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坂口恭平「文化の前に交易がある」

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建築家・作家・絵描き・歌手・新政府総理大臣…その他諸々。独自のレイヤーで活動する表現者・坂口恭平さんが読んだ1冊は、彼の書籍の担当編集者でもあり、公私ともに交流のあるライター、九龍ジョーさんの新刊本。彼はこの本をどう読み解いたのか…?

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──坂口さんと九龍さんって、音楽や演劇の趣味は合うんですか?

どうかな…お互いの読み取り方が違うから、あまり共通するところがないんですよね。彼はマエケン(前野健太)のライブやマームとジプシーの舞台に、お客さんが全然いない頃から通って俺に薦めてくるんです。最初は何が面白いかわからないんだけど、数カ月後に合点がいったりもする。そんな感じです。

──「読み取り方の違い」とは?

一番大きいのは、九龍ジョーにはカルチャーが必要だけど、俺にはいらないってことですね。俺も物書きではあるけれど、ある意味野生動物みたいなものだから「音楽」とか「演劇」みたいな枠組みや文脈が必要ない。俺の仕事って、文化や文明がなくても「人」がいるだけで成り立つんです。

もっとも、野生というのは強みでもあるけれど、そのままだと大抵は理解されずに終わってしまうわけです。九龍の仕事は、そういう面白さを、星空に星座を描くようにつないでみせることなんだと思います。

──目利きとして発掘し、その面白さを人に知らしめる仕事ですね。

ええ。ただ、そういう過程がこの本には載っているんだけど、俺のなかではカルチャー本という感じでもないんですよ。ほとんどの人が言語化できていない部分、「交易がそこで行われている」ってことが見えるから面白いんだと思っていて…。

──何を交易してるんでしょう?

結局、客が数人しかいないようなアングラなカルチャーの現場で行われていることって、アイデアや直感の交換であり、経済なんですよ。経済の語源は「経世済民」。つまり、世直しです。そういうことを妄想しながら彼と語り尽くしたことが、この本にも定着されていると思います。

──文化が文化になる手前の話?

そんな感じ。九龍ジョーはそういう日本銀行券が介在する前の太古の交易が行われている場所を見つけてくるんです。彼がこの本の第2章で俺を取り上げたのも、そういうことを示そうとしたんじゃないかと思ってるんですけど…どうですかね?

【坂口恭平の読み方】

▼目次とあらすじだけを読んで想像するのが「読書」

「目次を読んでそれがどういう本かと想像する以上の読書はないと思っています。タイトルと装丁と、多少のあらすじを読んで、想像を膨らませるだけでいい。そのためにわざわざ本を買って、ときどき2~3ページ読むんです」

▼坂口流の読み方だから、全然違う内容だったりして…

「たとえばミシェル・ウエルベックが新しく出した本の話をすると、パリがイスラム政権になってしまって…(内容を滔々と語る)…っていう危ない本に見えちゃうんですよね。俺、まだこの本を1行も読んでないんですけど(笑)」

▼もしかすると海外の人は、読まずに読んでいるのかも?

「でも、俺のテキストがまだ輸出されていないのにベルリンに呼ばれた(※)ってことは、海外の人ってこれに近い読み方をしているんじゃないかな。それもエラスムス賞を受賞した人がそんな感覚なんだから、これでいいんですよ」

※坂口恭平さんは、ヨーロッパで活躍するアートキュレーター、フリー・レイセン氏から依頼を受け、2012年にベルリンでモバイルハウスを制作した。彼女は、2014年にヨーロッパの文化・社会に貢献した人物に贈られるエラスムス賞を受賞している

(宇野浩志=取材・文)
(R25編集部)

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