遺贈による寄付で相続税対策、注意点は

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遺贈による寄付で相続税対策、注意点は

やしきたかじんさん、遺言により6億円を寄付

先日、昨年1月に死去した、やしきたかじんさんが、遺言により6億円の寄付をしたことが話題になりました。

寄付の先は、母校の桃山学院高等学校に1億円、自身が設立した一般社団法人「OSAKAあかるクラブ」に2億円、大阪市に3億円ということでした。

寄付した金額を相続財産から控除してもらうための3要件

相続または遺贈(遺言により相続財産を受け取ること)により取得した財産を、国や地方公共団体などに寄付した場合、その寄付した金額は相続税の計算上、相続財産から控除してもらえるという法律があります。この特例の適用を受けるには以下の要件をすべて満たす必要があります。

(1)相続または遺贈により取得した財産(生命保険金なども含まれます)を寄付すること
(2)寄付をした先が国や地方公共団体、特定の公益法人であること
(3)相続税の申告期限(相続開始後10か月以内)に寄付すること

これらの要件から言うと、私立である「桃山学院高等学校」や、やしきたかじんさんの設立した「OSAKAあかるクラブ」は(2)の要件を満たしません。また、大阪市は(1)(2)の要件は満たしますが、1年経った段階で3億円の寄付が予定されている大阪市が、どのような受け入れ方をするか検討中とのことなので(3)の要件を満たしていません。

当然、やしきたかじんさんは相続税を支払っているでしょうが、あえて相続税の寄付金控除は受けずに、純粋に寄付したいという遺志だったのかもしれません。

節税できるのは、寄付した金額に相続税の実効税率をかけた金額

この特例について、もう少し詳しく解説しましょう。

1、税額控除ではありません
この特例は、寄付した金額を相続税の課税対象から外すもので、税額控除ではありません。よく「寄付した金額分、相続税が少なくなる」と勘違いしている人もいますが、相続税が少なくなるのは寄付した金額に相続税の実効税率をかけた金額です。例えば、実効税率が10%の人が1,000万円の寄付をしたとすると、相続税の節税効果は100万円ということになります。

2、寄付する先は相当、限定されています
「お墓のあるお寺に寄付しようと思っているのですが」「最後にお世話になった病院に寄付しようと思っているのですが」という相談をよく受けますが、寄付する先は、国や地方公共団体、特定の公益法人に限定されています。この特定の公益法人などとは、ユニセフなど相当、限定的なので、その寄付先が特例を受けられるか確認した方が良いでしょう。

3、相続人が行う寄付でもOK
やしきたかじんさんは遺言による寄付でしたが、相続人が相続財産の一部を相続税の申告期限内に寄付する場合も、被相続人の遺志とみなされ寄付金控除の対象となります。

相続税は国税のため、どのような使われ方をするのか限定されているわけではありません。どうせなら使い道のはっきりとした寄付を行い「相続税が少なくなるなら…」と考えるなら、相続財産の寄付について検討する余地はあるでしょう。

(松岡 敏行/税理士)

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