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今週の永田町(2015.2.3~10)

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【補正予算が成立】

 先週3日、昨年4月の消費税率8%への引き上げで落ち込んだ個人消費の回復や、地方活性化、生活者支援などに重点を置いた緊急経済対策を裏付ける「補正予算」(総額3.11兆円)が、参議院本会議で自民党・公明党などの賛成多数により可決、成立した。参議院本会議への緊急上程に先立って行われた参議院予算委員会でも、安倍総理はじめ全閣僚出席のもと締めくくり質疑を行ったうえで、与党などの賛成多数により可決した。「消費効果が限定的で経済成長にも格差や貧困の解決にも資するものではない」(藤田参議院議員)などと批判した民主党のほか、維新の党、共産党なども反対した。

 

*衆参両院の本会議や委員会での審議模様は、以下のページからご覧になれます。

  衆議院インターネット審議中継参議院インターネット審議中継
 

 安倍総理は、5日に行われた参議院予算委員会での集中審議で、有効求人倍率が22年ぶりに高水準にあることや、15年ぶりに賃金が平均で2%以上アップなどを示して、「アベノミクスによって経済は好循環に入っている。雇用でも賃金でも、間違いなく経済はよくなっている」との認識を示した。そのうえで、「景気回復の好循環を全国津々浦々にひろげなければならない」「地方に仕事をつくり、地方への人の流れをつくらなければならない」と強調し、補正予算と来年度予算案の一体執行で経済効果の地方への波及をめざす意欲を示した。

 

また、新規国債発行をせずに政策経費(国・地方)をどれだけ賄えているかを示す基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2020年度までに黒字化させる財政健全化目標について、安倍総理は「わが国に対する市場や国際社会からの信認を確保するため、経済再生と財政健全化の両立をめざしている」「しっかり堅持し、達成に向けてまずはデフレから脱却し、経済を再生させていく」(6日の参議院決算委員会での答弁)などと決意を改めて示した。

自民党は、前日(5日)に、党税制調査会幹部や民間有識者らで構成する「財政再建に関する特命委員会」(委員長:稲田政調会長、座長:塩谷政調会長代行)を発足し、財政健全化策の検討作業をスタートさせた。歳出の抜本改革のほか、改革年1兆円規模で増え続ける社会保障関係費のスリム化・効率化を柱とする社会保障制度全体の改革も検討するという。政府が今夏までに策定する新たな財政健全化計画や、経済財政運営の基本指針「骨太の方針」に反映させるべく、自民党は、健全化案を6月メドにとりまとめる方針だ。

 

 

【12日から政府4演説と各党代表質問】

 補正予算が成立したことを受け、政府は、来年度予算案を12日に国会提出し、来年度予算の年度内成立に全力を挙げていく方針でいる。衆議院予算委員会での実施審議は、19日からになる見通しだ。 
 

与党は、12日の衆参両院本会議で安倍総理による施政方針演説など政府4演説を行い、13日から政府4演説に対する各党代表質問を実施する案を、野党側に打診した。野党は、12日の政府4演説については受け入れたが、13日からの代表質問については政府4演説と代表質問の間に1日空ける慣例に反しているとして、与党側の求めに応じなかった。与野党で引き続き協議した結果、与党側が譲歩し、代表質問を16日から行うこととなった。 

 安倍総理は、施政方針演説で「経済最優先」「地方創生」の姿勢を改めて打ち出し、農協改革など岩盤規制打破に取り組んでいく決意をアピールする。また、イスラム教スンニ派過激組織ISILによる日本人殺害事件を踏まえ、テロとの戦いに国際社会と連携して対応していくことや、中東への人道支援の拡充、邦人の安全確保に万全を期していく方針などを示すという。

 

 一方、攻勢を強めたい民主党は、アベノミクス推進による格差拡大、異次元金融緩和や円安のリスクなどについて追及している。衆議院本会議での代表質問に岡田代表が立ち、民主党が考える経済政策の考え方などについてアピールしたい考えだ。

