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ITベンチャーの参入で「常にアイデアを生み出せる球団」に変わった――横浜DeNAベイスターズ「第2幕」への新挑戦(前編)

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2011年、4年連続の最下位に沈んだ横浜ベイスターズ。ITベンチャーのディー・エヌ・エーが買収し、「横浜DeNAベイスターズ」として生まれ変わった。以来、セ・リーグの順位こそ最下位(12年)と5位(13・14年)と低迷しているものの、観客動員数は3年間で約1.5倍にまで増えた。

プロ野球人気の低下が叫ばれる中で、驚異的と言っていい数字だ。いったいどのような取り組みで、新しいファンに「きょうは横浜スタジアムに行こうよ」と言わせることができたのだろうか。球団広報の村田喜直さんに聞いてみた。(全3回)
動員増のキーマンは「アクティブサラリーマン」

――私もよく観戦に行くのですが、横浜スタジアムはいつも満員に近い感じを受けています。

村田:2014年シーズンの観客動員数は156万4528人で、2005年からの実数発表以降、ダントツの数字となりました。チームもクライマックス・シリーズ(CS)争いに加わり、事業面でも「アクティブサラリーマン」をターゲットにしっかりとマーケティングができた。その両輪が噛み合って、多くのお客様に来ていただくことができたと思います。

――「アクティブサラリーマン」とは、どんな層なんですか?

村田:実は参入2年目(2013年)に動員数が前年比22%伸びたのですが、その内訳は20代後半から40代前半くらいの男性が多かったんです。つまりそれは、前回優勝した1998年の横浜ベイスターズを球場やテレビで見ていたであろうという年齢層の人たちだったんですね。

――あの「大魔神」佐々木投手が活躍していた頃の…。

村田:そうです。そのときに盛り上がって球場に通っていたが、今は遠ざかっているという人たち。まずはその層を呼び戻すのが近道だと考えました。また、この年齢層の彼らは収入も安定してきて活動的でもあり、同僚や部下、彼女や奥さん、または子どもを連れて球場にやってくる。そんなキーマンの男性を、私たちは「アクティブサラリーマン」と呼んでいます。

そのような男性が一緒に観戦したい人を連れて来やすいように、女性や子ども向けのイベント企画やチケット戦略を進めたらどうかと考えたのですね。3年目(2014年)の昨季に動員数をさらに伸ばせた要因は、そこにあると思っています。
とにかく「突飛なこと」に挑戦できた1年目

――そういえば、参入1年目はいろいろ話題を呼ぶ取り組みがありましたよね。

村田:実は1年目(2012年)は、正直ドタバタで参入した感じだったんです。とにかく面白いこと、突飛なことをやってみようと考えました。試合に満足できなければ返金する「全額返金!?アツいぜ!チケット」などは、賛否が非常に大きかったですけど(笑)。そうした話題づくりにフォーカスした1年目があって、2年目(2013年)はその経験を活かしながら、マーケティングデータを採りました。

――3年目(2014年)の動員数は、前年比で10%増くらいだとか?

村田:正直、2年目の22%増より、3年目の10%増の方が難しかったですね。2年目はずっと最下位だったのが5位になり、CS争いにも参加できて動員数も大幅増を達成できました。これで昨季が2年目よりも下がったら、動員増が一過性で終わってしまうという危機感を感じていたからです。

そういう意味でも昨季はすごく大事なシーズンでしたが、3試合に1試合は「大入り」を記録できました。ただ、残る2試合は平日ナイターですからね…。さすがに2015年は、動員数の伸びは鈍化してしまうかもしれません。でも今季もアクティブサラリーマン戦略を強化し、もっともっとアイデアを出して、球場観戦に来ていただけるように頑張ります。

また、チームがCSに出場するなどもっと強くなることも重要です。球団経営って、チームの成績向上と、事業面での盛り上がりの「両輪」なんですよね。

――チームが強ければ、ファンも盛り上がります。

村田:エンタメ要素がなくて、戦力強化だけにお金をつぎこんでも、DeNAベイスターズファンの気持ちとマッチしない。チームが強くても観客が盛り上がっていなかったら、さびしいですよね。反面、エンタメ化といって事業面ばかり盛り上げていても、「野球を軽視している」とファンが冷めてしまう可能性も…。その点いまは、その両輪がうまく回り始めたと手応えを感じています。

もちろん、チームは強いほうがいいです。そのために高田GM以下チームスタッフも全力で選手をサポートして、選手は全力でプレーします。事業面でも、私たち球団職員が全力で盛り上げていきます。同じイベントを繰り返すだけなら、動員数を増やすどころか現状維持も難しいでしょう。だから、新しいものを常に生み出し続ける必要があるんです。
全職員と全選手が「次の野球」のアイデアを出しあった

――常に新しいものを生み出すには、パワーが要りますね。

村田:2014年3月に球団名義で『次の野球』(ポプラ社)という本を出しました。これは横浜DeNAベイスターズの全職員と全選手が「次の野球」をみんなで考えていきましょうよ、というアイデア集なんです。

――足湯に浸かりながら観戦とか面白いですね。イニング間に水着でウォータースプラッシュというのも、夏は気持ちいいかもしれません。

村田:東京サマーランドにも突然水が噴き出すプールがありますよね。あと泡をかけるクラブイベントなんかも人気です。球場で結婚式はありますが、お葬式だったらどうか。こうしたアイデアをすべて実現したいということではなくて、アイデアが常に出てくるようにすることが大事なんです。

もともとは社内向けのブランディングツールで、頭が固まってきたらこの本を開けるようにと、各社員に配られているものなんですね。「アイデアを出し続ける」というのは重要な球団カルチャーで、組織が停滞しないように配置転換もよくありますし、私のように球界、スポーツ界、エンタメ界の仕事を一切経験していない人も中途入社で入ってきます。

そんなふうに常に新陳代謝を繰り返し、常に新しいことを生み出せる組織を意識して経営されているところは、「ベンチャー資本の球団ならではだな」と感じます。

――確かに新聞社や電鉄会社とは、企業風土もだいぶ異なりますよね。

村田:参入が決まったときに、コーポレートアイデンティティを「継承と革新」と付けたんです。これはまさにその通りで、例えば野球のルールは絶対に変えられませんよね(笑)。それと同じように、これまでのプロ野球のよいカルチャーは残したい。

じゃあ、それをより「継承」されるようにするためにどうするか。新たな魅力を付加したり、伝え方を変えたりする。そういう意味での革新を続けることによって、横浜DeNAベイスターズだけでなく、「野球」や「プロスポーツ」の魅力が多くの人に伝わり、継承されるようになればいい。その考え方が、すべての大前提としてあると思っています。

■次回、中編:映画『ダグアウトの向こう』が、あえて選手の「聖域」を撮影した理由 は、週末に公開予定です■

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