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「笑・笑」はアウト?商標法違反のライン

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福山市内の居酒屋「笑・笑」に商標権を侵害した疑い

広島県福山市内の居酒屋「笑・笑」に捜索が入ったとの報道がありました。「居楽屋 笑笑」などの飲食店を経営する株式会社モンテローザの商標権を侵害した疑いです。

商標権の侵害にあたるかどうかは、商品または役務の出所に誤認・混同を生ずるか否か、具体的には、「商標が同一・類似か」および「指定商品・役務が同一・類似か」で判断します。モンテローザは指定役務を「飲食物の提供」としており、今回、捜索の対象となった店は「居酒屋」ですから「飲食物の提供」に該当します。したがって、商標が、同一または類似であれば、モンテローザの商標権を侵害したことになります。

客観的に判断すると、商標権侵害が濃厚

そして、商標の類否判断は、簡単にいうと、第一段階として、商標の(1)外観、(2)称呼、(3)観念を対比して、そのうち一つでも同一のものがあるか否か、第二段階として、一つが同一である場合でも、他の二点が著しく相違したり、その他取引の実情などを考慮して、誤認混同をきたすおそれがないかどうか、という枠組みで判断します。

この枠組みにしたがって判断すると、第一段階について、(1)外観は、モンテローザの商標は「笑」という字が並んで「笑笑」ですが、福山市内の居酒屋の看板は「笑・笑」であり、非常によく似ています。(2)称呼は、いずれも「わらわら」または「しょうしょう」で同一です。(3)観念は、両方とも、「楽しい、あるいは笑いの絶えない酒場」が想起され同一といえるでしょう。

第一段階では、3つの要素のうち少なくとも2要素が同一ですが、次に第二段階で誤認混同をきたすおそれについて検討します。外観の主な相違点は、「笑笑」の間に「・」があるかどうかであり、著しい相違ではありません。また、取引の実情も、モンテローザは福山市内でも「笑笑」を展開しており、需要者層は重なります。そうすると、取引の実情を考慮しても、出所の誤認混同をきたすおそれがないとは言えないでしょう。よって、客観的には、商標権侵害が濃厚です。

侵害罪は故意犯のため、侵害の故意があったかどうかが争点に

他方で、福山市内の居酒屋「笑・笑」は「15年ほど前から福山市内で営業をしている。そのころは福山市内にはモンテローザの『笑笑』はなかった」などと述べているようです。まず、「笑・笑」に先使用権が認められるかが問題となります。先使用権が認められる場合は、商標権侵害には該当しませんが、モンテローザの商標権が登録出願される以前から、不正競争の目的なく、その登録商標と同一または類似の商標を使用しており、かつ、それが需要者に広く認識されていたことなどの要件を満たす必要があります。

次に、商標権登録後、モンテローザが、当初は福山市内で営業をしていなかったとしても、侵害の成否には影響しません。なぜなら、例外的な場合を除いて、商標権の効力は全国に及ぶからです。なお、侵害罪は故意犯のため「笑・笑」に侵害の故意があったかどうかは争点になるかもしれません。ここでは、問題点の指摘にとどめておきます。

他人の登録商標に「タダ乗り」して利益を得ようとするのは論外ですが、そのような意図なく他者の商標権を侵害してしまった場合でも、民事上の責任が生じることがあります。そのようなことにならないよう、事業を始めるときや新商品を製造販売するときなどは、知的財産法に詳しい弁護士や弁理士に相談をして、知的財産リスクを軽減するよう努めておく必要があるでしょう。

(長谷川 武治/弁護士)

カテゴリー : 政治・経済・社会 タグ :
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