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【書評】「年だから無理もない」がひょっとしたら…になったら

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【書評】『ボケてたまるか! 62歳記者認知症早期治療実体験ルポ』山本朋史著/朝日新聞出版/1200円+税

【評者】関川夏央(作家)
 
 著者・山本朋史は「週刊朝日」の超ベテラン記者で六十二歳、司馬遼太郎『街道をゆく』の担当だった。定年になったが、一年ごとの契約で記者をつづけている。

 人の名前が思い出せない。へんに怒りっぽくなった。加齢したんだから無理もないと考えていたが、ある日取材アポをダブルブッキングした。あせった。

 ひょっとしたら、と「もの忘れ外来」に飛び込んだ。他の病院で検査を受けるためにもらった紹介状を、こっそりのぞいてみた。「認知症の疑いが強い」。「がーん」となった。

 筑波大学附属病院の「認知力アップトレーニング」に通うことにした。デイケアである。つくばエクスプレスでもけっこう遠い。だが背に腹はかえられない。

 最初は早押し「ゲーム」だった。こんなのチョロい、全体の一番になって目立つのだけはやめとこうと思ったが、自分より年上の「老人」に全然勝てない。お手つきは減点大、「ケアレスミス」という著者の欠点が早くも明らかだ。「筋トレ療法」をやってみる。椅子に浅く腰掛け、片足を水平より高く十秒間上げる。全然痛くならない。大丈夫だ。すると先生がいった。

「痛くないということは、感覚神経が脳につながっていないということを意味します」

 ええーッ!? 徘徊する老人が、まったく疲れや足の痛みを訴えないのと同じだという。

 MCI(軽度認知障害)に、ゲーム、筋トレ、音楽演奏、臨床美術、ダンス、料理といった療法は有効なのだ。自覚しての早期発見・早期治療は、まず本人のため、ついで介護予備軍たる妻のため、医療費削減という社会のためだ。おまけにデイケア通い僅か二か月で体重六キロ減、γ-GTP、悪玉コレステロールなど、基準値オーバーが一つもなくなった。

 高速道路逆走など行っちゃった老人だけさ、とバカにしていたが、先日面倒な駐車をしようとしてアクセルとブレーキを踏み違えた。まったく他人事ではない。

※週刊ポスト2015年4月3日号


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