ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

「みんなと同じである必要はない」 バベルの学校から考えよう

DATE:
  • ガジェット通信を≫

Photo credit: 『バベルの学校

TRiPORTライターのレティです。

皆さんは「バベルの塔」の話をご存知ですか? 旧約清書の「創世記」によると、 もともと地球上のすべて人々は、同じ言語を話して、ひとつの民族だったそうです。人々は自らの団結力を高めるために、「天国への階段(塔)を築きはじめました。しかし、神(エホバ)にとっては人間の団結力が脅威でした。そこで、人間が「単一民族」で「単一の言葉」を話しているからそのような状況になったと考え、 地上を混乱させるために、人間が使う言葉をそれぞれ分け、お互い通じないようにしました。それによって人々は、お互いに理解することができなくなり、世界は分裂していきました。

世界が多民族・他言語である事実をマイナス面から見るのならば、この「バベルの塔」の話はぴったりでしょう。しかし、違う視点から考えてみると、「文化や言語が異なるからこそ豊かな出会いが生まれる」ということも言えます。

というわけで、今回は「違いの素晴らしさ」を教えてくれる映画『バベルの学校』を紹介します。

『バベルの学校』(2013年)

アイルランド、セネガル、ブラジル、モロッコ、中国など、11~15歳の子供たちが世界中からパリにある中学校へやってきました。家庭的な事情でやってきた子供もいれば、つらい母国の生活から逃れてきた、あるいはもっと良い生活を求めて移民してきた子供もいます。

バベルの学校』の主人公である24人の移民生徒は、フランス語の集中トレーニングを受けることができる「適応クラス」に通いながら、他の教科も学んでいます。国籍も宗教も違うこの24人の子供たちは、ブリジット・セルヴォニ先生に見守られながら、新しい生活を始め、さまざまな壁を乗り越えていきます。『バベルの学校』は異国の地フランスで、葛藤を抱きながら友情を育んでいく子供たちのたくましさを教えてくれる映画です。

Photo credit: 『バベルの学校

適応クラスとは?

さてここで、この映画をより深く理解するためにフランスの移民事情を見てみましょう。フランスに生まれた子供には、親の国籍に関係なく、フランス国籍を与えられます。近頃フランスでも移民流入が制御されるようになっていますが、出生地主義など、フランスが統合に重きをおいて、移民受入に対して比較的寛容な姿勢をとっていることには変わりありません。

現在フランスには年間3~4万人が移民しているようです。その子供たち全員が学校に入る義務と権利があります。そのフランス語が話せない移民の子供たちのために「適応クラス」が存在しているのです。

「適応クラス」とは、フランスに移民してきたばかりの中学段階の子供を対象とした、フランス語を集中的に教えるクラスのことです。年齢や国籍も異なれば、なかには母国で十分な教育を受けられなかった子供もいます。フランス語の習得具合と母国で受けた教育レベルに応じてクラスが分けられ、徐々に通常のクラスへ移動します。「適応クラス」のある学校は、フランス全土に約840校あり、うち140校が移民人口の多いパリに集中しています。

映画『バベルの学校』のなかで如実に描かれているように、「適応クラス」に入っている子供たちのバックグラウンドは多様で、言語はもちろん、宗教、習慣、そしてフランスに移民した理由も違います。「適応クラス」では子供たちに、自分が経てきた困難や、つらい生活を言葉にして、表現する機会を与えます。このチャンスについてセルヴォニ先生が次のように話しています。

アングロサクソン(英国系の人)の子供たちは、話す教育を受けているため問題ありませんが、中国などの子たちにとっては、話すこともプレッシャーです。でも、自分のことを自分の言葉で話していくことで、他の人から自分自身を「理解してもらえる」ということが次第にわかってきます。

(以上パンフレットより)

Photo credit: 『バベルの学校

「違ってるからいい」

最近、パリで起きたシャルリー・エブド襲撃テロ事件の影響もあって、外国人に対し嫌悪感を抱いたり、外国人への恐怖心が強くなっている国が多いかと思います。しかし、異文化を受け入れ、お互いに理解し合う努力をするだけで、違うことがどれだけ素晴らしいかと実感できるはずです。『バベルの学校』では、「違い」が素晴らしいことであると思うことができ、ベルトゥチェリ監督も以下のように主張しています。

まず、国や文化の違いは決して悪いことではなくて、すばらしいことなのだとお伝えしたいです。「みんなと同じ」である必要はありません。同じであるほうが安心できるかもしれませんが、もっと自分の個性を出していきていきましょう、と言いたいです。
また、他人を受け入れること、他人に偏見をもたずに接することは、非常に大切だということもお伝えしたいです。相手を理解することで人種問題もなくなり、共存していけると思います。外国人を温かい目で迎え、隣にいる人にいつも手を差し伸べる心がけが必要だと考えています。他人の立場に立って考えるのです。

(以上パンフレットより)

さいごに

移民や統合などが日本と関係ないことだと思う人もいるかもしれませんが、日本にも外国人とその子供たちが暮らしているのは事実です。また、「日本人」は「単一民族」だと言われていますが、実は昔、北から北縄文人と南から来た弥生人の末裔です。そうした「日本人」のルーツを見直し、偏見的な考え方を捨ててみてもいいではないでしょうか? 『バベルの学校』がその機会を与えてくれるかもしれません。

『バベルの学校』の上映情報はこちら

(ライター:Letizia Guarini)
Photo by: 『バベルの学校

カテゴリー : 生活・趣味 タグ :
Compathyマガジンの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。

TOP