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本は一万冊読むべし!? 松陰の「読書術」――齋藤孝が語る“吉田松陰”(2)

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本は一万冊読むべし!? 松陰の「読書術」――齋藤孝が語る“吉田松陰”(2)

 今年のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」は吉田松陰の妹である文が主役だ。吉田松陰といえば、「尊敬する歴史上の人物」「上司になってほしい有名人」などのランキングで必ずといっていいほど上位にランクインする人物。
 1830年、長州藩(現在の山口県)に生まれ、1860年に斬首刑に処されるまでわずか30年の間に、後の明治維新への機運を高め、伊藤博文や山縣有朋らを輩出した松下村塾を設立するなど、多大な功績を残したことで知られる。

 そんな松陰が残した言葉たちを、教育学者で現在はTBS『あさチャン!』のメインキャスターとしても活躍している齋藤孝さんがひも解き、分かりやすく説明してくれるのが『超訳 吉田松陰語録 運命を動かせ』(キノブックス/刊)だ。
 松陰はどのような人物だったのか? 今回は齋藤さんに、吉田松陰の実像について語ってもらった。その後編だ。
(新刊JP編集部)

■本は一万冊を読むべし! 吉田松陰の「読書のススメ」

――本書は私たちの仕事の場面でも教訓になる言葉が多くありました。

齋藤:仕事というテーマでいえば、「講孟余話」の中で松陰が書いているのですが、適度に仕事があることで心に張りが出ますよね。もちろん多すぎてもいけないけれど、逆に仕事がないというのもストレスになる。一流の人はかなりの仕事量を抱え込んでいるけれど、みんな楽しそうに仕事をしています。それが理想的だと思います。
また、先ほども少し出てきましたが、日本人は失敗を怖がっているところがあります。でも、松陰は失敗を笑い飛ばすんですよ。安政元年にペリー艦隊が横浜に到着したとき、金子という同志と一緒に密航を企てるんです。ところがそれを失敗してしまう。金子は「なんてついていないんだ!」と悔しがるのですが、松陰は失敗を笑うんです。彼は失敗が逆に志を強くすると思っていたんですね。失敗をしたり、苦しかったりするときは落ち込んだ顔をしないといけないように思いますが、松陰に倣って笑ってみてはどうだろう、と。

――そのエピソードは本書の中でも印象的でしたね。

齋藤:また、日本人は交渉が下手だということは今でもよく言われますが、実は松陰がもう150年も前から指摘しています。交渉もせずに幕府が日米和親条約を結んでしまってから、その不平等条約が後々まで日本を苦しめることになるのですが、このときの日本は相手に譲ることだけを考えて、こちらの利を考えなかったんです。松陰はそんな幕府を「腰抜武士」と言っています(笑)。その条件ならば、こちらの条件も呑んでもらわないといけないというような交渉をしないといけなかったのだと思います。

――NHK大河ドラマの「花燃ゆ」は吉田松陰の妹である文が主人公ですが、吉田松陰の家族観はどのようなものだったのですか?

齋藤:これは「妹千代宛書簡」から垣間見ることができます。そこでは3つのことを大事にしていると書いてあって、一つは先祖を尊ぶこと、次に神様を拝むこと、そして家族や親類と仲良くするということです。
当時は親族がたくさんいて、兄弟が多いのは普通なこと。松陰も兄と弟が一人ずつ、そして妹が4人いました(一人は早世)。また、兄弟が多いということは、従兄弟も多いんですね。だから兄弟姉妹や親類と仲良くやることが大事だと述べています。
「妹千代宛書簡」では子どもの育て方が書かれているのですが、この中で松陰は「見習いて」という言葉を使っているんですね。これは、子どもは何を教えなくても、親を見て習って育っていくという意味なのです。現代は共働きも普通ですから、子どもが親の姿を見習う機会が少なくなってきているように思います。だから、この松陰の言葉は何かハッとさせられるところがありますよね。

――齋藤さんは吉田松陰のどのような部分に共感を覚えたのでしょうか。

齋藤:本書の「国を思わない日はない」というところに書いているのですが、私は小学生のとき、日本は資源がない中でやっていかないといけない国であると学んでから、この国のことを考えない日がなくなりました。自分のことよりも、日本の行く先を案じて心が暗くなるときがあります。日本を良くすることを考えて勉強をするものだと思っていたのですが、日本の未来を考えていない人が少なくなっているように感じます。
でも、幕末から明治維新にかけてのあの時代、松陰をはじめ、たくさんの人が日本の行く先を案じていました。そこに強い共感を覚えましたね。彼らのエネルギーが日本をアジアで初めて近代化させたわけですが、今は個人主義で連帯も弱く、エネルギーが集まりにくい状況にあります。
現代の日本の教育では、“日本のため”という意識を持たせにくいと思います。海外に目を向けることは大事ですが、松陰のように“日本のため”という意識を常に持つことが必要です。海外で道を切り開いてきた人たちはきっとそういう想いを持っていたのではないかと感じますね。

――では最後に、読書についてのお話をお聞きしたいと思います。本書では「一万冊の本を読破せよ」と書かれていますが、一万冊とは膨大な量ですね…。

齋藤:松陰は「万巻の書」という言葉で表現しています。要はたくさんの本を読まなければ、まともな仕事はできない、と。意味合い的には「たくさんの本」ですが、「万巻」の文字通り「一万冊」と受け取っていいでしょう。そのくらい本を読みなさいと言っているんです。
松陰は読書による鍛錬をすすめているわけですが、当時は本を読み、知識や教養を深めることは当たり前でした。ところが今は情報が重要視されて、知識や教養は軽視される傾向にあります。私は知識や教養は非常に重要だと思っていますし、「とりあえず松陰も言っているのだから一万冊の読書にチャレンジしてみよう」とこの本で書いているわけですね。でも最初から一万冊はかなり難しいと思うので、まずは百冊、そして千冊という感じで読んでいくといいと思いますよ。

(了)


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