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「日本最古のラーメン店」の味は?

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現在、日本全国には3万軒を超えるラーメン店があるらしい。それだけの店が生き残りをかけてオリジナリティを競い合っているのだから、醤油、味噌、豚骨といった味にとどまらず、ダシの取り方からトッピングの種類まで細分化が進むのも無理はない。

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だが一方で、どの街にも流行り廃りと関係なく営業を続ける、昔ながらのラーメン店がある。そういう店の定番は、なんといってもチャーシューとメンマが載った素朴な醤油ラーメンだろう。ラーメンがバラエティに富む以前の標準規格ともいえるあのスタイルは、いつ、どこで確立したのか?

その有力候補が、東京ラーメンの元祖といわれる「来々軒」だ。この店は、横浜税関に勤めていた尾崎貫一さんが脱サラし、明治43年(1910年)に浅草で創業。横浜の南京街から中国人料理人を集め、本場の広東料理を安く提供する庶民向けの料理屋として大成功したという。『にっぽんラーメン物語』(小菅桂子/講談社+α文庫)によると、来々軒の「シナソバ」は、鶏ガラと豚骨、野菜で取った醤油味のスープ。小麦粉に卵、カンスイを使った中国式の手延べ麺(昭和初期から機械打ちへと移行)。具は、金串に吊るしてかまどで焼いた焼き豚にシナチク(メンマ)、刻みネギだけのシンプルなものだったそうだ。

ただ、残念なことに、来々軒は戦後2度移転した末、昭和51年(1976年)に閉店している。当時と変わらない味を今食べることはできないものかと調べたところ、来々軒より後れること2年、大正元年(1912年)に神戸で創業した「中華そば・大貫(だいかん)本店」という店があった。おそらく、これが現存する最古のラーメン店。創業者のひ孫であり同店の4代目・千坂 創(はじめ)さんに話を聞いた。

「当店は大正元年、神戸の外国人居留地に創業しました。創業者は私のひい爺さんの千坂長治。居留地初の中華料理店『杏香楼』からシェフを招いて、広東料理の味をベースに中華そばのレシピを開発したそうです。以来、具材や製法は一切変えていません。強いていうなら、中華そばからやきめしまですべてのメニューに使っている醤油ダレは、103年間継ぎ足しながら熟成させているので、味は少しずつ変わっているかもしれません。創業時よりも今の方が奥深い味になっていると思っています」

大貫本店は昭和27年(1952年)、2代目のときに尼崎に移転し、現在は3代目の哲郎さん、4代目の創さんが店に立っている。気になる「中華そば」の具材には、チャーシューとシナチク、刻みネギに加え、キクラゲが載っている。麺はやや太めのもっちりした自家製足踏み麺。意外だったのはスープだ。醤油味だが味噌が入っているのかと思うくらい濁っていて、少しのとろみとコクがある。

「濁っているのは、豚骨と鶏ガラを長時間煮込んだ白湯(ぱいたん)スープを使っているから。もとは創業当時、舗装されていない道で屋台を引いていると、ゴトゴト揺らされて自然と白湯スープになったと聞いていますが、本当のところはどうでしょうね(笑)。創業者は浅草・来々軒の中華そばも食べていたそうですが、味の参考にしたわけではないと聞いています。大正時代には手に入る食材も限られていたでしょうし、今みたいに製麺所もないから自分のところで作るしかなかった。1人前ずつ湯がくためのザルや、シャワー付きのお玉のような道具にしても、うちの初代や2代目が難波の道具屋筋で作らせたんです。そういう条件のなかでできることを工夫して、この味になったんやと思います」

大貫本店は、のれん分けやチェーン展開で店を増やすこともなく、時代に合わせて味を変えるでもなく、地域の人に愛されながら同じ味を守り続けた稀有な店だ。千坂さんは「同じことを続けてこられたのも、途切れずタレを継ぎ足してこられたのも、毎日食べに来てくださるお客様がいたからこそのこと」と語る。ラーメン黎明期の面影を残す、原点に近い1杯は、尼崎の街の中華屋さんの看板メニューとして生き続けていたのだ。

(宇野浩志)
(R25編集部)

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