弁護士増で「司法試験をパスしても就職できない」は本当か?

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弁護士増で「司法試験をパスしても就職できない」は本当か?

 かつてほどではないにせよ、司法試験といえば「資格試験の王様」ともいえる難関試験であり、合格すれば人生が一変するだけの力がまだまだあります。
 それだけに、この試験にパスしようと勉強を重ねる人は、学生・社会人にかかわらず多くいます。そんな中、存在感を増しているのが「予備試験」です。

 「予備試験」とは大学受験における「大検」と似た制度で、この試験に合格できれば、法科大学院を卒業しなくても司法試験の受験資格を得ることができます。法科大学院に行く時間もお金もないという社会人や、とにかく早く司法試験をパスしたいと考える学生には便利な制度です。
 ただ、もちろん予備試験は超難関。2014年の合格率は3.44%と非常に狭き門となっているのですが、なかには「一発合格」する猛者も……。
 この試験にパスするポイントはどんな所にあるのか。急成長を続ける資格取得のオンラインスクールとして注目される「資格スクエア」の人気講師であり、『司法試験予備試験一発突破ナビ』(中央経済社/刊)著者の吉野勲さんにお聞きしました。今回は後編です。

―予備試験の勉強をするうえでのアドバイスをいただければと思うのですが、参考書や判例集の選び方について、どんなことがポイントになりますか?

吉野:参考書は大別すると「基本書」と「予備校本」があるのですが、一般論で言えば「予備校本」を使った方がいいだろうというのはあります。
「基本書」は、司法試験対策に限らず、その科目全体を解説する目的で書かれたテキストですから、予備校が出している、司法試験対策に絞って書かれたテキストの方がわかりやすいですし、使いやすい。
ただ、「予備校本」にしてもいろいろな予備校が出していますから、そこはもう好みの問題というところはあります。そこそこ大手の予備校が出しているものであればまずいことはないので、自分に合いそうなものを選べばいいと思います。

―本書でおすすめの参考書や判例集を挙げていらっしゃいますが、知人の弁護士に見せたら「古いものを使っているんだなあ」という感想でした。

吉野: 今手に入る参考書で信頼性の高いものというのは、実は昔からあまり変わっていないんですよ。それで「古い」という印象になってしまったんだと思います。参考書に関してはこの10年間ほとんど新しい動きがなかったので。
さっきお話ししたように、予備試験は旧司法試験の延長上にあるので、参考書も旧司法試験向けのものなら予備試験は戦えます。ただ、予備試験を合格したら次は現行の新しい司法試験があるわけで、これを突破するには既存の参考書では古い、という感はあります。
僕はこれを変えようと思っていて、新司法試験向けの新しいテキスト作りをやっているところなんです。

―予備試験から司法試験合格を目指すというのは、司法試験を巡る全体の流れからいえば“新興勢力”です。先ほど「原則」とおっしゃっていた法科大学院の側は、予備試験を勧める予備校をどのような目で見ているのでしょうか。

吉野:法科大学院によっても色々なんですけど、予備試験だとか予備校を目の敵にしているところもあるにはあります。東京ではそうでもないのですが、アンチ予備校派は実は多いんです。

―これは司法試験に限ったことではないのですが、難関資格をとっても「食べていけない」ということがよく言われます。こういった意見についてはどのようなご感想をお持ちですか?

吉野:これは当たり前ですよね。今までは司法試験さえ受かってしまえば、多少コミュニケーション能力に問題があっても楽に生活できていたということでしょうが、そもそもそれがおかしかったのであって、今はまともな状態になったということだと思います。

―現行の司法試験が行われるようになった2006年あたりから弁護士の数は飛躍的に増えています。それによって就職しにくくなったということはあるのでしょうか。

吉野:求人に対する募集者が増えたということなので、就職しにくくなったかどうかということでいえばなったとは思います。ただ、弁護士事務所に就職する以外に企業内弁護士になったり、早い段階で独立したりと、弁護士のキャリアの選択肢も増えているので、本人次第といいますか、自分が弁護士として何をやりたいのかが明確であれば、活躍の場はあるはずです。

―特に、最近ではIT訴訟が増えていますし、PCの遠隔操作事件など以前は存在していなかった事件も起こるようになってきています。となると弁護士の方にも新しい需要が生まれるわけですよね。

吉野:そうですね。IT訴訟などは特に、上の世代の弁護士のなかにはついていけない人もいるはずです。ITに関してはやはり若い人の方が慣れているので、そういう訴訟に特化した事務所に入ったりすることもできるでしょうし、その分野で新しいフィールドを自分で作ってしまうこともできるはずです。法というのは人間活動の全てが対象になるのですから“ブルーオーシャン”は自分で作ってしまえばいい。
世の中が動いている時には新しいルールや運用が生まれるわけで、そういう時はキャリアの浅い弁護士でもベテランの弁護士と同じ土俵で戦えます。今度、民法の大改正がありますが、法律が変わる時というのは、「今さら新しい法律に適応するのは無理」ということで引退してしまう弁護士がいるので、新旧が入れ替わるんです。そういう意味でもチャンスですよね。

―最後になりますが、予備試験から司法試験合格を目指す方々にメッセージをお願いできればと思います。

吉野:僕はこの本の中で、「司法試験合格はプラチナチケット」って書いているのですが、合格したからといって、即お金持ちになれるということではありません。でも、人に決められるのではなく、自分のやりたいことに取り組む人生を送れるようになりますし、何より選択肢が広がるのは間違いありません。
先ほどのお話に出ましたが、予備試験は確かに大変な試験ではありますから、勉強を続けるモチベーションを保つのが難しいかもしれません。もし勉強する意欲がなくなりそうな時は、「司法試験に合格することで、人生の舵を自分の手に取り戻すことができる」と考えて、苦労をする価値のあるものに挑戦しているんだということを再確認してほしいと思います。
(新刊JP編集部)


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