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「模倣犯」出現に懸念、報道は制限されるべき?

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心理学では「模倣」を「社会的学習」と呼び重要な方法と位置づけ

いわゆる「つまようじ事件」の報道から、その「模倣犯」が次々出現するのでは?といった懸念があります。ちなみに他人の行動に影響を受けることについては、例えば18世紀にドイツの哲学者ゲーテが「若きウェルテルの悩み」を出版してすぐ、ヨーロッパ各国で若者の間に自殺が相次いだことが挙げられています。

このような現象は「模倣効果(copycat effect)」といわれるものですが、「模倣」自体は問題ではありません。それどころか、心理学では他人の行動から学ぶことを「社会的学習」と呼び、人が新しいことを学習する上での重要な方法と位置づけています。

メディア報道と「模倣犯」の因果関係は立証されていない

問題は、それが犯罪行動の場合です。つまり、マスメディアの報道が「模倣犯」を誘発しているのではないかという議論です。これについては、学校などでの無差別発砲事件が多発する米国で研究がなされていますが、今のところ研究者の間では、「模倣犯」については、その証明や分析が非常に困難であるというのが定説です。よって、マスメディアの報道と「模倣犯」の因果関係については、個別の例があって一見明らかなようでも、実証的には確たることがいえないのが現状です。

一方、自殺報道については、有名な芸能人の自殺報道の後に若者の間に自殺が増加するなど、連鎖反応を引き起こす要素は認められています。したがって、マスメディアもすでに配慮しているようです。例えば、鉄道自殺などは、詳細については報道されていません。

犯罪報道では、犯人を有名人化・偶像化しない配慮が必要

しかしながら、犯罪は、自殺と違い一般の治安に与える影響がはるかに大きく、したがって報道機関が犯罪を取り上げることは当然といえます。問題は、その取り上げ方です。というのは、マスメディアの報道と「模倣犯」の因果関係については直接的な関係ははっきりしないにしても、示唆などの間接的な関係は指摘されているからです。つまり「模倣犯」の全部ではないにしても、一部には重大事件を真似することによって社会的な注目を集めたがっている者がいることが認められています。

これを防ぐ手立ては、いわゆる「センセーショナリズム」に陥らないことです。いわば自殺報道と同じような配慮が必要といえます。つまり犯人を有名人化・偶像化しないことです。具体的には、犯行の手口や犯人の性格・趣味などの詳細を報道しない、犯人の名前はすぐには報道しない、が挙げられます。

また、事件が起きた後に、詳細がわからないまま拙速に犯罪心理学者などの解説を報道しないことです。というのは、一見単純な「模倣犯」と見られる背景には、複雑な要因がある場合が多いことがわかっているからです。安易な解説は間違った結論に導く危険性が大きいといえるでしょう。

(村田 晃/心理学博士)

カテゴリー : 政治・経済・社会 タグ :
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