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発信し続ける夫婦「旅する鈴木」に旅とはなにかを聞いてみた

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「旅する鈴木」Aboutページより

みなさんは、こちらの映像に出てくる国がどこか分かりますか?

「旅する鈴木」公式ページより

この映像は、クリエイター鈴木陵生さんが手がけた作品で「旅する鈴木」というサイトに上がっています。鈴木さんは、現在世界一周中。毎日一本、奥さんと旅の風景の映像を撮影し、アップすると決めて仕事をしながらご夫婦で旅をしています。

鈴木さんが感じる「旅をする」ということ、そしてそこから広がっていく世界や景色は、いったいどんなものだったのでしょうか。一時帰国中の鈴木さんに、お話をうかがいました。

補完し合いながら進む、夫婦での旅

── 現在、一時帰国中ということですが今までどういった旅をされてきたか改めて教えていただけますか。

もう2年半くらい旅をしているんですが、途中モロッコに入ったあたりで資金が尽きて帰国しました。その時は3ヶ月くらい仕事をしてお金を貯めてからモロッコに戻り、そこから半年くらい滞在しました。

当時『電波少年』に憧れていて、国境を、「せーのっ!」で飛び越えるあのシーンを自分もやりたくて(笑)。昔ひとり旅をしたとき、タイとラオスの国境でそれをやって、目的を達成できたんですけど「もっといろんな国を見なくちゃ」と欲が出てきました。

旅をしていると、旅人ってどこへ行っても常にお客さんなので、お金を使う人として現地の人は接してきます。でもそれじゃあつまらないから、住んでみないとおもしろさはわからないんじゃないかと思って、カナダへワーホリに行ったこともありました。世界一周には、ワーホリからも帰国して、転職のタイミングで出発しましたね。

── モロッコに半年も滞在していたのはどうしてですか?

出会いが重なったのが理由ですね。『モロッコの迷い方』というサイトを作っていらっしゃる、モロッコ在住の和田麻弥さんという日本人女性がいるんですが、彼女との出会いからモロッコ名産品のバブーシュの製作工場の映像を撮影させてもらえることになったんです。

革の仕入れから見ることができるんですが、工場のあるエリアはスラム街でもあったので撮影が難しいんです。しかし、和田さんや現地の方の助けを借りて、映像を作ることができました。

── ご夫婦で世界一周をしようというのはお二人で決めたことなんですか?

ワーホリに行っているあいだの2年間は遠距離恋愛でしたが、「世界一周する!」と僕が言ったら、さすがにもう離れたくないからついていくと彼女が決断しました。

── 夫婦で旅をするというのはどういう感覚ですか?

試練のような気がします(笑)。これから人生を共にする人と、ずっと一緒にいられるかを試されているような感覚でしたね。乗り越えられたら、ずっとやっていけるだろうなと思いますが。24時間、365日一緒にいると、わかりすぎるくらい相手のことがわかってくるんですよ(笑)。

── 夫婦というコミュニティはすごく生活感のあるものだと思いますが、そこへ旅という非日常であるものが加わったとき、帰ってきたときと旅の最中とでギャップはあるんでしょうか。

僕にとっては、一緒かもしれないです。旅をしているうち、だんだん役割分担ができてきて、お互いそれぞれできることをがんばるということが自然とできているかなと。「旅する鈴木」というのはユニット名なので、どういう旅をしているかを発信するのが僕の役割で、旅のルート決めや炊事洗濯は彼女がやってくれています。そのおかげで、僕は映像をアップし続けられるし、助けられていますね。

夫婦でいるということは、お互いできないことを補い合うためでもあると思うので、それは旅をしていてもしていなくても一緒かなと思います。

── でも毎日奥様を撮影すると決めていると、例えば喧嘩した時でも、一度分かれてあとで合流することはできないですよね。

そうですね。まあ、喧嘩をしてもすぐそこにいますからね(笑)。仲直りが上手になったかな? それは嫁も言ってました。

旅も日常生活も自分次第

── 続いて、鈴木さんの映像作品についてお聞きします。奥様を撮ること以外に、映像のコンセプトなどはありますか?

