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【シェアな生活】あなたは電子書籍で”懐かしさ”を感じることができますか?――『ブックシェアカフェ』菅谷洋一氏インタビュー(3/4)

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懐かしさってシェアできる?

お店作り、商品づくり、サービスづくりはこれまでお店側のやることだった。でもこのお店ではお客さんにそこまで参加してもらいたいという。参加できるところにはすべて参加できる。それがこれまでのサービスとちょっと違う気がする。そんな『ブックシェアカフェ』企画担当、菅谷洋一さんのインタビュー3回目です。前回はこちら。
※連載シリーズ『シェアな生活~共有・共感・共生がもたらす新しいライフスタイル』関連記事です。

登場人物
菅谷=菅谷洋一さん。『ブックシェアカフェ』企画担当。
深水=ききて。深水英一郎(ガジェット通信)

仕事にも使える?

●”ブックシェア”という業態をどう広げますか?

――深水:ちょっと話かわりますけど、ここって仕事にも使えますよね?

菅谷:使えます、使えます。

――深水:電源も無線LANも自由に使える。実際、「これ、シェアオフィスとして使えるわ」と気づいた人に毎日来られたらまわらなくなっちゃう?

菅谷:「満席の時は2時間まで」とかいくつかルールを作っているんで大丈夫かと思います。休日は満員が出るんですけど、平日は全然大丈夫だし、逆にまだまだ使ってもらったほうがいいです。キャパオーバーでも、実験という部分があるので、いろんなデータは欲しくて。月額2000円じゃなくて単価をもうちょっと上げたほうがよかったかもしれないし。いじりたいパラメーターはいっぱいあるんですよ。実際にやったからわかったこともすごく多いです。

――深水:『ブックシェアカフェ』に本以外にもいろんなアイテムが置いてあったら面白いなと思いました。

菅谷:アイテムを増やすとか、広さが必要なことはコストと比例しちゃうのでちょっと簡単には実現できないんですけど、複合施設の中のひとつのやり方としてはハマる可能性はあるかと思います。

高円寺と読書

――深水:「高円寺店」とありますが、どんどん展開するつもりは?

菅谷:どんどん、というのはないですけど。広げるつもりは……ここは専門店になりますけど、セルとかレンタルの複合化とか、違う業種へのラックジョビングとかで広げて行くとか、そっちのほうはあるだろうと思いますね。

――深水:ラックジョビング?

菅谷:流通や小売の用語なんですけども。店舗から一部の棚とか売り場を任されて運営する業態です。ここはブックシェアの専門店になっていますけども、セルやレンタルと一緒に「ブックシェア」って言うコーナーがあってもいいかと思いますし。あとは、たとえばフィットネスジムとかの一部のラックジョビングとしてやっていければなあとちょっと今思っています。ある程度の規模があった方が、SNSも面白くなりますし。

――深水:ブックシェアだけでチェーン化するというのは考えずにやってるんでしょうか。

菅谷:正直、専門店だときついなあと。ここは、民度の高いエリアというか、お客さんの反応も最初から良かったし。この「高円寺」という場所は、ライブハウスや古本屋が多かったりという文化がもともとあって、すんなり受け入れられた。この土地だからという部分も多いと思います。どこに行ってもできる業態じゃないかもしれないです。たとえば、僕は茨城出身なんですけども、地元でこの業態はなかなか難しいかなあ。お客さんにも発信力がないとお店が面白くなっていかない構造なので、やっぱり東京とか一部の場所でしか成立しないかなあ。

――深水:「高円寺」とはまた違った方向性の大人の街などはどうですか? 「オシャレ感」のある街とか?

菅谷:まあ……上の方の人たちからは、世代的なものもあってブレストでは出てきますけども、僕からすると青山や六本木は坪単価的にないだろうなあと思いますけど(笑)。「六本木ヒルズだから1万円とるぞ」っていう世界観にはなると思います。

シェアに受けた衝撃

●菅谷さんがかつて”シェア”に受けた衝撃について

――深水:店舗づくりなどにソツがないというか、ブログなどを拝見してても立ち上がり方がスムーズですよね。前例のなさそうな業態なのに。

菅谷:でも僕自身は、お店に関わるのはもう10年以上ぶりで。

――深水:そうなんですか? 菅谷さんはデジタルコンテンツ系の会社をやってらっしゃいますよね。

菅谷:僕自身は、最初に入った会社こそ『TSUTAYA』だったんですけど、最初の2年くらいしかお店の仕事していなくて。3年目からはUSENに行って動画配信をやって。だから、どっちかと言うとインターネット業界の人間なんです。その後、USENで『gate01 ShowTime』( http://www.showtime.jp/usen/ )を立ちあげて転職をして。KDDIで『EZチャンネル』とか電子書籍の立ち上げに携わって。その後に、USENが『GyaO』を始めるので、当時USENの100%子会社だったところに行って番組制作をやって。なので、専門は動画配信の人間です。
 『ShowTime』『EZチャンネル』『GyaO』とやってきて、『GyaO』は立ち上がりが良かったんです。ただ同じ時期に『YouTube』が出てきて。誰でもアップロードできる『YouTube』の世界観と、編成を決める数人が「いいねえ!」って言ってようやく「じゃあやるか」となる世界観……ひとりの人が編成を決める世界と、ソーシャルなアップロードではコンテンツの増幅のスピード感が全然違うので。その経験が強烈にあって、今回のアイデアに繋がっているんだと思います。

