ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

○○妻の残念な失速 山田孝之の北区赤羽は実験的手法に好感

DATE:
  • ガジェット通信を≫

 冬ドラマも続々とクライマックス。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所の山下柚実氏が総括した。

 * * *
 今クールのドラマが始まった時、最も私の期待を膨らませてくれたのは『○○妻』(日本テレビ水曜午後10時)でした。まず、タイトルからして思わせぶり。脚本は『家政婦のミタ』の遊川和彦。柴咲コウが演じるミステリアスな妻。その妻を暗示する“○○”には、いったいどんな2文字が入るのか。世の注目も集まりました。

 最初の段階で「○○妻」は「契約妻」だと明かす。では、結婚をしないで契約を更新していく夫婦関係とは何なのか。いったいなぜ契約にこだわるのかと、あらためて謎をかけ直した。

 制作サイドは、『○○妻』の答は「契約妻」ではないと発表し、○○とは何なのかという謎の力で最後まで引っ張っていこうと気張っていました。たしかに、滑り出しは不条理劇の雰囲気を漂わせていたのです。

 ところが。4話あたりで「妻は過去に子どもを見殺しにし、その重圧で結婚できない」という理由が明かされた。そのとたん、不条理劇の色彩はトーンダウン。契約にこだわる重大な理由が、唐突で何ともリアリティを欠いていた。とって付けた理由にしか見えなかった。そのあたりから、私の視聴テンションも降下していきました。

 最終回まで見続けて、もはや謎はなく陳腐でありきたりな純愛ものへ。主人公は階段からころげ落ちて死ぬ、という安手の幕切れ。○○の2字がドラマで直接示されることはなく、要は、視聴者自身がその文字を考えてください、ということでしょう。

 残念妻。空虚妻。

 申し訳ないけれどそんな2字が浮かんでしまった。

 テレビドラマはハードルが高い。ヒットを狙ってもそう簡単にはヒットしない。制作費はかさむし、作るのには手間がかかる。複雑な条件がいくつもぴたりと揃わなくては、話題作にならない。しかし時に、『半沢直樹』『家政婦のミタ』といったお化け的大ヒット作品が生まれたりする……。

 では、未来を予感させる新しいドラマの兆しはどこに? 私が注目したのは「深夜」枠。「実験的」な試みが許される時間帯。特にテレビ東京『怪奇恋愛作戦』『山田孝之の東京都北区赤羽』の跳躍力から、新しい可能性を感じました。

『怪奇恋愛作戦』(金曜深0時12分)は脚本・監督ケラリーノ・サンドロヴィッチ。内容は、恋愛に負け続けのアラフォー3人女子が妖怪や怪奇現象と闘いながら、遅すぎた青春を燃やすラブコメディー。一瞬おふざけに見えて、実は秀逸なコンセプトワーク。あらかじめ「フィクションである」ことを提示した上での思い切った展開がいい。そうすれば、どんな飛躍もありえない荒唐無稽も、「おはなし」として存分に楽しむことができるという仕掛けです。

「怪奇現象」と「恋愛」をワンセットにしたらどうなるか。「2話で1テーマ」のオムニバス形式で進行したら……といった実験的手法も面白い。タイプがまったく違う3人を主人公に配置するあたりは、ドラマの王道。好みによっていずれかのキャラクターに感情移入ができるという導入装置。「他の人は絶対にやらないアナーキーな傑作」と監督自ら語る異色世界。と同時に、フィクションを楽しむ作品としての典型にもなっていました。

 同じくテレビ東京・金曜深夜の『山田孝之の東京都北区赤羽』もドキュメンタリーとドラマを融合させた独特なタッチで注目を集めました。実在の町・赤羽を舞台に、一人の役者がリアルとフィクションをごちゃまぜにして動き回るいわば「実験」的映像。

 これを見ながら、素材やテーマはまったく違うけれど、帰還兵士のアナーキストを追った衝撃的ドキュメンタリー映画『ゆきゆきて、神軍』(1987年・原一男監督)を想起してしまったのは、はたして私だけでしょうか? 

 30年近く前に公開された『ゆきゆきて…』は、ドキュメンタリーでありつつ、主人公がカメラを意識して演じているとも見える、劇映画とドキュメンタリーの境目を鋭く問うことになった歴史に残る問題作でした。

 4月から、フジテレビも「土ドラ枠」(土曜23時40分~24時5分)を復活させるそうです。「深夜」といういわば常識を越える挑戦ができる「ドラマ実験場」から、次の新鮮な作品の芽が出てくることを心待ちにしています。


(NEWSポストセブン)記事関連リンク
ベアトップ姿の矢田亜希子32歳 “魅せる瞳”を撮り下ろし
織田裕二 「踊る大捜査線」で2次・3次収入得て生活に困らず
吉瀬美智子「最初で最後の秘蔵ショットinバリ島」独占公開

NEWSポストセブンの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。