今週の永田町(2015.3.24~31)

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【暫定予算が成立】

 先週27日、一般会計総額96.34兆円(前年度当初予算比0.5%増)の2015年度本予算の年度内成立が困難になったことを受け、政府は、国民生活に影響が及ばないよう、4月1日から11日間分の諸経費などを盛り込んだ暫定予算案を閣議決定のうえ、通常国会に提出した。

 暫定予算案には、地方自治体に年4回配る地方交付税交付金1回分(2.97兆円)や、年金や生活保護費など社会保障関係費(2.15兆円)を中心に、必要最小限の経費が計上されており、歳出総額は5.75兆円となった。東日本大震災復興特別会計では、303億円(除染費用など114億円を含む)が計上されている。

30日、衆参それぞれの予算委員会、衆議院本会議での質疑・採決を経て、参議院本会議に緊急上程され、与党などの賛成多数により可決・成立した。暫定予算は、2015年度本予算成立後、速やかに本予算へ吸収される。

*衆参両院の本会議や委員会での審議模様は、以下のページからご覧になれます。

  衆議院インターネット審議中継参議院インターネット審議中継

一方、本予算案は、4月第2週にも成立する見通しだ。26日、委員会採決の前提となる中央公聴会が開催された。中央公聴会に出席した有識者は、財政健全化への取り組み強化や雇用改善策、所得格差の是正などを求める意見を述べた。

27日には、経済・財政・国際問題をテーマにした集中審議が、安倍総理と関係閣僚が出席して開催された。違法な長時間労働を強いるなど、労働環境を軽視するブラック企業が問題となっていることを踏まえ、安倍総理は「社会的に影響力の大きい企業が違法な長時間労働を繰り返している場合には、是正を指導した段階で公表する必要がある」と、是正指導段階での企業名公表に前向きな考えを示した。労働基準法に違反した企業が労働基準監督署の是正指導に従わなかった場合、書類送検と同時に企業名公表が原則となっているが、是正指導段階で企業名を公表することで、違反の防止を徹底し、企業の自主的改善を促したいとしている。具体的な方法は、塩崎厚生労働大臣の下で検討される予定だ。

 

 与党は、4月9日にも本予算を成立させたい考えだが、統一地方選を意識して党のアピールなどを行いたい野党各党は、安倍総理の認識・発言を問い質したり、下村文部科学大臣の政治献金問題などを追及したりしている。ただ、衆議院の優越を定めた憲法規定により4月12日に本予算が自然成立することから、委員会審議はほとんど紛糾することなく、淡々と進められているようだ。

 

 

【国会監視機関が始動】

 昨年12月に施行された特定秘密保護法にもとづく特定秘密に関する政府の運用状況を国会が監視する常設機関「情報監視審査会」の参議院の委員人事(自民党4人、公明党1人、民主党2人、維新の党1人)について、25日、参議院本会議で与党などの賛成多数により選任された。

 30日には、衆参両院の情報監視審査会の初会合がそれぞれ開催された。初会合では、各委員が秘密を外部に漏らさないとの宣誓書に署名した後、衆議院側が額賀福志郎氏(自民党)を、参議院側が金子原二郎氏(自民党)を、それぞれの会長として互選した。

昨年末の衆議院解散・総選挙の実施に加え、審査会委員の割りあてなどをめぐって与野党の調整が難航して、審査会の運用開始が遅れていたが、ようやく始動するに至った。

 

 審査会は、特定秘密の指定・解除状況についての報告を政府から年1回は受けるとともに、国会側が必要と判断した特定秘密の提出を要求することができる。政府の運用が恣意的・不適切と判断される場合には、指定解除など運用改善を政府に勧告することができる。審査会開催には委員3分の1以上の要求が必要で、案件決定には過半数が原則となっている。会議内容も原則として非公開で、特定秘密を漏らした委員は処罰対象となる。
 

ただ、審査会の勧告には強制力がなく、政府側が勧告に従う義務もない。また、国の安全保障に著しい支障を及ぼすような情報について、政府側は国会からの要求でも提示を拒むこともできる。さらに、審査会の運営が与党ペース(衆参それぞれの委員8人のうち、与党が衆議院で6人、参議院で5人)で進む可能性が高く、監視体制が適切に機能するかも危惧されている。どこまできめ細かくチェックでき、どのように実効性を担保していくかが今後の課題だ。

審査会では、まず具体的な審査ルールづくりなど運営をめぐる協議からスタートするという。6月をメドに政府が国会への初回報告を行う見通しで、今後、審査会がどのように機能していくのかが問われることとなりそうだ。

