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ポートランドに学ぶ[3] 賃貸住宅は新興住宅地から築100年まで多彩

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ポートランドに学ぶ 住んでみたい街といわれる理由
アメリカで「最も住んでみたい都市」に選ばれるオレゴン州の都市ポートランド。全米から移住者が集まるポートランドの魅力をひもとき、住みたくなる街選びのポイントについて考えていこうという全3回シリーズです。収益性重視のアメリカと日本の賃貸住宅の違い

まず、日本とアメリカの賃貸住宅事情の違いについて、押さえておこう。

日本では、相続対策などで自分の土地に賃貸住宅を建てて大家業を始めるといった、個人のオーナーも数多くいる。しかし、アメリカでは、賃貸住宅は投資商品の一つととらえられているので、高い利回りを上げて高く売って、より利回りの高い次の物件を買うといったオーナーがほとんど。

そのため賃貸経営の収益性が重視される。物件を担当する賃貸管理会社の「プロパティマネージャー」が、年初に予算を作成し、オーナーに提案。以降も毎月オーナーに収支報告をする。「オンサイトマネージャー」(日本でいう管理員)の給与や入居者募集の広告費、建物の修繕費、入居者向けのコミュテニィ活動費などのすべてをオーナーが負担するので、プロパティマネージャーの役割は重要だ。

ちなみに、アメリカでは一部の大都市を除き、入居者募集だけをする仲介会社は存在しない。
オンサイトマネージャーが、入居希望者への物件案内や賃貸借契約の締結、家賃の受け取り、建物や設備の保守点検、入居者対応など広範囲な業務を受け持つ。そのため、賃貸住宅の一室に住み込み、常駐していることが多い。

何度も引越しをするのがアメリカの国民性なので、入居者の入居期間は日本よりも短い(平均約1年7カ月)。そのため家賃の滞納には厳しく、入居審査では信用調査会社の調査も入る。家賃の滞納をすると滞納履歴が残るため、たとえ他の都市に移っても賃貸住宅が借りづらいという構図になっている。ポートランドで急増している、新興住宅地の大規模賃貸住宅

ポートランド中心地からほど近い、Happy Valley(ハッピーバレー)やBeaverton(ビバートン)などに、新興の住宅地が誕生している。そのひとつ、Sunridge Terrace(サンリッジテラス)を紹介しよう。

【画像1】ハッピーバレーにあるサンリッジテラス。すぐ近くにショッピングセンターもある。(撮影:住宅ジャーナリスト/山本久美子)

広い敷地に全216戸の低層アパートメントが立ち並び、間取りは5タイプ。

・1ベッドルーム 1バスルーム(シングル・カップル向け) 約62m2 1050ドル(約12万5000円)
・2ベッドルーム 1バスルーム約80m2 1135ドル(約13万5000円)
・2ベッドルーム 2バスルーム 約82m2/約97m2 1265ドル(約15万円)/1360ドル(約16万2000円)
・3ベッドルーム 2バスルーム 約107m2 1495ドル(約17万8000円)
※日本円は、1ドル=119円で換算

最も戸数が多いのは、約97m2のDOUGLASで92戸を占める。

家賃には駐車場を含んでいるが、このほかに水道光熱費やゴミ回収費が別途かかってくる。ペットを飼う場合は、ペット用の保証金や家賃上乗せが必要。初期費用は、敷金が最低300ドル。入居申し込みの際に40ドルがかかるが、これは信用会社の調査費用に充てられる。

【画像2】2階の2ベッドルーム+2バスルーム(DOUGLAS)を見学(撮影:住宅ジャーナリスト/山本久美子)

【画像3】DOUGLAS約97m2の間取り(撮影:住宅ジャーナリスト/山本久美子)

【画像4】リビングダイニング。撮影者側壁面に、暖炉のインテリアがある(右)(撮影:住宅ジャーナリスト/山本久美子)

【画像5】LDに隣接するキッチン。家電も備わっている(撮影:住宅ジャーナリスト/山本久美子)

