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大前氏 日本の農業は農業輸出世界第2位のオランダ型へ転換を

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 安倍晋三政権の成長戦略における第三の矢、農政改革が混乱している。日本の農業に未来はあるのか。小国でありながら世界2位の農業輸出国であるオランダをモデルに、大前研一氏は日本の農業も選択と集中をして「クオリティ農業」をめざすべきだという。

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 JA全中(全国農業協同組合中央会)解体や農林水産大臣辞任などで、農政が混乱している。「農政改革」をアベノミクス第三の矢である成長戦略の柱と位置付ける安倍政権は、JA全中の単位農協に対する監査や指導の権限を廃止し、2019年3月までに特別民間法人のJA全中を年間約80億円の賦課金(いわば単位農協からJA全中への“上納金”)を強制的に徴収することができない一般社団法人に移行することを、JA全中と協議して取り決めた。
 
 安倍政権はJA全中の政治力を削ごうとしているわけで、そのこと自体は評価できるが、実はそれは大した問題ではない。

 そもそも現在のJA全中はさほど重大な役目を担っていないし、今や農業生産額に占める農協の取り扱い額は半分ほどでしかなくなっているから、解体したところで大きな影響はないだろう。農政の最も重要な問題は、市町村・地域ごとや業種別に組織されている全国約700の単位農協が弛んでいて本来の機能を果たしていないため、「これから日本の農業をどのように改革するのか」という具体案が何もないことだ。

 いま日本の農業はどうなっているか? 以前、農政問題を論じ、コメが補助金漬けの上に778%もの関税で守られている現状などを批判したが、このままでは競争力のない日本の農業が世界の中で生き残っていけないことは、火を見るより明らかだ。

 私が考える農政改革のモデルはオランダだ。国土面積が日本の九州とほぼ同じで人口1686万人の小国だが、実はアメリカに次ぐ世界第2位の約10兆円もの農業輸出国だ。なぜブラジルやアルゼンチン、カナダ、豪州などの国土大国よりも輸出で稼げるのか?

 きっかけは国境なきEC(ヨーロッパ共同体)の誕生だ。1986年にスペインとポルトガルがECに加盟したことで両国から無関税で安価な農産物が入ってくるようになり、競争力の低いオランダの農民は窮地に立たされた。

 危機感を抱いたオランダは、まさに“選択と集中”で施設園芸にフォーカスするとともに、農業を農民中心に考えずに「産業」と捉えて地域別に農地と生産品目を集約するなどの改革を断行し、付加価値(=競争力)の高い「クオリティ農業」にシフトして躍進したのである。

 現在の日本が置かれている状況も、このEC時代のオランダに似ている。TPP(環太平洋経済連携協定)交渉の妥結が目前に迫り──安倍政権の農政改革も実態はアメリカをはじめとする“外圧”の結果だが──これを奇貨として、今こそ日本はオランダのようなクオリティ農業に一気に転換すべきだと思う。

※週刊ポスト2015年3月27日号


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