 

 

【各党がめざす献金規制のあり方、出揃う】

国の補助金を受けた企業・団体からの政治献金のあり方をめぐって、与野党は、それぞれの主張を行っている。自民党や公明党は、国の補助金交付決定から1年以内の献金を禁じた政治資金規正法の趣旨とその内容を周知徹底することがまず重要で、現行法令下で運用改善、党内のチェック機能強化などにより対応すべきと主張している。

一方、野党は、政治資金規正法改正による規制強化を主張する。維新の党は、企業・団体献金を全面禁止する政治資金規正法改正案を議員立法で国会に提出した。共産党も、政治資金パーティー券購入(実費分の徴収除く)も含めすべての企業・団体献金を禁止する法案を通常国会に提出する方針だ。次世代の党や社民党も全面禁止を掲げている。

 

 民主党は、26日、政治改革・国会改革推進本部(本部長:枝野幹事長)の総会で、政治資金規正法の改正を軸とした企業・団体献金の規制強化策をとりまとめた。

民主党の改正案では、災害復旧や試験研究・調査などの補助金を受け取る企業・団体からの政治献金を例外的に認める規定について削除し、独立行政法人など国以外の団体を経由した補助金も規制対象にしたうえで、補助金を受けた企業・団体に1年間の献金禁止を国が通知するよう義務づけるとともに、政治家側も企業・団体に補助金受給を確認する文書を出すことを義務としている。

違反者に対する罰金は、現行の「50万円以下」から「100万円以下」に引き上げる。また、租税特別措置による税の優遇措置を受けた企業・団体の献金を新たに規制することを検討するほか、寄付金の税額控除制度の拡大など個人献金の拡充を図るとしている。

 

ただ、他の野党が主張している全面禁止については「法案化を進める」と、今後の検討課題として明記するにとどめた。民主党内には、「改革政党をアピールするチャンス」として、パーティー券購入を含めた全面禁止に踏み込むべきとの声もあったが、全面禁止による政治活動への影響を懸念や、「自民党が乗らなければルールとして確立されない」(安住国対委員長代理)などの慎重論も根強くあり、将来的な全面禁止として先送りにした。また、違反した企業・団体の補助金全額返金についても検討されていたが、今回は見送った。

民主党は、4月中をメドに与野党協議を呼びかけたうえで、改正案を通常国会に提出するかどうかを判断する方針でいる。ただ、政治資金規正法の改正に否定的な与党、全面禁止を訴える他の野党それぞれ主張の隔たりがあるだけに、いまのところ他党の協力が得られるかは微妙な情勢だ。

 

 

【予算案の採決日程をめぐる攻防に注目】

 暫定予算が成立し、年度内に成立しないと国民生活に影響が出る日切れ法案の成立メドがほぼたちつつある。また、来年度予算は、遅くとも4月12日には成立する。安全保障関連法案や農協改革関連法案など重要法案の審議は、統一地方選後になる見通しだ。与野党は、26日に公示された統一地方選の前半戦に注力しており、国会審議は事実上、休戦状態へと向かいつつある。

 

当面の焦点は、2015年度本予算案の採決日程だろう。与党は4月9日の参議院本会議で可決・成立させたい考えだ。しかし、参議院外交防衛委員会の片山委員長(自民党)が30日の同委員会理事懇談会に遅刻したことで、野党側は、理事懇談会開催を見送り、徹底追及の構えをみせている。自民党の吉田参議院国対委員長が謝罪したが、野党側は片山委員長の遅刻は2度目で、再発防止を申し入れた経緯があるだけに、「あまりに配慮に欠ける」と反発している。

 これにより、31日の参議院外交防衛委員会で審議される予定だった日切れ法案のひとつ「在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案」の年度内成立は、困難な情勢となった。与野党の参院国対委員長間で対応を話し合うこととなる見通しだが、今後の展開次第では、予算案の審議・採決に影響を与える可能性もある。水面下での与野党の駆け引きも含め、予算案の採決日程をめぐる攻防の行方に注目しておきたい。

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政策工房

霞が関と永田町でつくられる“政策”“法律”“予算”。 その裏側にどのような問題がひそみ、本当の論点とは何なのか―。 高橋洋一会長、原英史社長はじめとする株式会社政策工房スタッフが、 直面する政策課題のポイント、一般メディアが報じない政策の真相、 国会動向などについての解説レポートを配信中!

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