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安倍首相の被災地視察 復興進行が目に見える場所を主に選定

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 首相就任以来、安倍晋三氏はほぼ月1回のペースで20回以上にわたって被災地視察を繰り返してきた。

 宮城・亘理(わたり)町のイチゴ、石巻市の焼きガキ、福島・小名浜市のイカ、岩手・宮古市のワカメ、宮城・七ヶ浜町の焼き海苔……。被災各地の視察で特産品を振る舞われるたび、安倍首相は記者団に「ものすごくおいしい」などと笑顔で語り、被災地グルメを満喫してきた。

 岩手・大槌町では伝統刺 「刺し子」の工房を訪れたほか、宮城・気仙沼市では漁の網を編む伝統文化を応用したニット製造会社でカーディガンを試着。編み手として働く地元女性たちの嬌声に気をよくしたのか「軽くて暖かい。自分でいうのもなんですが似合ってますね」とニンマリしながら軽口を叩いてみせた。

 首相の被災地視察はいつも和気藹々(あいあい)とした雰囲気の中、復興が目に見えてわかるような場所ばかりで行なわれている。2月14日、居住が始まった気仙沼の災害公営住宅を視察した安倍首相はテレビカメラの前で「復興もいよいよ新たなステージに移りつつあると実感した」などと語り、復興の進展を強調した。

 しかし実際に被災地を歩くと、現実は「新たなステージ」にはほど遠いことがわかる。首相が視察した気仙沼の公営住宅建設予定地前で商店を営む男性がいう。

「来年3月までに2000戸以上の公営住宅が完成するって聞いてましたけど、ご覧の通りですよ。実際にできているのは100戸もないじゃないですか」

 気仙沼市によると、計2155戸の建設を予定しているが、完成しているのは今年1月時点で75戸。4年もかかってこの数である。計画通りの来年3月までの整備はとても間に合わず、1年2か月も計画を先送りした。これが「新たなステージ」だろうか。

 安倍首相が焼きガキに舌鼓を打った石巻市でも同様だ。庄司慈明・市議が憤る。

「石巻市では76.6%の家屋が被災するなど被害が大きく、4500戸の復興住宅が必要です。しかし3月末までの完成予定分を含めても936戸しかない。600戸分は土地の確保さえできていない。政府がカネだけ払えばそれで解決するというものではない」

 甚大な被害を受けた航空自衛隊松島基地がある東松島市を安倍首相は2度訪問している。菅原節郎・市議がこう指摘する。

「総理が視察した先は、松島基地と小松南団地という市内でも復興が進んだほんの一部だけ。そこにテレビや新聞の記者も同行するから、県外の人から『復興は順調に進んでいる』と思われている。

 ところが、小松南団地から車で10分も行けば仮設住宅が立ち並ぶエリアがあり、143人の犠牲者が出た東名地区には震災後から手つかずのままの荒れ地が広がっている。総理にはぜひバランスのとれた視察をしていただきたい」

 本誌記者は首相が視察した岩手・大槌町の水産加工会社や山田町の造船会社などを訪問した。たしかにそれらの建物はピカピカだ。しかし、その建物は無残な荒野の真ん中にポツンと建っていた。

 官邸にとっては首相の被災地訪問はパフォーマンスでしかない。官邸筋によれば「総理の視察先は復興が目に見える形で進んでいるところを主として選定している」という。岩手県の幹部職員が苦々しい顔で話す。

「安倍首相が視察すると、同じ施設を閣僚が視察し、さらに復興庁の官僚が同じルートをなぞるケースが多い。首相の訪問先が“復興先進地”なので、中央から来た人は厳しい現場を素通りして帰ることになる」

※週刊ポスト2015年3月20日号


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