ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

ベテラン記者が野球映画3本見比べてみた 号泣確実な作品は

DATE:
  • ガジェット通信を≫

 2月1日からプロ野球キャンプがスタートし、来月からセンバツも始まる。いよいよ球春到来だ。それにあわせて野球を題材にした映画が3本も公開されている。その見どころについて、高校野球取材歴20年のフリーライター・神田憲行氏が解説する。

 * * *
 野球が題材の映画が同時に3本も封切られるなんて珍しいことではないだろうか。映画はふだんテレビとDVDで楽しむ派だが、いそいそいと映画館に足を運んで鑑賞してきた。「箸が転んでも涙ぐむ51歳」「国境なき涙腺」の私が、泣きどころと野球濃度に絞って解説したい。

「KANO 1931海の向こうの甲子園」(マー・ジーシアン監督)

 日本統治下にあった台湾の嘉義農林が、1931(昭和6)年に夏の甲子園で準優勝したの史実を踏まえ、脚色した作品だ。

 台湾で大きな話題になり満を持しての日本上映、期待に違わぬ傑作である。アジアの野球映画では「ダイナマイトどんどん」(岡本喜八監督)と「爆烈野球団団」(キム・ヒョンソク監督、韓国)の2本がベストだと考えていたが、これらに肩を並べる、いやベストワンだと思う。

 3時間を超える長丁場の作品だが、圧倒的な野球のプレーに飽きることがない。野球映画で野球ファンを萎えさせる大きな原因は肝心のプレーがへなちょこだったりするわけだが、本作品は投手役が実際にU18の台湾代表選手だったり、野球経験者を役者に起用している。力感溢れる投球フォーム(本職は投手ではないらしいのだが)、ダブルプレーのシーンなど実際に野球の試合を観ているような錯覚に陥る。試合のシーンもたっぷりあり、結果はわかっているのにハラハラさせられ、いつの間にか嘉農に声援を送っている自分がいた。

 印象に残る台詞もあった。最後の試合後、集まった選手に監督役の永瀬正敏がかける言葉がある。朝日新聞に載った永瀬のインタビュー記事を読むと、この台詞は台本に用意されたものではなくて、彼が監督にお願いして自分で考えたそうだ。そして使ったのは永瀬がデビューしたときの監督、故・相米慎二氏から掛けられた言葉で、永瀬はこの言葉に号泣したという。

 本作でも雨で撮影中止になっても野球の練習を続ける台湾の若い俳優たちの姿を見て、この言葉を心から掛けた。文字にするとありふれたそっけない言葉になるが、映画の文脈の中では心臓を鷲づかみにされる。実際、俳優たちも演技を超えて泣いたそうだ。ぜひ劇場で確認していただきたい。

泣いた回数……3回(うち号泣1回)
野球濃度……100%

「アゲイン 28年目の甲子園」(大森寿美男監督)

 重松清原作の小説を中井貴一主演で映画化した。物語は埼玉大会決勝を前に不祥事で出場辞退を余儀なくされた野球部員たちが、28年後におっさんになって、野球部OBたちの大会「マスターズ甲子園」(実際にある)出場をめがけて奮闘する姿を縦糸に、重松作品に通底するテーマ「家族」が横糸となって絡まり展開していく。

「失われた青春を取り戻す」というのは物語の類型のひとつだが、あるシーンでグラウンドをひっそりと後にする中年女性の後ろ姿と、それを見送る中井の寂しそうな視線が、作品に深みを与えている。

 プレーのシーンは、もともとが腹が突き出たおっさんがやる野球なので許容範囲内だろう。それより「高校の野球部」の雰囲気をよく伝えていると思う。「マネージャーを傷つけられて黙っていられる野球部員などいない」という台詞にぐっときた。

泣いた回数……1回(娘さんがいるお父さんなら泣き過ぎて死ぬと思う)
野球濃度……70%

「バンクーバーの朝日」(石井裕也監督)

 1914年から1941年までカナダのバンクーバーに実在した日系人の野球チーム「朝日軍」の史実を元にした物語。貧しさと差別に苦しみながら、「頭脳野球」で勝ち進み、カナダリーグのチャンピオンに輝く。しかし第二次世界大戦の影響で日系人は敵性外国人として強制収容所に収容され、朝日軍は消滅する。2003年、カナダの移民社会、野球文化の貢献などから朝日軍はカナダの野球殿堂入りを果たした。

 映画のパンフレットで脚本家が「野球映画というより青春映画のつもり」と書いているとおり、他の2本に比べて野球シーンは少なくて野球濃度は薄い。そのなかで輝いているのが、アイドル界きっての野球小僧、亀梨和也である。キレやすい投手役を演じ、ボールでグラブを叩く仕草などいかにも「やりこんでる」感がある。ピッチングフォームがどこがぎこちないので、前に実際にみたときの美しい佇まいと違うなと思っていたら、昔の映像を見て当時のフォームを真似たとか。さすがである。受ける捕手役も横浜高校野球部OBの上地雄輔だ。

 高畑充希が泣きながら歌う「Take Me Out to the Ball Game」はぐっと来た。

泣いた回数……涙ぐんだのが1回(亀梨ファンなら号泣するかも)
野球濃度……60%

 それにしても3本のうち戦争が背景にあるのが2本。これも戦後70年の節目の年だからだろうか。自由に野球をプレーし、観戦できる幸せを噛みしめたい。


(NEWSポストセブン)記事関連リンク
滝田洋二郎、周防正行他 ピンク映画から巣立った名監督多い
解任騒動の元巨人・清武英利氏が野球への思い綴った本が登場
TBSの名物番組『プロ野球をクビになった男たち』が書籍化

NEWSポストセブンの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。

TOP