民主党は、政府・与党との対抗軸を明確にするため、3日、格差の是正と経済成長を両立させる経済政策を策定する「共生社会創造本部」(本部長:岡田代表)を発足させた。党所属のすべての国会議員(132人)が参加できるかたちで議論を進め、意見集約を図る。また、民主党幹部が地方行脚を行って国民の声を聴いて回るようだ。来年夏に行われる参院選の公約に盛り込むため、今年10月をメドに中間報告をまとめるという。

 

 

【安保法制に関する与党協議が再開へ】

 通常国会の後半で焦点となる、集団的自衛権行使の限定容認を含む「切れ目のない安全保障法制」の整備に向け、自民党と公明党は、内容の具体化に向けた与党協議会(座長:高村副総裁)を13日から再開する。政府は、昨年7月1日の閣議決定にもとづき、通常国会に自衛隊法改正案など安全保障関連法案9本程度を提出する予定でいる。

 

安倍総理は、現行法で不可能な自衛隊による保護・邦人救出について「邦人が危険な状況に陥ったときに救出も可能にする議論を行いたい」(5日の参議院予算委員会での答弁)と、関連法案の整備に意欲を示した。ただ、ISILによる日本人殺害事件と邦人保護・救出の法整備を関連付ける議論が浮上していることを憂慮して、今回の事件のようなケースは、昨年7月の閣議決定で「受け入れ国の同意」「国に準ずる組織がいない」ことを邦人保護・救出の条件として掲げていることから、新たな法的枠組みの下でも自衛隊は投入できないとの見解を示した。

 また、安倍総理は、国際協力を目的とした多国籍軍への後方支援など自衛隊の海外派遣について「恒久法を検討している」(5日の参議院予算委員会での答弁)と、迅速な派遣を可能にするためには、事案ごとに特別措置法(時限立法)では不十分であり、恒久的な一般法の制定が望ましいとの見解を示した。そのうえで、自衛隊派遣の要件として「国会の決議を検討するのが通例」と述べ、原則として国会承認を義務付ける考えも示した。

 

安倍総理は、与党協議を前に、慎重な公明党を意識して、自らの見解を明確にしておくねらいがあったようだ。政府・自民党は、自衛隊の海外派遣を恒久法で制定するとともに、朝鮮半島など日本周辺有事で米軍の後方支援を行うことを想定した周辺事態法を廃止して、自衛隊の活動範囲に地理的な制約を設けないことをめざしていた。

しかし、公明党が「自衛隊の活動範囲が際限なくひろがりかねない」として、周辺事態法の維持を求めるとともに、国会のチェック機能を重視して特別措置法での制定を主張している。また、自衛隊の邦人保護・救出を可能にするための法整備についても、「冷静で慎重な議論が必要だ」(公明党の山口代表)と、政府・自民党を牽制している。

このことから、政府・自民党は、公明党への配慮から周辺事態法を維持し、同法を改正して自衛隊の海外派遣の手続きなどを盛り込むことで調整を進めている。これにより、恒久法の制定について公明党の理解を得たい考えだ。ただ、公明党は恒久法制定そのものに否定的で、「国会承認の時期は事前か事後か」「後方支援は国連安保理決議を前提とすべきか否か」といった論点も含め、与党協議で調整していく見通しだ。

 

 このほかにも、シーレーン(海上交通路)、とりわけ輸入原油の8割が通過する中東ホルムズ海峡での自衛隊による機雷掃海活動をめぐって、集団的自衛権を行使して海上自衛隊が掃海活動をできるようにしたい安倍総理・自民党に対し、公明党は慎重姿勢を崩していない。政府・与党は、関連法案を5月連休明けに通常国会へ提出することをめざしているが、政府・自民党と公明党との間で、激しい駆け引きが展開されていくこととなりそうだ。

 

 一方、維新の党は、集団的自衛権行使の限定容認を含む自衛権行使の範囲を適正化など、安保政策全般を示した一般法「安全保障基本法案(仮称)」の国会提出を検討している。与党協議の動向をにらみつつ、党内議論を深めていくという。独自の対案を示すことで、安倍内閣に論戦を挑んでいくとともに、存在感をアピールしたい考えだ。また、細野政調会長ら民主党の一部にも賛同を促し、集団的自衛権の行使に慎重な岡田代表ら民主党執行部を揺さぶるとともに、維新の党主導で野党再編を仕掛けたいとの思惑もあるのではないかとみられている。

