介護職員30万人不足の未来を変えられるか?

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介護職員30万人不足の未来を変えられるか?

先行き不透明な介護職員処遇改善加算。給与確保がポイント

厚生労働省は、高齢化がピークを迎える2025年度時点で、介護に携わる職員の数が30万人程度不足する見通しであると公表しました。介護の人材不足は今に始まったことではなく、さまざまな施策が実施されていますが、なぜ将来的に不足するといった統計が出るのでしょうか。今回、厚生労働省が行う対策をもとに考えてみます。

全産業別で見ても、介護職の給与水準は低いとされています。介護職の給与は、国が定める介護報酬によって大きく変化し、特に施設については入所者数が限られているため、介護報酬の減額は介護職員の給与に大きく跳ね返ります。現在、時限的に介護職員処遇改善加算が設定されていますが、今後の介護報酬改定に伴い減額や廃止もあり得るでしょう。その場合、どの財源から介護職員の給与を確保するかがポイントとなるでしょう。

子育てとの両立は急務。再就職を促す仕組みを魅力あるものに

介護職員の多くは女性であり、特に子育てをしながら働いている世代(30代~40代)が多くを占めます。どの産業でも問題化されていることですが、子育てとの両立は急務です。介護職員の場合、結婚や子育てによって退職すると、事業所の都合ですぐ代替職員を確保し、結果、産休・育休を経て現場復帰するのが困難なケースが多く見られます。

厚生労働省は、企業内保育所の整備などとともに、介護職員の登録制度を設け、いったん辞めても再就職を促す仕組みを作るといいます。良い試みと一定の評価はできますが、具体的にどのような形で進んでいくかの道筋を制度化し、魅力あるものにしなければ、介護職員は戻って来ません。

外国人介護職を育てていく環境を作っていく必要がある

また、人口減も考えると、外国人の登用も早急に進めていくべきでしょう。近年、EPA(経済連携協定)により、外国人が、看護職・介護職として日本で活躍する道が開かれつつあります。しかし、言葉や文化の壁など、まだまだ障壁が多いと感じます。外国人の活用をより積極的に図っていくのであれば、期間の延長や言語習得の補助など、各施設や事業所と連携をして、外国人介護職を育てていく環境を幅広く作っていかなければならないでしょう。

継続的に行っていくのであれば、その場限りの施策は全く意味をなさなくなります。例えば、小さな事業所であっても、外国人介護職を受け入れると一定の補助金交付を受けられるとなれば、事業所運営も安定し、人材確保も同時に行うことができます。このように柔軟に行うべきでしょう。

長期的に人材不足が懸念されるのであれば、現状を変えるだけではなく、財源の確保を適切に行った上で、長く続く安定した施策整備を行うべきです。安定した施策のもとに人は集まり、最終的には人材不足も解消していきます。このような視点の切り替えも必要ではないでしょうか。

(馬淵 敦士/介護福祉士)

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