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文科省が公表の「トンデモ大学一覧表」 受験関係者は必読だ

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 文部科学省から官製の「トンデモ大学リスト」が公表された。外国人頼みの開校、老齢化した教員、存在しない講義での単位認定……呆れたその実態をコラムニストで「大学図鑑!」の監修者でもあるオハタカズユキ氏が紹介する。

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 大学入試シーズンは終わってしまったが、その結果、浪人の道を進むことになった人、来年受験する高校生、そしてその保護者や高校の先生など受験関係者にぜひ見てもらいたい資料がある。

 ウェブの検索窓に、「設置計画履行状況等調査の結果等について(平成26年度)」と入れてみてほしい。すると同じタイトルのPDFファイルが開くはずだ。ぜんぶで76ページとけっこう分量がある。でも、できればプリントアウトしたほうがいい。それだけの価値がこの資料にはある。これは官製の「トンデモ大学一覧表」といえるものだからだ。

 同調査は、文部科学省が、この4年ほどの間に新たに申請や開設した大学の学部・学科などが、教育機関として適切に運営しているかどうかを調べた結果だ。2月19日に誰でも見られる形で発表された。

 一部のニュースサイトが、〈文部科学省が教育水準の低い大学に改善指導 講義内容はbe動詞や四捨五入〉といったタイトルで取り上げ、「こんな低レベル大学は潰れたほうがいい!」「それより中等教育はなにをやっているのか!」などとネット上の話題になったが、同調査で文科省が改善や是正の意見出しをしたのは計253の大学と大学院。そのうち授業レベルの低さが指摘されていたのは3校だけで、大半はまた別の問題なのである。

 全体を通して、もっとも多かった問題は、次の文面内容だ。

〈〇〇学部△△学科の定員充足率が0.7倍未満となっていることから、学生の確保に努めるとともに、入学定員の見直しについて検討すること。〉

 定員割れ問題である。新しく学部や学科を開設したはいいが、入学者の集まらなかった事例が大量にあぶり出されている。一律に「0.7倍未満」と表されているが、中には0.5倍だったり、下手すりゃ0.1倍のところも混じっているのだろう。開設したばかりで「今後が期待される」場合もあるかもしれないが、受験生の志望先としては慎重に見るべきだ。

 その次に指摘が多い問題は、こんな文言が付されたもの。

〈〇〇学科において、定年規程に定める退職年齢を超える専任教員数の割合が高いことから、定年規程の趣旨を踏まえた適切な運用に努めるとともに、教員組織編制の将来構想を策定し、着実に実行すること。〉

 ピカピカの新設学科に期待を膨らませて入ってみたら、待ち受けていたのはヨボヨボのお年寄り教員ばかり、という問題である。なんでそんなことになっているかの説明はないが、人気がなく潰された学科のリニューアルで学科が新設されることはよくある。看板は変わったが店の品(=教員)は前と同じ、というのはありがちパターンなのである。

 この問題は、専任教員の既得権益化、でもある。1科目あたり3万円前後の月給で非常勤講師の仕事をかけもちしている高学歴ワーキングプアが減らないのは、こうして上がつかえているからだったりする。格差社会を論ずるのもいいが、大学界はまず己の改革に着手してもらいたいものだ。

 官製「トンデモ大学一覧表」からすぐ見て取れるのは、以上の二大問題。その他は、個々別々に「とんでもない」問題がいろいろ指摘されている。へんなバイラルをおこすといけないので、大学名は伏せておこう。一読して、要注意だなと思ったケースを以下に挙げておく。

 例えば、神奈川県のN大学映画学科はこんな調子だ。

〈就任を辞退した教員が担当する予定であった複数の科目を廃止している、内容が重複している科目があると思われる等、養成する人材像に合わせた体系性のある教育課程となっているかについて疑義があることから、カリキュラム・ポリシーを明確にし、必要に応じて教育課程の見直しを検討すること。〉

 この学科は、〈学生が学校生活において困ったことがあった際の相談体制や就職支援のための体制が整っていないことから、大学として学生支援の組織的な体制を整備すること。〉とも意見されている。要するに教育体制の基本がぐだぐだらしい。

 ぐたぐだ問題は、地方の医療系大学でよく目につく。新潟県のN大学の視機能学科は眼科の検査やリハビリの専門家を養成する珍しい学科だが、要は突貫工事で作っちゃって大丈夫かよ的なことを、文科省から意見されている。

〈教員1人当たりの担当授業科目数が全体的に多く、かつ教員間の担当科目数にばらつきがある。今後学年進行が進むにつれて教員の負担が過大となり、3年次以降の実習指導に支障が出ることが懸念されることから、新規教員の採用や教員間の担当科目数のばらつきの見直しを検討する等し、学生への教育はもとより、教員の研究にも支障のない体制となるよう努めること。〉

 医療系と並んで昨今脚光を浴びているのはグローバル系の大学教育だが、この方面にも落とし穴は多い。大阪府のO大学国際交流学部は〈定員充足率が非常に低い水準である〉と忠告されているが、どうやらその穴を無理矢理グローバルに埋めようとしているらしい。

〈主に日本人学生を対象とした教育課程であり、広報において「世界をつなぐ日本人になろう」、「和魂地球人」ということを掲げているが、一方で外国人学生を一定数受け入れる計画であることから、外国人留学生向けの教育課程について、さらに検討し、適切に整備すること。〉

 また最近は、いずこの大学も留学制度の充実を謳っている。ただ、その内実をよく確かめておかないと入学後に「あれ?」となりやすい。大阪府の上記とは別のO大学のグローバルビジネス学部には次の問題があるそうだ。

〈中長期留学の単位の読替えについては、その都度学内の委員会にかけて検討している状態であるが、留学先でどのような専門科目が開講され履修が可能であるのか、本学科の教育課程の体系性を維持できる学修が留学先において可能であるのか、学生には明示されておらず、学生にとって教育の質が担保された留学となるか懸念される。〉

 大阪府にはそもそも大学が多いが、それにしてもこの文科省の調査で問題を指摘されている例が目立つ。T大学の人間学部健康スポーツ学科には大量の注文がつけられており、とりわけ次の是正意見には驚かされた。

〈大学として開講しておらず講義実態のない「特別講座A~H」により資格の単位認定をしているが、大学設置基準第19条において「必要な授業科目を自ら開設」すること、及び大学設置基準第29条において「当該大学における授業科目の履修とみなし、大学の定めるところにより単位を与えることができる」となっていることから、空科目で単位を認定することは不適切である。〉

 実態のない講義が〈空科目で単位を認定〉されているとは……。大学生の低学力問題よりも、こっちのほうがお話にならないのではないだろうか。

 なにはともあれ、新しめの学部学科を志望する受験生は、この一覧表のチェックを勧める。文部科学省には、既存学部学科についても同様の調査実施と結果公開を要望する。


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