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Hostess Club Weekender 節目の10回目を迎えたインディ・ロックの祭典を徹底レポート

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 2015年2月21日(土)、22日(日)の2日目間に渡って東京・新木場Studio Coastにて【Hostess Club Weekender】(以下HCW)が開催された。

 数々の有名バンドの作品を扱う国内インディ・レーベル<Hostess>が主宰となり、これまで四半期に一度ほどのペースで継続的に行われてきたこのHCW。今回で10回目の開催となった。出演者は毎回フレッシュな新人バンドから大御所まで魅力的な面々が顔を揃える。今回もテンプルズやイースト・インディア・ユースといった期待の若手から、ベル・アンド・セバスチャンやサーストン・ムーア・バンドという大ベテラン勢まで、実に幅広いバンドがのべ10組が集まった。チケットは二日間ともにソールドアウトし、“インディ・ロックの祭典”という別称に相応しい注目度の高いイベントとなった。

<ベルセバをトリにエレクトロ&ポップな1日目>

 1日目となった21日(土)の公演には、イースト・インディア・ユース、ハウ・トゥ・ドレス・ウェル、チューン・ヤーズ、カリブー、ベル・アンド・セバスチャンの5組が出演。今回のHCWを音楽的な傾向でざっくり分けると、21日はエレクトロ寄りのダンスサブルなアクトが集まる1日となった。また、トリをつとめたベルセバを除けば、ソロ・ミュージシャンが多いのもこの日の特徴だったと言える。

 トップバッターは昨年、英【マーキュリー賞】にもノミネートされ、4月には新作アルバムのリリースも控える英国の若手ユニット、イースト・インディア・ユース。上下のスーツにネクタイという出で立ちで登場した彼は、ラップトップPC、キーボード、ドラムパッド、エレキ・ギターを器用に扱い1人でステージを展開。その音楽性はボーズ・オブ・カナダ辺りにも通じるアンビエントなものから、80年代風のシンセ・ポップ、UKレイヴ、あるいはクラウト・ロックなど間を行き来しつつ、本人の情熱的なボーカルがそこに乗るという個性的なもの。その格好に似合わない、オルタナ・ロックの影響を感じる激しいギター・プレイも印象的で、満員の観客にその個性を充分にアピールした。

 2組目は、近年盛り上がりを見せる“インディR&B”と呼ばれるムーブメント早くから先導してきた米国の気鋭SSW、ハウ・トゥ・ドレス・ウェル(以下HTDW)。2年前に行われた初来日公演では、主宰のトム・クレル本人とサポートメンバー1名というミニマルな構成でライブを行った彼だが、この日はドラム・プレイヤー、シンセベースを兼ねた女性コーラス、そして、キーボード、バイオリン、ギターをこなすマルチ・プレイヤーの計3名を加えた4人編成で登場。インダストリアルな感触を強めた特有のR&Bで会場を盛り上げた。この手のサウンド自体は、まさにこのHTDWが先駆となって、今では珍しいものではなくなったが、この人の場合、深い情念を感じさせるその歌声に加えて、ジャネット・ジャクソンなどをお気に入りに挙げる、良い意味でベタなソングライティングが魅力。アレンジを変えればそのままメインストリームで通じそうな曲の良さで会場を引き込んだ。また、二千人規模の会場を一瞬でプライベートな空気に変えてしまうMC巧者ぶりも改めて印象に残った。

 続いて3組目は、こちらも米国から、アフリカ音楽の影響を独特の形で取り込んだ折衷的かつ先鋭的なポップスで魅せるチューン・ヤーズが登場。こちらもサポートメンバーを加えた編成で、チューン・ヤーズことメリル・ガーバス本人に加え、長年のコラボレーターであるベース兼サンプラー担当のネイト・ブレーナー、そして、ドラム・プレイヤーにコーラス・メンバー2名を加えた計5人編成で演奏を披露。ネイト以外全員が女性という構成も印象的な面々とともに、チューン・ヤーズ本人も右手でシンセ、左手でドラムを扱いつつ歌う場面を見せるなど巧みなプレイを披露する。そのソウルフルで朗らかなメロディが親しみ易さをアピールする反面、自分がその場で発した音を即興的にループで重ねて演奏を展開するなど、演奏そのものはかなり複雑という非常にエキサイティングなステージで、この日のハイライトに挙げる人が多かったのも頷ける強烈なパフォーマンスとなった。

