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イスラエルのママさん起業家 「もし私が男性だったら『女性の苦労を理解しない社長だ』と言われたでしょう」

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イスラエルは、医学研究の水準が国際的にも高いといわれています。医薬品の研究機関であるQ-トライアル株式会社の創設者兼最高経営責任者で、女医のオラニット・ヤナイ‐コヘレットさんの経歴には、経営学と経済学の学士号が記載されています。

私が「ちょっと珍しいですね。普通お医者さんって、医学だけじゃありませんか?」と尋ねると、「私はまずビジネスと経済学を学んだの」という答えが返ってきました。

「そのあとに医学部に受かったから、南部のベングリオン大学に行ったのよ。親はあまりいい顔はしなかったわ。だって、あと7年も勉強することになるから」

夫が起業を後押し「必要だったのは、勇気だけ」

でも、イスラエルの大学では学部を問わず学費は一律なので、たいていの親は子どもが医学部に入ったら喜ぶと思うのですが。親の心配をよそに、オラニットさんは自分の目標の道へ進み、7年間の医学部生活を終えます。

卒業が近づいたとき、彼女はどの分野を専門にするか決めることに迷ったそうです。医学界では一つの専門を決めると、一生そこに留まることが多いのも、決断を難しくする理由の一つでした。

そんな時、ある教授に招かれて、彼の法医学の研究所に入ることになります。研究内容や待遇、国内の中心地テルアビブという立地条件が希望に見合っていたからです。そこで3年8か月働く間に、彼女は税務士の夫と出会い、結婚もしました。

ところが2001年頃、職場がある事件に巻き込まれてしまいました。国を相手に勝訴はしたものの、彼女と同僚は職場を去ることを決めます。ちょうど医療関係の起業が盛んになり始めており、オラニットさんはスタートアップ3社を経て、さらに経験を積み、フリーランスとして米企業のコンベンスで臨床研究に携わりました。

しかし雇われて働くことへの疲れや、快適ではない病院勤務などを考えると、心は起業へと向かっていきました。夫に相談すると「2年間は貯金でも食べられるから」と賛成してくれました。多額の資本金が必要だったのかと聞くと、

「それは、全然いらなかったの。必要だったのは、勇気だけ」

医学部の前にビジネスを学んだことが活きた

起業の内容は、製薬会社が企画する臨床研究のモニターをして、レポートを発注者に提出するもの。器具は必要なく、医学の知識と1台のコンピュータで始めることができました。

オラニットさんはそれまでの経験と知識を活かして、初めは独りでプロジェクトごとに仕事を引き受けました。忙しくなると薬剤師の義妹に助けてもらい、もっと仕事が増えると最初の従業員を雇いました。

こうして現在のQ-トライアル株式会社ができあがっていきました。金銭面は夫が賄い、現在は女性従業員14名の会社に成長しています。

「過去には24人いたんだけど、2008年のリーマン・ショックで縮小して、その後2010年にまた拡大したのよ」

従業員が全員女性であることの理由は、「応募してくるのが女性だけだから。もちろん職種に合う男性が応募してきたら採用するし、採用条件に宗教、性別、国籍は関係ない」ということです。今後の夢は、どのようなものでしょうか?

「現在は製薬のための研究をする会社ですが、近い将来、新たな2分野を加えようと思っています。1つは米国のパートナー企業と組んで、同内容の臨床研究の会社を米国で設立したい。もう1つは、これまで関わってきた医療翻訳の経験を活かして、医療以外の分野を扱う翻訳会社を創ることです」

社名に含まれる「Q」は Quality(質)の意味。翻訳分野も、1言語2人のネイティブでチェックさせる方針です。とても精力的に事業を展開していますが、彼女は「ビジネスについては医学部では何も学べなかったけど、それ以前のビジネスと経済学の勉強が今役に立っています」と言っています。
17歳の長男「僕はママの会社で働きたい」

育児と仕事の両立に問題はないのでしょうか?

「家にいても、コンピュータで仕事関係のメールをチェックしていることが多いです。子どもは男の子ばかり4人。彼らの習い事はもちろん知ってるけれど、何曜日の何時から、というようなことは夫に任せっきりです。子どもたちは、私に大事な仕事があることを誇りにしています。17歳の長男は会社の内容にかなり興味を持ち始めていて、そこで働きたいと言っています」

女性起業家として得だったこと、損だったことは?

「損だったことは思いつきません。もし自分が男性だったら、『家庭と仕事を持つ女性の苦労を理解しない社長だ』と女性従業員に言われたでしょう。でも私自身、産休後に職場に戻ることや、保育園の終了時間のこともみんな経験しています。それに私は、うちの従業員の誰よりも子どもの数が多いのです。医学という私の分野には、待遇的に男女の差はありません」

インタビューを終えると、オラニットさんはさわやかな笑顔を残して、素早く職場へ戻っていきました。

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