人気集める「いじめ漫画」が、子どもに与える心理的影響

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人気集める「いじめ漫画」が、子どもに与える心理的影響

「いじめ」を題材にした少女漫画が女子小学生に人気

読者の心に突き刺ささるような「口撃、攻撃」が描写された「いじめ」を題材にした少女漫画が、現在 女子小学生の間で人気を集めているようです。当初、この話題を聞いた時には、小学生の娘を持つ身として、また多くの小学生と関わる者として正直、不安にかられました。

我が子が強烈ないじめを描いた漫画を熱中して読んでいることを想像して、「成長に悪影響があるのでは」と、多少なりとも心配や不安に思う親も多いと思われます。早速、自分で何冊か読み、また、子どもたちへ「好きな理由」を聞いたところ、「主人公を応援したい」「主人公の気持ちに共感できる」「いじめ問題に興味があるから」など、多様な回答がありました。

「実際のいじめに繋がらないか」という心配は杞憂

平成25年、文部科学省の調査で小学校でのいじめ認知件数が11万件(過去最多)と発表されたように、現在、いじめは社会問題になっており、多くのメディアが取り上げています。しかし、有効な解決策を見出だせていないのが現状です。もちろん、ニュースや話題は大人たちだけではなく、子どもたちの耳にも入っています。どちらかと言えば、「当事者」となり得る子どもたちは大人よりも切実な問題だと認識しているはずです。

そう考えれば、こうした「自分たちの身近な社会問題を描いた」漫画に興味を持つことは、ごくごく自然のことだと感じます。また、漫画に登場により、大人が心配するのは「現実世界でいじめに繋がらないか」という懸念です。しかし、漫画の多くが「善」と「悪」をはっきり分けて描いており、その心配は少ないと思われます。なぜなら、誰もが悪にはなりたくないという正しい気持ちを、元々は持っているからにほかなりません。

自分なりの答えを見つけるきっかけづくりに

では、逆にいじめを防ぐことに繋がるでしょうか。現実世界のいじめは、「いじめる側が悪い、いじめられる側が悪くない」という単純な問題ではなく、「当事者それぞれの環境、その場の状況・価値観・理解不足、各々のコミュニケーション能力」などが複雑に絡まり、漫画のように「善と悪」が明確な構図にはなりません。

そもそも、子どもたちも漫画やドラマを見る以前から「人をいじめてはいけない」ということは理解しています。しかし、いじめはいつの時代もなくなりません。それほど、難しい問題なのです。一方、いじめを題材にした漫画が、いじめの解決に無意味かといえば、それも違います。個人的には、現在の時代にはとても大きな意味があると考えています。

具体的には、一人で読まずに家族や友達と共有し、「誰が問題なのか」ではなく、「何が問題なのか」、そもそも「何がいじめなのか」「どうすれば解決となるのか」など、自分なりの答えを見つけようとするきっかけづくりにしてもらえれば、漫画の役割・影響はとても大きなものになると思います。

(つだ つよし。/心理カウンセラー)

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