 

 

【農協改革、決着へ】

安倍総理の掲げる岩盤規制打破の試金石とみられている「農協改革」をめぐっては、9日、政府・自民党が全国農業協同組合中央会(JA全中)の改革案をとりまとめ、それを了承した。政府・自民党がJA全中の一般社団法人化や監査部門の分離独立を維持しつつもJA全中に一定の配慮を示したことを受け、これまで政府案に強硬な反対姿勢をとっていたJA全中も、最終的に改革案を受け入れた。

 

農協改革案では、農家の自立や単位農協の自由な経営を確保するため、全国約700の農協組織を束ねるJA全中を農協法にもとづく特別認可法人から一般社団法人へ2019年3月までに完全移行し、地域農協の経営状態などを監査してきた監査・指導権限を撤廃する。下部組織の都道府県中央会は、農協法にもとづく連合会として存続することになるが、地域農協への指導権限を持たない。また、農産物の集荷・販売を担う全国農業協同組合連合会(JA全農)などは、自主判断で株式会社へ組織変更できる規定を新設する。

JA全中が一般社団法人になることで、地域農協などから集めている年約80億円の負担金がなくなる。今後、JA全中は、運営費を任意の会費によって賄っていくこととなる。また、監査・指導権限の撤廃に伴い、JA全中の監査部門を分離・独立させたうえで新たな監査法人として設立するとともに、農協監査士が担ってきた監査業務を民間の公認会計士も行えるようにする。これにより、地域農協は、監査法人を選択できるようになる。

 

一方、農協利用者のうち農業に携わっていない「准組合員」の扱いについては、当初、「金融事業ばかりに力を注ぐ農協の体質改善が必要」として、農協が実施する金融・共済などの利用を制限する方針だった。しかし、自民党内やJA全中から「地域農協の経営への影響が大きい」などと反発したため、政府側が譲歩し、「一定の利用制限が必要」との文言を盛り込みながらも、具体的な制限内容は「政令で定める」と事実上、見送ることとなった。准組合員の利用制限は、今後5年間の利用実態を調査したうえで可否を判断するようだ。

 

 政府・与党で農協改革案がまとまったことを受け、10日、正式に政府・与党案として決定した。政府は、3月末までに農協法改正案を閣議決定のうえ、通常国会に提出する予定だ。

 政府・自民党の農協改革案について、民主党は「農協の組織的な部分に手を付けることが農業の活性化にどういう効果があるのか全く不明だ。ピント外れなことをやっている」(枝野幹事長)などと批判している。ただ、関連法案の賛否は国会提出後に議論するとしつつも、「マイナスがないなら賛成の余地があるかもしれない」と賛成に含みを残している。

 

 

【安倍総理の施政方針演説に注目】

 今週後半から来週前半にかけて、衆参両院の本会議で、政府4演説とそれに対する各党代表質問が行われる。

通常国会を「改革断行国会」と位置付ける安倍総理は、12日に行う施政方針演説で、農協改革などの岩盤規制改革や安全保障法制、テロ対策と危機管理などについてどのように語り、与野党にどう協力を呼びかけるのだろうか。そして、代表質問では、各党がどのようなテーマで論戦を仕掛け、安倍総理ら主要閣僚からどのような答弁を引き出すのだろうか。

通常国会前半の国会論戦の行方や政策争点を見極めるためにも、衆参両院の本会議での与野党論戦を通じて、主要政策別に各党の主張・立ち位置などについて把握しておいたほうがいいだろう。
 

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記者:

霞が関と永田町でつくられる“政策”“法律”“予算”。 その裏側にどのような問題がひそみ、本当の論点とは何なのか―。 高橋洋一会長、原英史社長はじめとする株式会社政策工房スタッフが、 直面する政策課題のポイント、一般メディアが報じない政策の真相、 国会動向などについての解説レポートを配信中!

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