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なぜ原油安でも電気代下がらない?

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ようやく春めいてきたが、この冬、電気代の高さに改めて驚いた方も多いのでは? 例年のことながら、真冬は家庭の電気代が一年で最も高くなる季節。ここ数年、日本の電気代は上がり続けているため、毎冬「我が家の最高値」を更新してため息…なんて光景が各家庭で繰り広げられたことだろう。

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実際、家庭用の電気料金は東日本大震災前の2010年に比べて約2割上昇。産業向けの電気料金も3割近く上昇し、庶民はもちろん、日本の99%を占める中小企業にも大きな負担となっている。

「でも、最近は原油価格が安くなっているんでしょ?」と首をひねる人もいるだろうが、残念ながらことはそう単純でもない。これは「電気料金」の構造が関係している。

電気料金の請求金額の主な内訳は、「(1)電気料金本体」+「(2)燃料費調整額(燃料価格の変動が反映される部分)」+「(3)再生可能エネルギー発電促進賦課金」となっている。「(2)燃料費調整額」は、航空運賃でいう「サーチャージ」のようなものに相当し、月々変動している。原油価格の変動もここに反映されるが、全体の電気料金に占めるシェアはあくまで限定的だ。

それよりもここ数年、電気料金が上昇した主要因は、「(1)電気料金本体」の方にある。これは国内の原子力が全停止したことで、原子力に比べコストの高い化石燃料への依存の比率が9割近くまで増大したためだ。

震災前の2010年度には、日本の発電燃料は「原子力3割+化石燃料6割+水力等その他1割」で賄っていた。ところが2013年度には「化石燃料9割+水力等その他1割」へと上昇。これにより発電コストは大きく膨らんでしまった。原子力の停止によって増えた燃料代は、昨年1年で3.6兆円。東日本大震災以降、累積で9兆円にも達している。「原発の発電コスト」については色んな考え方があるものの、化石燃料の輸入増によって、震災前より燃料費負担が増えたことは、まぎれもない事実である。

このほかにも、現在の原油安が今冬の電気料金に“貢献”してくれなかった理由は、ざっと3つある。

1つ目は、電気を作る「燃料」として、「石油」の割合は2割に満たないこと。石炭と液化天然ガス(LNG)が7割を占めており、原油価格が下がっても、即座に燃料コスト全体が下がるわけではない。もともと原油を使った発電比率は低く、その影響は小さい。

2つ目は、「円安」の影響である。この2年間で為替レートは、1ドル81円程度から120円程度へ大幅な円安に転じた。簡単に言ってしまえば、同じ燃料が1.5倍に値上がりしたようなものだ。

3つ目は、「燃料費調整額」は3ヶ月ごとの平均燃料価格に基づいて算定されるため、料金への反映には数ヶ月間のタイムラグがあること。

「原油安」でも電気料金が安くならないのは他にも要因があるが、いずれにせよ電気料金が高止まりしている現状は、庶民の家計にボディーブローのように効く。昨年来、「円安」による輸入原材料費の高騰など、食品価格の値上げも相次いでいるのはご存じの通り。いかに「ITバブル以来の円高」が訪れようとも、庶民の「実質的な手取り賃金」は目減りしており、懐事情は厳しい。

こうした状況を打開するには、資源小国のハンディを解消すべく、国産エネルギーの強化につとめるほかない。化石燃料の乏しい日本にとって「国産エネルギー」とは、水力や風力、太陽光などの再生可能エネルギーと、準国産エネルギーとされる原子力のみ。原発が停止している今、再生可能エネルギーの推進に期待がかかる。

ただし、再生可能エネルギーには大きな課題もある。再エネを促進するドイツの電気料金が日本の1.2倍(※家庭向け電気料金の場合/2012年時点)になっている通り、現時点では高コストになる上、安定供給に不安があるのだ。これらの課題をクリアする技術が花開いてコスト競争力を持ちえるまで、一定(数十年単位)の時間が掛かることは避けられない。となると、それまでの供給力をどう工面するか、という点が現実的な課題となる。「時間を稼ぐ」という視点で考えれば、原発も選択肢の1つであることは確かだろう。

政府は今、2030年の電源構成のあり方を6月頃までに決めるべく、議論を進めている。果たして長期的な視野に立ったとき、どのようなプランが「現実的」なのか? 「最善」ではないにせよ「よりマシなプラン」を模索する智恵が問われている。
(篠塚裕也)
(R25編集部)

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