次内閣発足にあたってメディア戦略を周到に進めた。側近議員が語る。

「安倍総理は40代で小泉政権の幹事長を務めるなど売り出し中だった当時にNHK番組改変問題(*注)で叩かれたトラウマがある。

 第1次内閣も閣僚の不祥事が続いた後、最後は『閣議で他の閣僚が総理に挨拶もしない』と学級崩壊現象が報じられてメディアにつぶされたという意識が強い。そのため、総理に返り咲くと新聞・テレビ各社のトップと相次いで会食してメディアとの関係強化をはかってきた」(側近議員)
 
【*注/NHKが2001年に放送したETV「問われる戦時性暴力」の番組内容に、自民党の安倍氏と中川昭一氏から政治圧力がかかり、番組改変が行われたのではないかと問われた問題。朝日新聞が報じたが、安倍・中川両氏ともに否定し、朝日も後に取材が不十分だったとの検証結果を発表した】

 首相動静でも、首相が就任後、民放キー局や大手紙の社長、あるいは編集幹部と頻繁に会食していることは報じられている。それが昨年秋以来、閣僚の政治資金スキャンダルで政権がピンチに陥ると一転して萩生田文書で報道規制をはかった。まさに“アメとムチ”でテレビは政権に物言わぬメディアとして沈黙してしまったのだ。

 しかし、メディアが政権批判を自主規制して政治との緊張関係が失われると、政治のモラルハザードは一層進む。今国会でも閣僚の政治資金問題が次々に表面化し、後援会組織による違法献金疑惑を追及された下村博文・文部科学相の秘書官が、その後援会関係者に「取材を受けるな」と口止めするメールを送っていた問題が発覚した。

 これも、政治家の側がメディアの弱腰を見て「取材を封じればいい」と安易な疑惑隠しに走るようになった典型だろう。テレビのワイドショーも相変わらず政治報道をとりあげない。このままテレビから政治が消えていくのか。  

※SAPIO2015年5月号


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