――深水:動画共有サイトの立ち上がりを『GyaO』の中から見てたんですね。それはすごいインパクトを感じたんじゃないでしょうか。

菅谷:ひとりの人が面白いものを決める時代は変わるなあと思って。ディレクターとか編集者とか、仕入れ担当さんとか。雑誌で言えば編集者ですよね。たとえば、僕が大学生の頃は、雑誌『ぴあ』がなかったら映画を観に行けなかったんですよ。でも、今はどこの映画館で何の映画を上映しているかという情報もそうだし、その映画が面白いかどうかというところまで一般の人が情報発信をしているじゃないですか。
 当時、情報誌の編集者っていうのは、映画業界が一目置かなきゃいけない人だったけれど、今はそんなことない。権威の一般への開放というような力のシフトが起きていて、情報発信の在り方そのものが全然違う世の中になってきてると思います。

積み上がる本

――深水:そういう世の中になると、もう編集者は必要ない可能性も?

菅谷:いや、そんなことはないと思います。モノにもよると思いますけども。編集者は必要だと思います。

――深水:編集者が間に立つ、立たないも含めて作り手のスタイルの多様性が許容され得るのがこれからのコンテンツ制作のあり方なのかもしれませんね。その部分も含めての手探りを今、皆がはじめている。

菅谷:そうですね。そういう意味で音楽業界ってすごく期待しているんです。6000億円くらいの市場が一気に縮小して、流通構造が破綻して( http://www.riaj.or.jp/data/money/index.html )。一番最初にトランスフォームした業界だと思っています。ミュージシャンがいて、プロデューサーのようなマネージャーのようなウェブ担当のような人が一人か二人いれば、あとは配信とイベントと物販でやっていくスタイルに音楽業界は変わって来ていると思います。それを思うと、音楽業界って僕はいちばん最初に変形が終わったと思っています。これからの音楽業界は面白くなると思っています。
 たぶん出版も、作家やライターがいて、そこに編集者なのかプログラマなのかウェブ担当なのかわからないですけどそういう人がサポートするチーム体制になるんじゃないでしょうか。作家ひとりで完結するものもあるでしょうし、オールマイティな人もいるかもしれないし、そうじゃない場合はチームで。その場合、ミュージシャンとスタッフみたいな感じで、編集者的な人が必要になるんじゃないでしょうか。
 たいがい、デジタルコンテンツになった瞬間にレベニューシェア(※)になるじゃないですか。レベニューシェアの算式に基づいて、計算書を作って、みたいなことをすべての作家が自分でやるわけないじゃないですか。だから、編集者とかチームでサポートする体制はいると思います。編集っていうのは、ページをディレクションするわけじゃなくなるかもしれない。作品には口を出すし、いつ何を書いたらいいかを指示する人かもしれないし。
(※)レベニューシェア: 利益配分式の提携方法

電子書籍に懐かしさを感じますか?

●”紙”と”電子”の揺れる想い。そしてあなたは電子書籍で”懐かしさ”を感じることができますか?

――深水:『ブックシェアカフェ』は電子書籍まで見据えてるんですか?

菅谷:2003年のKDDIがWinってパケット定額制にしたときのコンテンツとして電子書籍の立ち上げに携わらせていただきました。でも、電子書籍が紙のシェアを超えることはないと思います。分かりませんが。

――深水:え、ほんとにそう考えてるんですか?

菅谷:いやでもわかんないですけど。活字を200~300ページデバイス上で読みますか?

――深水:ん~、僕は読みますけど。もうそういう人は多いんじゃないかなぁ?

菅谷:そうですか。僕、途中で挫折して紙の本を買っちゃうんですよね。

――深水:そうなんですか? メールとかブログとかみんな…

菅谷:ああ。ブログとかはそうですよねえ。でも、たとえば村上春樹とかをこう……僕、途中で紙を買っちゃうなあと思って。

――深水:そういう読書スタイルを想定して書かれた本もあるとは思いますけど、物理的な本に嫌気がさしている人も増えてきていると思いますけどね。かさばるし検索できないし。

菅谷:ハードディスクに入っているファイルだけで記憶は蘇らないと思うんです。本が一冊目にはいったらそれだけで記憶がよみがえったりするじゃないですか。物理的な本の中間マージンの多さとか制度とかは疲れ切ってるかもしれないですけど。でもやっぱり、モノというか物流が消えさることはないと思いますね。ただ、インターネットが情報を牽引(けんいん)して、ようやくモノが動くというような形にはなるんじゃないでしょうか。これまでは物流を押さえている、全国にモノを配送できる力のあるところが情報の流通まで牛耳ってましたが、それはなくなっていくかもしれませんね。

(つづく)


●【連載”シェア”】『ブックシェアカフェ』菅谷洋一氏インタビューINDEX(全4回)
【1】所有と消費が美しい、という時代は終わったのか?
【2】節約だけじゃない。”シェア”が生み出す新しい消費と楽しみ方
【3】あなたは電子書籍で”懐かしさ”を感じることができますか?
【4】”シェア”は所有や消費よりも面白くなる

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深水英一郎(ふかみん)

記者:

見たいものを見に行こう――で有名な、やわらかニュースサイト『ガジェット通信』発行人。トンチの効いた新製品が大好き。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラに興味がある。

ウェブサイト: http://getnews.jp/

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