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夢は「ふつうの生活」 現代の若者たちは何を考えているのか

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 「いまどきの若者は、消費もせず、無気力でけしからん」というバブル世代からの小言に辟易している若者世代。「さとり世代」「ゆとり世代」などというレッテルを貼られていますが、これからの世界でどう生きていくのでしょうか。

 『若者はなぜ「決めつける」のか』(長山靖生/著、筑摩書房/刊)は、1990年代から2010年代までの若者の変遷を追った一冊です。著者の長山さんは1962年生まれの「新人類」世代。タイトルを見たとき、私、学生ライターの石井は「また若者を叩く新書が出たのか」とため息まじりにページをめくりました。
 しかし、そこにあったのは、若者を非難するのではなく、右肩下がりの社会の中でどうやってサバイバルしていくべきかを一緒になって考える姿勢でした。

■今の若者たちを苦しめるもの
 2010年代になると、ゆとり教育を受けた世代が新人社員として実社会に出てきました。バブル崩壊以降、好景気を知らずに育ったため、少子高齢化の日本経済が縮小していくことは受け入れています。彼らの社会に対する期待値は低く、与えられた条件の中でいかに自己実現するかが問題になっています。そんな若者世代は、日本のタテ社会を嫌い、仕事終わりの飲み会にも乗り気ではありません。
 たしかに、バブル期のような「出世の夢」を抱いている若者は、筆者の周囲にはまったく見つかりません。むしろ、「海外への移住も考えないと」、「親の財産を確認しておかなきゃ」といった会話が、大学生や新社会人の知人となされています。
 しかし、何よりも若者世代を苦しめているのが、親世代の「就職して、結婚して、子供を持つのが普通」という価値観を達成することが、現代ではかなりの困難を伴う、ということなのです。

■手に入らなくなった「ふつう」
 ふつうに勉強して、ふつうに仕事に就く。ふつうに結婚して、ふつうに親になる・・・。そんな当たり前の生活が、今では手に入らなくなっています。
 もはや「クレヨンしんちゃん」や「サザエさん」に出てくるような、サラリーマンと専業主婦が一軒家を持つなんてことは夢のまた夢。幼い頃、「つまらない大人だ」と思っていたヒロシやマスオさんは、家族全員を養うすごいサラリーマンだったのだ、と感じるようになりました。
 さて、なぜ若者は「ふつう」の幸せを手に入れられなくなってしまったのでしょうか。その原因に、「大学を出ても就職できなくなった」ことが挙げられます。多くの学生たちは、純粋な学問的興味からではなく、就職で有利になるために良い大学に進もうとしますよね。しかし、大企業の採用人数が増えないのに大学進学者が増加したのため、競争は激しくなります。 
 「高学歴=高収入が当然」という考えがまだ根強くあるため、学生は「偏差値の高い大学まで進んだのだから・・・」と、有名な大企業ばかりを受けようとします。そして就職活動に失敗してニート、または大学院に進むことになる学生もいます。もちろんニートになっても、大学院に進んでも必ずしもいい就職先が見つかるわけではありませんが…。

■すべてを避けては生きられない
 就職ができなかったり、うまく生活ができなかったりしても、根拠のない自信を強く持って、自分のダメなところを認めない「否認系弱者」たちがいます。
 実力が測られる機会を回避しようとするために、「たまたま」、「本気を出さなかった」と言い訳します。受験や就職など、ことあるごとに勝負をしなければいけない現代では、現実と折り合いをつけるには必要な知恵かもしれません。現代の教育では「自分の特色を生かして」「好きな事を探して」とよく言われます。否定することも一つの個性ですが、「これはイヤ」、「これもムリ」と全てを避けていては生きられません。選択肢の少なくなっていく現代社会では、望まない就職先であっても、生き方であっても、何か一つを絶対的に回避したら、それ以外の我慢できる困難や不便には耐えていかなければいけないのかもしれません。

 本書は、現代の日本を見据えているために明るい内容のものではありません。しかし、同様に根拠のない悲観をぶつけているのでもありません。若者も、若者について知りたい年長者にも、手にとってほしい一冊です。
(新刊JP編集部/石井結)


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