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京都市「野良猫餌やり規制」条例の問題点をコラムニスト考察

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 京都市が野良猫などへの餌やりを規制する条例を可決した。これについてネットの反発は大きい。コラムニストのオバタカズユキ氏はこう考える。

 * * *
 京都市が野良猫などへの餌やりを規制し、規制にもとづく命令に反した者を5万円以下の過料に処する条例が、3月20日に市議会で可決、成立した。このニュースが報じられるや否や、「野良猫を餓死させればいいというのか!」「京都の人はヨソモノにだけでなく、動物にも冷たいのか!」「好きだった京都が嫌いになった!」などなど、非難の声がネット上の方々であがった。

 同日の朝日新聞報道は、〈「背景には餌やりを巡るトラブルが相次いでいる実態がある。一方で「動物愛護の流れに反する」との声もある〉と伝えている。また、条例案の提出段階から市内での批判も強かったようで、〈市は説明会を開くなどして対応にあたり、条例案の名前も「動物による迷惑等の防止に関する条例」(仮称)から、「動物との共生に向けたマナー等に関する条例」に変更した〉とある。

 京都市は「京都市情報館」という公式HPで、この条例を誰でも閲覧できるようにPDFでアップしている。A4で4ページぶんの条例に目を通してみると、問題の猫の餌やり規制は以下の条項のことだと分かる。

〈第9条 市民等は、所有者等のない動物に対して給餌を行うときは、適切な方法により行うこととし、周辺の住民の生活環境に悪影響を及ぼすような給餌を行ってはならない。
 2 市長は、前項の動物に対する給餌について、必要があると認めるときは、適切な給餌の方法に関し市民等が遵守すべき基準を定めることができる〉

〈第10条 市長は、前条第1項の規定に違反し、又は同条第2項に規定する基準に従わずに行われている給餌に起因して周辺の住民の生活環境に支障が生じていると認めるときは、当該支障を生じさせている者に対し、必要な措置を採ることを勧告することができる。
 2 市長は、前項の規定による勧告を受けた者がその勧告に係る措置を採らなかったときは、その者に対し、相当の期限を定めて、その勧告に係る措置を採ることを命じることができる〉

〈第14条 次の各号のいずれかに該当する者は、50,000円以下の過料に処する。
 (1) 第10条第2項の規定による命令に違反した者〉

 問題人物に対し、まず勧告、それでも言うことを聞かなかったら命令、命令に従わなかったら罰金、というわけだ。猫の餌やりをしただけで即違反と誤解している人をけっこう見かけるのだが、京都市はそれなりの段階を用意している。無慈悲な強権発動といった感じも、条例からさほど受けない。

 問題なのは、むしろその規制内容のあいまいさだ。行ってならないのは、〈周辺の住民の生活環境に悪影響を及ぼすような給餌〉なのだけれど、その中身が具体的に示されていない。常識的には、自宅敷地外の道端や公園などに野良猫用の餌を放置し、食べ残しに蠅がぶんぶん集まるような不作法はやめてください、というあたりだと思うのだが、糞尿などの野良猫被害にあっている猫嫌いの中から拡大解釈する人が出てくる恐れはあるだろう。

 猫好きが自宅敷地内で野良猫にちょうど食べ切れる量の餌をやっていたとしても、「その行為自体が野良猫を増やしている。おかげで周辺の住民である私の生活環境は悪化するばかりだ!」と条例を武器に苦情の勢いを倍加させる人が出てきてもおかしくない。

 反対に、「やせぎすの猫がかわいそうで見ていられないから、ちゃんとしたキャットフードを買ってきて、うちのお庭であげているのに、それも許されない世の中はどうかしている……」と厭世的な気分を強めてしまう人が増えてもおかしくない。

 中途半端に公が介入することで、人間と猫というよりも、人間と人間の対立関係が悪化しかねないのだ。京都市は条例と連動させる形で、〈周辺の住民の生活環境に悪影響を及ぼすような給餌〉の例や、問題のない給餌の方法を指し示すべきだった。市が責められるべきは、この一点であると思う。

 さらにつけ加えるならば、京都市は2010年度から始めている「まちねこ活動支援事業」の継続推進についても、条例成立とセットで積極的に広報すべきだった。地域住民が適切に餌やりをし、手なずけた野良猫を捕獲して不妊去勢手術を行うまちねこ活動は全国各地で行われている。京都市内にもそうしたボランティア活動に参加する人はけっこういるようだ。そして、市は不妊去勢手術費を負担するなど、市民の活動を正式に支援している。そこをなぜもっと強く打ち出さないのか。日本トップレベルの観光地だというのに、PRが下手くそだ。

 動物愛護法と照らし合わせても、野良猫の餌やり自体に問題はない。ただ、それこそ「マナー」は守るべきで、なぜなら、猫好きが「猫の多い町は暮らしやすい町」といった価値観を広めても、猫嫌いが「猫のうろつく町はだらしない」と感じる気持ちは変わらないからだ。

 しょせんは好き嫌いの次元の話なのに、動物愛護には過剰な「正義」が伴いがちで、その「正義」を敵視する「正義」も強固に存在する。こういう言ったら「百害あって一利なしの問題と一緒にするな!」とお叱りを受けそうだが、動物愛護の問題はすぐ喧嘩になりやすい点で喫煙問題と似ている。

 タバコに関しては、分煙ルールの下で愛煙家と嫌煙家が棲み分けながら互いを尊重しましょうよ、という「結論」がとっくに出ていると思うのだが、それでも「タバコもやめられない人はダメ人間だ」などと愛煙家を攻撃する嫌煙家はいなくならないし、そうした状況を「嫌煙ファシズムだ」とおおげさに騒ぎ立てる声もつねにある。

 どちらの側も、極論を言う人は実のところ全体の中で少数派。けれども、小数派だからこそというか、もの言う際の声がでかい。彼らが勝手に言い争いをして完結してくれるなら構わないのだが、それによって「タバコ話は地雷になりかねない」といった認識が広がってしまい、世の中全体のギスギス感がそのぶん強まっているようなところもある。

 野良猫問題の「結論」は、とにかく不妊去勢手術を積極的に行って野良猫の絶対数を減らすところにあるはずだ。うまくコトが進むほど「猫の少ない町になる」という猫好きにとってのジレンマがあるのだが、野良猫の交通事故死や行政による殺処分を減らすためにも、その方策をなにより優先すべきだと真面目な愛猫家たちは心得ている。

 なのに、何かと言うと脊髄反射的に「人間の都合だけで動物を殺すな!」と大声でわめく少数派がいる。そういう人たちの言動を「動物愛誤」と嗤い、叩いてみせることで快感を得るような困った少数派もいる。

 京都の条例めぐっても、この両極端がここぞと声を荒げた。そういう連中が食い散らかして場を荒らすようなニュースを安易に給餌してはいけない。


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