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人は100%の力を使っていない?

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「火事場の馬鹿力」という言葉がある。人は切羽詰まると、普段以上の力を発揮するという、アレだ。たしかに、人間は持っている筋力をすべて発揮しているわけではない、という噂を耳にする。これは本当なのだろうか?

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もし、すべて力をフルに使えるようになれば、スポーツなどでも目覚ましい記録向上が見込めるかもしれない。運動生理学を研究する日本体育大学の岡本孝信教授に聞いてみた。

「人間が本来備えている筋力を100%発揮できていないというのは、科学的に証明されている事実です。筋肉に電気刺激をあたえて最大収縮による筋力を測ることで、その筋肉が発揮し得る筋力の最大値を測定できるのですが、人の肉体が本来もっている最大の筋力を100%とすると、人が普段使えているのは、せいぜいその70%程度とされています」

筋肉が備えている力のすべてを発揮できない理由のひとつは、心理的な制限によるものだ。

「人のパフォーマンスというのは、感情や精神面のコンディションによっても制限されます。たとえば、“疲れた”とか“できるわけがない”といったネガティブな感情によって自然にリミッターがかかるわけです。これを『心理的限界』と呼びます」

身の危険を感じたときに「火事場の馬鹿力」を発揮するというのは、この心理的なリミッターが解除されるからだと考えられる。だが、そうしたところで、普段の2倍、3倍の力が発揮できるわけではないらしい。人の体には、さらにもう1段階のリミッターがあるからだ。

「もしも筋肉が持つ100%の力を発揮すると、人の体はその負荷に耐えられず、筋肉そのものや骨、靭帯を損傷します。また、何か重い物を持ち上げる場合でも、そのために必要な筋肉をすべて稼働させることは、簡単ではありません。このように、人が本来もっている筋力の限界値を『生理的限界』と呼びます。たとえ心理的限界がなかったとしても、よほどの極限状態にならないかぎり、劇的に発揮される筋力が高まることはありません。結局、筋力は7割程度しか発揮できないんです」

限界に挑戦するアスリートにおいては、まずは精神的なリミッターを乗り越えることが記録向上のコツ。そのうえで、いかにして生理的限界の上限を引き上げるかがスポーツ科学の命題なのだ。
(友清 哲)
(R25編集部)

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※コラムの内容は、フリーマガジンR25およびweb R25から一部抜粋したものです
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