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相次ぐ弁護士の預り金着服事件、背景にあるもの

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弁護士会が懲戒した件数が初めて3桁に。「除名」も過去最多

日本弁護士連合会(日弁連)が、平成26年の1年間で各地の弁護士会が懲戒した件数が計101件となり、初めて3桁にのぼったことを発表しました。最も重い処分の「除名」も過去最多の6件に。

除名の事案は、依頼者などから委託された金銭(預り金)の着服などです。除名されると、弁護士資格を3年間失います。除名後3年経っても再登録を認める弁護士会があるかどうか、また、再登録されても除名の過去のある弁護士が実際に活動できるかという問題がありますので、除名処分は弁護士にとって致命的です。

弁護士の総数が増えたため、懲戒される弁護士も増えた

まず、懲戒処分数が増加した背景には、弁護士数の増加があると考えられます。平成6年3月31日の弁護士数は14,809人でしたが、10年後の平成16年同日には20,224人、さらに10年後の平成26年同日には35,045人と急激に増加しています。単純な話として、弁護士の総数が増えたため、懲戒される弁護士も増えたといえそうです。

ただし、弁護士数に対する懲戒処分数の割合は、この10年間で0.2%から0.3%の間です。割合としては、懲戒処分数は増えているとまではいえません。

裁判の事件数減少により弁護士の売上が減っている事情も

しかし、割合が増えていないといっても、預り金を着服する事案が目立つようになったことは否定できません。預り金の着服は、いずれバレてしまう犯罪行為です。そのことをわかっているはずの弁護士が、このような着服行為に手を出してしまうのは不思議です。個々の事案の原因は、それぞれ異なりますが、弁護士の売上が減少しているという背景事情もあるのでしょう。

その売上減少の原因の一つは、裁判の事件数が減少していることです。弁護士の仕事は、裁判だけではありません。しかし、裁判の代理人の業務が弁護士の売上の大きな柱なのも事実です。行政事件を含む民事事件の件数は、減少傾向にあります。全国の地方裁判所で申立てられた事件数は、平成21年には計847,138件だったのが平成25年には611,754件に減っています。このうち訴訟の件数だけだと、平成21年の計259,309件から平成25年の計174,945件に減少しています。

着服事案は、若手の弁護士ではなく、60歳代などベテラン世代の弁護士に多く発生しているようです。事務所の必要経費などをまかなうために、預り金から一時流用のつもりで手をつけてしまったかもしれません。全く言い訳になりませんが、事務所経費の縮小など経営改善や生活レベルの見直しなどの対応ができずに、報酬金の前借りのつもりから深みにはまってしまった者もいたのではないかと思われます。

弁護士に金銭を預けっぱなしにせず、報告を求め確認すべき

日弁連では預り金の取扱についての新規程が平成25年に定められています。預り金は、経費の落ちるような口座・報酬用口座とは別の口座で管理し、多額あるいは継続的に預り金が生じる場合は、個別の預り金用口座を作って管理すべきものです。このようなことは、規程で決められるレベル以前の業界常識だと私は思います。

残念ながら、問題のある弁護士を排除・淘汰することは困難です。万一、問題のある弁護士に当たってしまって大きな被害を受けないように、依頼者は弁護士に金銭を預けっぱなしにせずに、報告を求め確認する必要があります。弁護士に長期間、多額の金銭を預けておく必要性は通常はありません。もし、自分の依頼した弁護士から適切に報告されないなど疑問に思った場合は、他の弁護士に相談して、依頼した弁護士に対して是正を求めるべきでしょう。

(林 朋寛/弁護士)

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