そもそも嫁を毎日撮るということの理由は、彼女にとって初めての長旅にどう慣れていくのかというプロセスを見せたかったからです。しかし、旅をしていても毎日何かが起こるわけじゃない。何にもない日もあるんです。でも、それが旅のリアルだと思います。

僕が思う旅の良さって、時間に縛られすぎないことだと思います。毎日短くても継続的に映像を撮り続けることで、少しの変化も表現することができるし「旅の日常」という雰囲気を、伝えられるんじゃないかなと。

僕らの考え方としては、旅を旅で終わらせるのではなくて、何かの役に立てたいと思っているんです。ただ楽しいだけの旅は時々でよくて、自分で目的を持ってアクションを起こす旅のほうが好きですね。

── 旅の日常と、ふだんの日常と何が違うんでしょうか。

自分次第だと思いますけどね。日本で生活していて、どこかの組織に属している限りは、決められた時間はしっかり守らなければならないし、納税しなくちゃいけないし…、ルールにならわなければならないですよね。でも結局は、自分でそういう生活を選んでいるということだと思うし、生活スタイルだって、どうにでも変えられると思います。自分で決めて、自分で実行するという面は旅も日常も一緒じゃないですかね。

美化させるのではなく、ありのままを伝えたい

── 旅に行かない日本人と、気軽に飛び出していける人たちの違いはどこにあると思いますか?

…むずかしいですね。もしかしたら、そういう人たちを変えることは無理なのかもしれません。行ってみないとわからないし、行きたいと思わないと行かないじゃないですか。旅へ出るというムーブメントが盛り上がれば、やっとほかの人を巻き込んでいけるけど、日本人がどうしたらいい、という問題でもないと思います。

すでに閉鎖的でいる時代は終わったんじゃないでしょうか。今のまま、日本だけで閉じこもっていても良くないということを明確に提示して認知が広がれば、危機意識を抱いて外へ飛び出さなくちゃと思う人も増えると思います。

── その危機感を肌で感じることは、日常ではあまりないような気がします。

そうですね。僕も日本にいるとあまり感じません。個人のレベルで言えば、ご飯も食べられて寝る場所もあるから、日本から出る必要性をあまり感じられないのかなと思います。そういう環境が整っているのはすばらしいけど、でも日本にいると見たい部分しか見えていないから、弱いなと思います。

情報を伝える手段としては、映像も似ていますね。伝達できる情報量は多いけれど、撮る人の主観で世界が切り取られるから嘘もつきやすいんです。美化したものを撮って作品にして、旅に出ない人を触発させられればそれでいいのかもしれないけど、真実ではないですから。

僕は旅の日常を撮りたいから、なるべくリアルなものを残していきたいなと思っています。自然に促されて外へ出ていくのが一番良いと思いますね。

── 旅のリアルを伝えるためには、どうすればいいんでしょうか。

頭のところにカメラをつけて、ずーっと中継できる映像があれば、それが一番いいでしょうね。今はできませんが、近いうちできるようになると思います。

映像で脚色されたものをつくるのではなくフラットに世界を映し出して、気になった人だけに見てもらえて、そこでこの国に行ってみたいなって思ってもらえたら嬉しいですね。

(聞き手:堀江健太郎、撮影:赤崎えいか、編集:立花実咲)

映像の魅力がぎゅっとつまった「旅する鈴木/World timelapse」とともに

[鈴木陵生:旅する映像作家。劇団での芝居経験を経て映像業界へ。カナダにて映画制作などに携わった後、2008年よりDrawing and Manualに所属。豊富な経験を生かし、多数の映像を手がける。大河ドラマ「八重の桜」「坂の上の雲」のタイトルバック、「東京オリンピック」、「FIFAワールドカップ」の招致映像などの映像制作全般に携わり、NTTdocomo TVCM「森の木琴」が、カンヌ国際広告祭にて3部門で受賞。2012年より長年の夢であった世界一周をスタートし、その旅の様子を日々発信する映像サイト「旅する鈴木」は、2015年度文化庁メディア芸術祭推薦作品に選出。KADOKAWAよりDVD&Blu-ray「旅する鈴木/World timelapse」が絶賛発売中。
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