 4組目は昨年リリースした最新作『Our Love』や2010年の『Swim』が高い評価を得て、今や英国を代表するエレクトロ系ミュージシャンとなったカリブーが登場。彼もまた3名のサポートメンバーを加えた編成で、バンド・セットでライブを披露した。演奏曲はアルバムの曲をそのままステージで再現するというよりは、それらをある種の素材として使いつつ、フロア仕様に再アレンジした状態でプレイ。UKレイヴやハウス・ミュージックからの影響を昇華したなダンス・ビートをその音楽の中心に置きつつ、サイケデリックなアレンジや本人の魅力的な歌唱も重なったメロディも魅力のアップテンポなステージで観客を大いに踊らせていた。

 そして、この日トリをつとめたのは既に20年近いキャリアを誇り、ここ日本でも大きな人気を誇るグラスゴーの至宝、ベル・アンド・セバスチャン。その人気ぶりは流石の一言で、会場は流石の大入り。目玉という言葉に相応しい注目度となった。なんとこの日のベルセバはストリングス隊などのサポートメンバーも含めた13人編成で登場。最新作『ガールズ・イン・ピースタイム・ウォント・トゥ・ダン』の楽曲はもちろん、「Legal Man」や「We Are the Sleepyheads」など、旧作の人気曲も織り交ぜたファンにはたまらないセットリストでイベントのクライマックスを盛り上げる。途中、スチュアートが客席に飛び込んで観客に寝たままリフトされるような姿勢で歌唱を披露したかと思えば、終盤ではチューン・ヤーズのメンバーをステージに招き、さらに客席からもファン10名ほどをステージに引き上げ、彼らが思い思いにダンスをする傍らで演奏を披露するなど、まるでバンドの地元さながらの祝祭感が微笑ましい。曲と曲の間に映画の一片のような映像が挟み込まれる構成もスタイリッシュで、会場をベルセバ・カラーに見事に染め上げるステージで1日目のフィナーレを飾った。

<セイント・ヴィンセントが強烈なステージで締めたロック色濃厚な2日目>

 このHCWはいわゆるフェス形式で、アクトとアクトのあいだには休憩時間を挟むのだが、そこで飲食はもちろん、各出演アーティストによるサイン会やラジオの公開収録、あるいは主催の<Hostess>によるCDの特売なども行われ、休憩時間もなんだか賑やかで和気あいあいとしている。また、開演前にはスフィアン・スティーブンスの3月リリースの新作アルバムの試聴会が先着順で行われるなど、独自のプロモーション・イベントとしての側面も併せ持つのもこのイベントの特徴となっている。

 2日目となった22日(日)はフィリップ・セルウェイ、リアル・エステート、テンプルズ、ザ・サーストン・ムーアバンド、セイント・ヴィンセントの5組が出演。ダンス色の強かった1日目に対して、この日はオルタナティブ・ロック色の強い1日となった。

 2日目のトップバッターは、あのレディオヘッドのフィリップ・セルウェイによるソロ。昨年には2ndアルバム『ウェザーハウス』もリリースするなど順調にソロ・アーティストとしてのキャリアを重ねつつある彼だが、この日は英国のエレクトロニック・アーティスト、アーデムをはじめサポートメンバー3名が参加。ドラムやキーボードに加えて、一風変わった弦楽器や電化マリンバ(?)もステージに設置され、それらをサポートの3人が入れ替わり立ち代り演奏する、フレキシブルなステージとなった。そんな中、フィルも時折アコースティック・ギターを爪弾くなどしつつ、基本的にはマイク一本で、アンビエント色の強いサウンドに合わせてジェントルな歌を披露する、しっとりとした幕開けとなった。

 この日、2組目は約5年ぶりの来日となった米国の人気バンド、リアル・エステート。ギターの2人にベース、ドラム、キーボードを加えた5人編成で、2010年代のインディ・シーンを代表するギタリストの一人とも言われるマット・モンダナイルの深くフランジャーを掛けたギターを中心に、持ち前のゆらゆらとグルーヴィな演奏を披露した。演奏曲は昨年の最新アルバム『Atlas』と前作『Days』が中心だったが、その中でも2009年の1stアルバム『Real Estate』収録の「Suburban Dogs」という初期楽曲も演奏。長年のファンには嬉しいステージとなった。

