都会のタワーマンションが住民・地域のつながりづくりに挑戦

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都会のタワーマンションが住民・地域のつながりづくりに挑戦(撮影:黒澤崇)

東京都庁近くの西新宿5丁目で行われている再開発。2017年に完成するのが、三菱地所レジデンスなどが進める大規模タワーマンション「ザ・パークハウス 西新宿タワー60」だ。マンションとして国内最高階数の60階建て、住居数は954戸になる(紹介記事:http://suumo.jp/journal/2014/11/27/73847/)。
昨今、コミュニティ形成に力を入れるマンションは増えてきているが、こちらでは60階建てにちなんで60回のイベント、エリアコミュニティプログラム「西新宿 CLASS in the forest」を実施予定。その第1回目が開かれたのでレポートする。販売前から入居後まで計60回行う前代未聞のイベント

イベントは2015年1月20日、平日の夜19時から、再開発地区の西新宿5丁目の近くにある高層ビル28階のレジデンスギャラリーで開催された。会場には30代から60代くらいまで40~50名の参加者が、各テーブルに分かれて5~6人ずつ座り、サンドイッチなどの軽食や飲み物も食しながら実施されるスタイル。

今回のプログラムを企画、コーディネートしていくHITOTOWA INC.代表の荒昌史さんが「西新宿 CLASS in the forest」のコンセプトを説明する。
「都心のマンションは同じマンションの住人や周辺住民とのコミュニティやつながりを求める傾向は少なかった。しかし、東日本大震災の惨状や復興の過程を見て、日本人の住まいの価値観に変化が出てきた。多くの人と助け合い、地域とつながることでもっと豊かな暮らしができるのではないか。そうしたコミュニティをマンションで実現できるようプログラムを企画しました」

【画像1】「西新宿 CLASS in the forest」のコンセプトを説明するHITOTOWA INC.代表の荒昌史さん(撮影:黒澤崇)

【画像1】「西新宿 CLASS in the forest」のコンセプトを説明するHITOTOWA INC.代表の荒昌史さん(撮影:黒澤崇)

挨拶を終えると、荒さんによるナビゲートで「同じテーブルに座っている人同士で自己紹介してください」とグループワークを行う。めいめいが自己紹介し、終わると拍手。硬かった表情が和やかになった。

今回は1回目ということもあり、本プログラムに関わる人々がプレゼンテーションを行った。プレゼンターは4人。年間12万人が訪れる「東京おもちゃ美術館」の館長を務める多田千尋さん。世界的な作曲家・坂本龍一氏が設立した国産材の普及啓蒙活動を行う「more trees」事務局長の水谷伸吉さん。200mハードルでアジア記録を持つ「アスリートソサエティ」の理事でかけっこマイスターの秋本真吾さん。防災や減災をテーマに研修をする「Community Crossing Japan」の研修ディレクターを務める吉高美帆さんだ。キーワードは「多様性」「自然」「防災減災」

同マンションの特徴として挙げられるのが、前回の記事でも書いたが、1900㎡にも及ぶ緑地「結いの森」と共用スペースの充実だ。共用棟「フォレストハウス」には、緑地を望めるスペースや、2階に杉板無垢材を使用した交流スペース「ENGAWA」があり、ここがコミュニティ形成の中核の場となるはずだ。

「東京おもちゃ美術館は、戦禍を免れたものの、後に廃校になった小学校の建物を利用しています。地元の人々が残そうということで、内部がリノベーションされました。その中にある赤ちゃん木育ひろばの特徴は、内装に木をふんだんに使ったこと。その効果だと思いますが、多くの家族が長時間滞在し、安心して遊んでいます。木にはコミュニティを促進する力がある。共用スペースのENGAWAに国産材を多く使ったのは、木があることで住人同士の交流が進むと思ったからです」と、共用部を監修する多田千尋さんは話す。

【画像2】東京おもちゃ美術館館長の多田千尋さんは、国産材を多用した共用スペース「ENGAWA」など共用部を監修(撮影:黒澤崇)

【画像2】東京おもちゃ美術館館長の多田千尋さんは、国産材を多用した共用スペース「ENGAWA」など共用部を監修(撮影:黒澤崇)

同じく共用部監修を務める「more trees」の水谷伸吉さんは、今後のコミュニティプログラムへの抱負を話す。「新宿のど真ん中で、これだけ自然が豊富なマンションは珍しい。竣工後はここを拠点にして、住民と実際にある森林をつなげるようなプログラムを企画したい。例えば、近年、問題になっている鹿の増殖を知ってもらうために、高たんぱくの鹿肉を使った料理イベントや鹿の皮を使ったレザークラフトなど」三菱地所グループのCSR活動「空と土プロジェクト」とも連携し、都市と地方、農山村をつなぐツアー等も予定しているという。

東日本大震災で甚大な被害を受けた福島県相馬市出身の吉高美帆さんは話す。「防災・減災で最も大事なのが『共助』の精神です。東日本大震災のような大きな災害だと、公的機関の支援『公助』は発生から1週間は期待しにくい。そこで大切なのが、自分で自らの身を守る『自助』はもちろん、住民同士がつながり、いざというときにお互いを助け合うことができる『共助』なのです」
吉高さんは、今後、本プログラムのなかで、東日本大震災の被災経験を基につくったワークショップ主体の実践的な防災・減災プログラムを実施していく予定だ。

【画像3】吉高美帆さんは「西新宿 CLASS in the forest」のなかでワークショップ主体の防災・減災プログラムを行う(撮影:黒澤崇)

【画像3】吉高美帆さんは「西新宿 CLASS in the forest」のなかでワークショップ主体の防災・減災プログラムを行う(撮影:黒澤崇)

「今回を含めて入居までに15回、入居後から2020年までに45回、計60回のイベントを6年にわたって行う予定。今回はオリエンテーションの意味合いが強かったですが、今後は『触れる自然』『共助の防災減災』『国際先進都市としての多様性』など各コンセプトに特化したイベントを開催していきます」と担当は抱負を語る。

次回の開催は、物件の販売開始後になる予定なので、実際にこのマンションに住むことになる参加者も増えそうだ。実際に購入する前から、マンションのコミュニティの一端に携われることは、購入検討の判断に大きく影響しそうだ。

首都直下地震などに備えるためにも、マンションの防災・減災は必須。大規模マンションでは、住民が主体となって高い参加率をほこる避難訓練の例なども出てきている。特にここ西新宿5丁目は、「不燃化特区」に指定されており、燃え広がらない街として改善をするよう指定されている地域。1000名規模の住民が集うマンションとその近隣住民の避難までも考えた早い段階からの準備が重要だ。

それだけではなく、世代の違う人がふれあい、ともに遊んだり学んだりすることが実現できれば、設備のスペックだけでははかれない、暮らしの充実が得られるだろう。残り59回、このエリアコミュニティプログラムがどのように進化、発展をしていくのかこれからも注目していきたい。

【画像4】5人のプレゼンが終わった後、和やかな雰囲気で参加者も交えて質疑応答が行われた(撮影:黒澤崇)

【画像4】5人のプレゼンが終わった後、和やかな雰囲気で参加者も交えて質疑応答が行われた(撮影:黒澤崇)
元記事URL http://suumo.jp/journal/2015/03/10/79476/

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