「首都圏の中古マンション価格が大崩壊」真相は?

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「首都圏の中古マンション価格が大崩壊」真相は?

首都圏の中古マンションは「価格崩壊していない」

先日、面白い記事を読みました。それによれば、首都圏の郊外を中心に中古マンションの価格崩壊が起きている、というのです。東京への通勤圏内であっても、ファミリータイプのマンションで500万円以下は当たり前で、中には200万円を切る物件もあるということです。物件価格が上昇しているのは都心の一部人気エリアや人気沿線に限られ、郊外ではすさまじい勢いでデフレ局面を迎えていると結論づけています。

はたして、首都圏の中古マンションは、この記事の言う通り「価格崩壊」を起こしているのでしょうか?結論から言うと、「否」です。

物件価値を老朽化の度合いや立地から経済合理的に判断した結果

首都圏郊外で、売り出し価格が数百万円のファミリータイプ中古マンションがあることは確かです。しかしながら、それらの物件の特徴を見れば、すでに築後30年から40年以上経過しているマンションで、かつ、比較的に馴染みの薄い駅から徒歩15分以上や、バス利用という物件がほとんどといえます。

このような物件は、もう土地値のみに近いか、場合によっては、取り壊し費用を考慮して土地値を下回る価格での値付けがされていることも多いのです。よって、これらの価格を持ち出して「価格崩壊」と言うことは正しくありません。

「価格崩壊」あるいは「価格破壊」とは、それまでの価格体系が崩れ価格が大幅に下がることをいいます。一般には、流通や生産の著しい改革、あるいは経済金融環境の大きな変化などがその原因になるといわれています。これに対し、上記の首都圏中古マンションの場合は、物件の経済価値を、建物の老朽化の度合いや立地から経済合理的に判断した結果、数百万円の価格に落ち着いています。これは今に始まったことではなく、以前からあった値付けの仕方であり考え方です。

都区部のみならず周辺県の中古マンション価格は上昇を続けている

にもかかわらず「価格崩壊」のように取り上げられた要因の一つは、そこまで老朽化した物件が、これまではあまり出ていなかった、ということが考えられます。郊外における民間の分譲マンションが発展し出したのは、1970年代半ば辺りからです。当時、分譲された物件が、ちょうど40年程度経過していますので、それらの一部がマーケットに出てきているのです。逆に言えば、そこまで老朽化した物件が、以前にはそれほど目立っていなかったということです。

そのため、冒頭の記事では、全く新しい価格体系あるいはデフレ現象が出現したと勘違いし「価格崩壊」という表現になったのでしょうが、事実は上記の通りです。IPD/リクルートの首都圏中古マンショ価格指数を見ても、都区部のみならず周辺県の中古マンション価格は上昇を続けています。郊外部で著しいデフレ局面を迎えているというのは極論といえるでしょう。

二極化するマーケットでは絶対水準のみを感覚的に見てはいけない

とはいえ、不動産価格が二極化していることも確かです。実需でも投資でも、立地が良く利便性の高いマンションに人気が集中することから、そうでないマンションとの価格の乖離(かいり)が大きくなっているのです。価格の上昇率も異なります。平成バブル時のように、どんな物件でも価格が上昇するということにはなっていません。上記の指数でも、足元では都区部に比べ、都下や千葉・埼玉では上昇率が鈍化しており、一部ではピークを打ったと見られるようなデータも現われてきています。

二極化するマーケットの中で不動産価格を判断する場合は、絶対水準のみを高い安いと感覚的に見てはいけません。価格の推移、物件自体の実力とその経済的価値の把握、他エリア・他物件との比較を客観的に行う必要があります。実需でも投資でも、これを行わないことは失敗の大きな原因となりますので、十分な注意が必要です。

(賀藤 浩徳/不動産投資アドバイザー・マネーアドバイザー)

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