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元NHK・山本浩アナが語る スポーツ実況・解説のあるべき姿

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 ゴールを決めたら「ゴール! ゴールゴールゴール!」と絶叫が耳障りな実況、スポーツの本質とは関係のない「亡き母に捧げるメダル」など、「お涙頂戴ストーリー」をここぞとばかりに探す姿勢。

 スポーツ中継は果たしてどうあるべきなのか――サッカーをはじめ、野球やアルペンスキーなど数多くの競技に携わってきた元NHKアナウンサーの山本浩さん。引退したものの、今もラブコールの絶えない“実況のカリスマ”に、放送席のドラマ、そして目指すべき中継のあり方を聞いた。

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 大切にしているのは、放送で生まれる感動を自分でのみ込まないということです。叫ぶのではなく黙って、視聴者に感動する時間を渡す。

 解説者が答えたことに対しても、相づちは打たない。顔ではうなずくんですけど、視聴者が解説の声をそのままのんでくれるように、「そうですか」といって止めないんです。ただし、あまり黙っていると「本当に聞いてるのかな」って疑われるので(笑い)、必要なところでは相づちを打ちます。

 ぼくらの仕事は耳にしか届かないので、試合中、解説者へ紙に書いて質問することもあるんですね。時には指差したり、背中を叩いたりもします。言葉で質問をすると、「そうですね」とか「ええ」で最初がにごってしまう。「今のはね」っていきなり解説にいかせたいときは紙や手を使います。

 ほら、縁のない写真ってありますよね、そういう感じです。もちろん若いうちはできませんよ。加茂周さん(元サッカー日本代表監督。現在は解説者)の背中を叩いたりするわけですから(笑い)。

「残りあと3分」とか「これに勝つと3連勝です」とか、わかり切っていることは言いません。

 ボールが動いているときに「天皇杯の準決勝です」って言って逃げちゃうのも、隣にいたら紙出して「そんなこと言うな!」って怒ります(笑い)。第〇回など数字を出すと締まるんですね。自分も締まるし、空気も締めることができる。だから試合に変化がなくてゆるんでしまったときに、そこへ逃げようとしてしまう。でもこれはやってはいけないことです。

 解説というより聞き手側にヒントがあって、どう水を向けるかっていうのが大事なんです。

 最初に「見どころはなんですか」って聞くようじゃダメ。“こう質問するのが放送だろう”って形から入るのではなく、わかっているなら言い切っちゃっていい。俊足の選手が、前の試合で脚を痛めてしまった。そこが見どころであるなら、最初から「今日も脚は切れています」と言えるかどうかです。インタビューでも同じです。新人選手が得点を挙げて勝つと、ヒーローインタビューで「先輩のおかげです」とか言うんですよ。

 そう言われる可能性を見極めてから殻をつつかないと、卵の“黄身”は出てこないんです。白身だけで。こいつは先輩を差し置いて「おれがやりました」って(中山)ゴンちゃんみたいに言えるタイプなのか否か。それを知っておかないと、質問の入り方を間違えちゃうわけです。

 解説者には自分の血の通っているサイズでものを言ってもらいたいですね。選手を引退したばかりの解説者だったら、選手時代の苦い思い出とか喜びだとか、そういったものをフレッシュにもっていますよね。

 全体のフォーメーションがどうとかではなく、選手目線の話をしてくれるとああそうなんだってなるでしょ。それを加茂さんが語っても、意味がないわけです。40年前だろ、選手だったのは…ってなりますからね(笑い)。

 寿司店に行ったら寿司を頼む。新鮮なネタがあるのに、火を入れて食べるのはもったいないですよね。お客さんも、寿司が食べたくて寿司店に来るわけですから。

※女性セブン2015年2月12日号


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