 3組目は昨年リリースした『Sun Structures』が各メディアで絶賛され、いまやここ日本でも人気者となった英国バンド、テンプルズ。ステージに登場した瞬間から強いカリスマ性を感じさせる佇まいが印象的だ。いかにも英国的で巧みなソングライティングと、オタク的な趣味全開のサイケデリック・ロックで有名になった彼らだが、この日は反復するベースやドラムのリフを活かしたパワフルな演奏で観客を引き込み、バンドの別の魅力を大いにアピール。昨年デビューの若手バンドながら、既に貫禄さえ感じさせるステージを披露し、ラストは彼らの出世作となった大ヒット・シングル「Shelter Song」で締めくくった。

 4組目は(元?)ソニック・ユースのサーストン・ムーア率いるザ・サーストン・ムーア・バンドが登場。このザ・サーストン・ムーア・バンドは、ドラムに同じくソニック・ユースのスティーヴ・シェリー、ベースにマイ・ブラッディ・ヴァレンタインのデビー・グッギ、さらにギターにジェイムス・エドワーズを迎えた、90年代オルタナのスーパーバンドとも言うべき編成で、昨年リリースの『The Best Day』の楽曲を披露。サーストン放つノイジーなギターや、吐き捨てるようなボーカルに、スポーティで力強いロックのビートが絡むアンサンブルはまさにソニック・ユース譲り。さらに、この日は随所でバンド全体によるノイジーな即興演奏も聴かせるなど、緩急をつけた展開で流石の地力の高さを見せつけた。

 そして、この日最後の出演者となったのがセイント・ヴィンセント。その演奏はまさにこのイベント全体の大トリに相応しいものとなった。セイント・ヴィンセント本人に加えて、サポートにギター/コーラス/キーボードをこなす元ブロンド・レッドヘッドの日本人奏者Toko Yasuda、さらにシンセベース奏者とドラム・プレイヤーを加えた4人編成で、昨年多くのメディアで賞賛された最新作『セイント・ヴィンセント』や前作『ストレンジ・マーシー』からの楽曲を披露。昨年の【フジロック】でも見せたピラミッド型の祭壇もステージに据え置かれ、カラフルなライティングや、本人のモダン・ダンス的な振付も含めて、視覚的にもエキサイティングなステージを展開した。その巧みなギター演奏でも知られるセイント・ヴィンセントだが、激しいエフェクトを実現するパッチ・ソフトを通って出力されていると予想されるギター演奏は、もはや通常の“ギター演奏”という概念からはかけ離れたものに。ヘヴィ・メタルからの影響も昇華したハイパーなアート・ダンス・ロックとも言うべき最新作のモードを、さらに凝縮してぶち撒けたような圧巻のステージでイベントの締めくくりに相応しい強烈な刺激を残した。

 ここまでのべ二日間。その魅力的な面子から、“インディ・ロックの祭典”とも呼ばれることは前述した通り。しかし、今や一口にインディ・ロックと言っても、そのサウンドは本当に様々。今回はざっくりと“エレクトロ&ポップ色の強い1日目”と“オルタナ・ロック色の強い2日目”に括ったが細かく見ればそれぞれのアクトは千差万別で、このHCWは結果的に現在のインディの層の厚さと音楽的な豊かさを証明し続けているイベントだと言える。

 今回のHCWでは、これまでは必ずあった次回の開催予告がなく、今後の展開が気になるところ。音楽文化というものが、ライブと作品の両輪によって支えられている部分が多分にあることを考えれば、休止などの展開にならないことを切に願いたいところだが、円安が進み洋楽リスナーの置かれた状況も大きく変化しつつある現在は、ある種の転換期に入っていることも事実。そのための準備期間が必要な時期に差し掛かっているのかも知れないとも思う。全10回の開催を通してリスナーとの良好な関係を結んできたHCWと<Hostess>。それらが担ってきた役割やそのかけがえの無さを感じつつ、今後彼らがどのような方向に進むのかにも注目したい。もちろん、次回以降の開催も大いに期待しよう。

Photo by 古溪一道(Kazumichi Kokei)

◎【Hostess Club Weekender】
東京・新木場スタジオコースト
2015年2月21日(土)
出演:BELLE AND SEBASTIAN / CARIBOU / TUNE-YARDS / HOW TO DRESS WELL / EAST INDIA YOUTH
2015年2月22日(日)
出演: ST.VINCENT / THE THURSTON MOORE BAND / TEMPLES / REAL ESTATE / PHILIP SELWAY

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