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Album Review:Flower『花時計』 “大人に近づくこと”を主題にしたアルバムでガールズ・グループとしての際立つ個性をもたらしたものとは…?

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 『花時計』というタイトルにも表れている通り、Flowerの新作アルバムは時間の経過、もっと言えば、10代後半~20代のメンバーが集まったガールズ・グループとして成長し“大人に近づくこと”をテーマにした作品だ。アルバム冒頭の「花時計~Party’s on!!」から、それはこんな風に示されている。<まだまだ大人になんてなりたくないけれどね/甘いだけのお菓子はいらない>。

 “甘いだけ”でないお菓子、として本アルバムの前半で描かれているのは、一筋縄ではいかない恋の物語の数々。2曲目の「秋風のアンサー」では年上の男性との恋愛に背伸びする女子の視点が描かれ、3曲目の「青いトライアングル」では友人の彼氏を好きになってしまった女子の視点から、背徳の関係を示すフラメンコ・ギターの調べとディープ・ハウス譲りのベースに乗せて、恋の三角関係が描かれる。

 あるいは、4曲目の「さよなら、アリス」は男性の目線から、まだ未練を捨てきれない元恋人にそれでも別れを告げる心境が描かれ(ただし、別れの理由についてはここでは明示的には描かれない)、続く5曲目の「熱帯魚の涙」では、今度は女性の視点から、失恋のもたらす痛みとその癒やしがヨナ抜きのメロディやエキゾチックな琴の響き置き換えられて描かれている。

 6曲目「Dolphin Beach」では、そこまで続けざまに描いてきた、ほんのりと苦みを帯びた恋の記憶から一旦遠ざかり、永遠に続くかのような穏やかな恋の陶酔に浸る心境を描く。サビ部分のリズム・パターンに東京女子流「約束」も彷彿とする同曲は、そこまで何度も恋の苦みを語ろうとしていたアルバムだけに、一層その恍惚が際立って感じられる、前半のハイライトとも言える一曲だ。

 「秋風のアンサー」から「Dolphin Beach」までの5曲が“大人に近づくこと”についての歌であることを担保しているのは、長らくJ-POPのトレンドの一つとなっていた高BPM傾向を大きく脱し、ぐっとテンポを押さえたリズム・セクション。ヒップホップやR&B、あるいはハウスからの影響を取り入れたリズム面の、良い意味の落ち着きが、ガールズ・グループによるJ-POPとしての際立つ個性を本作にもたらしている。

 「Dolphin Beach」までを第1部とすると、7曲目「Flower Garden」と続く「Dreamin’ Together feat. Little Mix」は第2部。この2曲では色恋を離れ“夢(成功)”やそれを実現する努力について、といういかにもEXILE一族らしい主題にテーマが移り、曲のリズムもぐっとアップテンポになる。

 更に、9曲目以降は第3部と言え、楽毎のテーマは更にまばらに散らばっていく。サウンド面でも、前半よりシンプルなプロダクションのものが増え、個人的にはこの辺りからクオリティ面でもう一つ物足りない印象を受けた。歌っている内容も日常のほのぼのとしたやり取りをベースにしたような、“等身大”という言葉に相応しいものへと変わっていて、もう既にアルバム前半のスリルが懐かしい感覚に襲われる。

 それでも、少なくともアルバムの前半までで言えば、2015年の傑出した作品の一つだと思う。アルバムの持つ“脱”高BPM志向が、シーンの潮流の半歩先を行くような新鮮さを感じさせるだけでなく、“大人に近づく”という作品のテーマともしっかり補完し合っていることに、メンバー/スタッフを含む、プロダクション・チームとしての熟練を見る思いのする充実の一枚だ。

Text:佐藤優太

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