サンリッジテラスは空室率が1.4% ときわめて低い。日本の賃貸用住宅の空き家率が全国平均で18.8%(総務省「平成20年度 住宅・土地統計調査」)ということから考えると、空室が常態化せずにすぐ入居者が決まるという効率的な状況であることが分かる。長く住んでもらうためには、賃貸管理会社がクリスマスやハロウィンなど入居者が参加して楽しめるイベントを開催するなど、さまざまな工夫をしている点も見逃せない。ポートランド中心部は、築年の古い建物をリノベーションした賃貸住宅が多い

一方、ポートランド中心地には築年の古い建物がリノベーションされて、賃貸住宅となっている。
2物件を紹介しよう。

中心部にある「ラファイエット アパート」は、1920年にホテルとして建設されたものを賃貸住宅に改修したもの。7階建て総戸数50戸で、最上階のペントハウス4戸を除き、スタジオタイプ(約28~33m2)と1ベッドルーム1バスルーム(約37~39m2)と比較的コンパクトな部屋が提供されている。
家賃は、スタジオタイプが675~695ドル、1ベッドルーム1バスルームが775~900ドルで、家賃には水道光熱費やゴミ回収費などが含まれる。駐車場は道路を挟んだ向かいにあり、月額75ドルで借りられる。保証金は300ドル~900ドル。

共用のランドリールームがあり、ルーフトップテラスでは居住者のための映画会を上映したり、ハロウィンパーティーなどを開いたりしている。

【画像6】ラファイエット アパート。エントランスはホテルの面影が残る。右の写真右側がオンサイトマネージャーの事務所で、彼女は最上階のペントハウスに住んでいる(撮影:住宅ジャーナリスト/山本久美子)

【画像7】ラファイエット アパートの室内。(撮影:住宅ジャーナリスト/山本久美子)

次が、中心部のオールドタウンにある「エベレット・マイクロ・ロフト」。1914年に建築され、歴史的建築物にも指定されている建物は、1階が店舗、2・3階は各9戸ずつ18戸の賃貸住宅となっている。エレベーターはなく、3階に共用のランドリールームがあり、地下に駐輪場がある。さらに地下は、貸しルームや貸しスペースになっている。

満室ということで、オンサイトマネージャーの居室を見せてもらった。2012年に改修されただけあって、内装や水まわり設備なども新しく快適そうだ。室内の天井に新しく管が通ることになっているが、見学した賃貸住宅のなかで最も天井が高いので、あまり気にならなさそうだ。

それよりも、冒頭の写真のように、隣接する建物の外壁が室内の壁にもなっていて(日本の建築で可能かどうか分からないが)、不思議で趣を感じる。筆者が最も気に入った賃貸住宅だ。

【画像8】歴史的建築物に指定されている、エベレット・マイクロ・ロフト(撮影:住宅ジャーナリスト/山本久美子)

【画像9】オンサイトマネージャーの部屋。リノベーションしているので、新築と遜色ない(撮影:住宅ジャーナリスト/山本久美子)

【画像10】地下の駐輪スペース。写真奥の扉の中がレンタルスペースになっている。(撮影:住宅ジャーナリスト/山本久美子)

アメリカで最も住んでみたい街といわれるポートランド。人口の流入が続き、通勤圏の郊外エリアに大規模な住宅地も誕生している。冒頭述べたように、投資商品として高い収益性が求められるアメリカでは、オーナーや賃貸管理会社が入居者の満足度を高めるサービス活動などの工夫をしている。

一方、中心部では築100年といった古い建物が賃貸住宅へとリノベーションされ、都心部で働く人や学生の人気を集めている。

日本の賃貸住宅の空き家率は18.8%と極めて高い。ポートランドのような人口が増加している街でさえ、居室の快適性を高めたり、入居者参加型のイベントを毎月のように開催するなどの満足度アップの手立てを打っている。日本の場合も、オーナーや賃貸管理会社がきちんと投資をして入居効率を上げるといったことを考える、参考の事例になると思う。

○協力/日本賃貸住宅管理協会、ポートランド在住・谷田部勝氏●シリーズ第1回「コンパクトで人と環境にとことん優しい街」
HP:http://suumo.jp/journal/2015/01/30/76936/
●シリーズ第2回「クリエーターが集まり活気づいたパール地区」
HP:http://suumo.jp/journal/2015/02/17/78017/
元記事URL http://suumo.jp/journal/2015/03/13/79035/

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