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佐川が2年連続パンクの可能性 宅配便の仕組み崩れる凶兆か

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 ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便による三つ巴の宅配戦争は、佐川急便が王者・ヤマトに戦いを「仕掛ける」ことで激化した。だが、その佐川の急拡大は、一方で大きな歪みをも生んでいた。結果的に佐川はアマゾンとの契約を終了する。“宅配ビッグバン”と呼ばれる危機を迎えた宅配業界の今を、ジャーナリストの横田増生氏がリポートする。

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 佐川にとってアマゾンとの取引は、両刃の剣だった。アマゾンは取扱個数では、最大手の荷主であったが、運賃が安かったからだ。ある佐川急便の関係者は、「清水の舞台から飛び降りるつもりで、アマゾンの仕事を請け負った。それくらい運賃は安かった」と話す。

 しかし利益の急減に危機感を抱いた佐川急便は、2012年に入り、それまでのシェア至上主義から、利益の追求に方針を切り替えた。安い荷物の運賃の荷主には、値上げを要請し、値上げを断った荷主との取引から手を引いた。

 その結果、佐川急便は2014年3月期、宅配便業務開始以来、初めて取り扱い個数が前期を下回った。13.5億個から、12億個強となり、業界シェア38%台から5ポイント落として33%台となった。

 反面、運賃単価が上がったため、佐川急便を含むデリバリー事業部門の2014年3月期の営業利益は363億円に上り、利益率は5%台に乗った。

 しかしその恩恵は、まだ下請け業者にまで至っていない。九州に本社を置く佐川急便の別の下請け業者の社員もこう嘆く。

「佐川から下請け業者への値下げは決定事項として一方的に通知されてくるんです。うちにとって佐川は最大手の取引先なのですが、佐川の仕事は、拘束時間が長く運賃も安いので、ドライバーが敬遠するようになってきています」

 同社もまた佐川からの値下げ要請の影響で、前回の決算で売り上げを一割以上落として、赤字に陥っている。この先も取引を続けるかどうかは、経営陣の判断になる、と言う。

 佐川急便の広報部に二回の値下げについて訊くと、同社の山口真富貴・課長からは、「協力会社との取引内容については、コメントできない」という回答が返ってきた。

 下請け業者に対する運賃値下げは、佐川急便の社内でも評判が悪い。その影響で配達遅延まで引き起こしたからだ。

 佐川急便は2013年度末、「消費税率引上げによるお届け遅延について」というプレスリリースを発表している。

「4月1日に実施される消費税率8%への引上げに伴う駆け込み需要により、お荷物の配達が3月に集中しているため、一部の地域におきましてお届け遅延が発生しております」  業界でいう“パンク”を起こしたというのだ。

 佐川急便の40代の営業マンはこう話す。

「営業所のなかには、集めてきた荷物を発送する作業まではできていたけれど、安い運賃を嫌って、臨時で幹線輸送を行ってくれる下請けのトラック業者が見つからなかったのも、年度末に“パンク”した原因の一つでした。現場にとって、幹線輸送が集まらないことは今でも大きな頭痛のタネとなっています」

 佐川急便社内では、2014年の年度末、再び“パンク”を起こさないよう、まだ大型免許をとっていない現場の管理職に免許をとるようにという指示が出ている。大型トラックをリースして、管理職が運転することで乗り切ろうという話もある。

 別の佐川の営業マンは現状に強い危機感を抱いている。

「運賃の値下げ圧力は高まり、その一方で、常に今までより高いサービスレベルを求められています。これ以上運賃が下がれば、宅配便というシステム自体が崩壊するんじゃないか、と恐れています」

 一昔前まで業界には、「困ったときの佐川頼み」という言葉があった。他の宅配業者から断られた荷物でも佐川ならどうにかして翌日に運んでくれる、という意味だ。そうしたいざという時に無理が利くという余力が、佐川がこれまで伸びてきた理由の一つだった。

 佐川急便にとって、目の前の課題は、この年度末をどう乗り切るのか、にある。前年のように、「駆け込み需要」という特殊要因がないのに、二年連続で“パンク”を起こしては、佐川急便の看板に傷がつき、不信感から荷主離れへとつながる恐れもある。

 依然として業界二位のシェアを握る佐川が二年続けてパンクを起こす可能性があるということは、今では“社会インフラ”となった宅配便の仕組みが制度疲労を起こし、この先、崩れ落ちてしまう凶兆となるのかもしれない。

※SAPIO2015年2月号


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