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旅する映画 – 人種や国民性だけで語れない人間の楽しさ –

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あなたにとって、映画とは何ですか?

突然ですが、あなたは映画が嫌いですか?

映画が嫌いという方は、なかなかいらっしゃらないと思います。多くの人が好み、また誰しもが生涯に必ず一度は経験するであろう、「映画を鑑賞する」という行為。では、皆さんにとって、映画とは何でしょう? 人それぞれ、「映画とは……」という定義や活用方法は異なるかと思います。

家族で楽しむ娯楽の1つであるという方もいれば、映画こそ我が人生というような映画ファンの方もいらっしゃるでしょう。あるいは、失恋をした時には泣ける映画DVDが最高の解毒剤だ、なんていう方もいらっしゃるのではないでしょうか。

さて、人それぞれ映画を鑑賞する楽しみ方や目的があるなかで、映画はこんな素晴らしい一面も持っています。

実際にそこへ行かずとも、世界の国々の景色や習慣、リアルな会話を感じることができる


Jean Vaella「Barcelona!」より

そう、ある時には良き教材として、自分の足代わりとなって、憧れの世界の国々の景色や歴史、文化や話す言葉のリズムや響きを学べ、体感できます。

映画は世界を映し出す万華鏡である

それでは、“世界をリアルに感じることができる”ツールとしての映画紹介、映画から考える世界を読み解く考察シリーズ、【旅する映画】、今回第一回目の映画をご紹介しましょう。

『スパニッシュ・アパートメント』

2001年 /フランス•スペイン映画/監督 セドリック•クラピッシュ

ストーリーは、スペインに留学に来たフランス人留学生クザヴィエと、世界中各国から彼と同じように、スペイン留学に来ている貧乏学生たちとの共同生活場所、“スパニッシュ・アパートメント”で起きた喜怒哀楽の留学日記。家賃を浮かすために、なんと7人もの男女混合同棲生活。留学生それぞれの国籍も、フランス、スペイン、イタリア、ドイツ、ロシア、イギリス、オランダと、バラバラです。この“感動あり、笑いあり”、なストーリーの魅力はやはり、多国籍人との共同生活のリアルさ、面白さ。

実際に留学経験や国籍の異なる友人との共同生活の経験が無くても、「やっぱりこうなるのか〜」という可笑しさや、実際に留学先でシェアハウスやホームステイを経験したことがある方にとっては、「この騒々しさ、懐かしい!」と感じることができるのでは?

実際に、ひとつ屋根の下で一緒に暮らしてこそあぶり出され、初めて気づく、国民性による習慣の違いやNGトークがありますよね。これは実際に私が体験したことですが、共同生活を送っていたとき、アメリカ人の友人とデリで買ってきたロコモコのお弁当(白米の上にハンバーグを載せたハンバーグ丼のような料理)を家に戻り、一緒に食べた時のこと。

途中で「ビールを冷蔵庫から取って来るね!」と言い、席を立った彼のお弁当を見てビックリしました。白米にグサっとお箸を突き刺していたのです。ご飯にお箸を突き立てるとは、縁起の悪いこと、行儀の悪いことだと教わってきた私にとっては、少し嫌悪感を抱いてしまうような光景でした。しかし、私は彼の行いを正す権利があるでしょうか?

自分にとっての“当たり前”の感覚や常識が、自分が日本人であるからこそ培われたモノであるならば、自分にとっての“正しさ”が、世界万人にとっても同じとは限りません。ましてや、自分が、「え!?」と感じたような嫌悪感や衝撃を、他者にも与えているかも知れません。


Tomoyasu Ishii 「【500キロ徒歩】サンチャゴ巡礼の旅(前編)」より

例えば麺類をすするときの「ズズズーッ」という音は、欧米人などにとっては、マナー違反と見なされ、嫌がられることもあります。麺類は音を立てすすって食べたほうが、より美味しそうに感じると思う私ですが、欧米人的には、食事の際、音を立てて食べるのは無礼というのは当然。それぞれが感じることの深層心理や感覚に、国民性や各国ならではの美意識、価値観があるものです。

さて、ではそんな“違い”を感じながら暮らす共同生活で、ストレス無く、無礼にならずに暮らすには? 違いを乗り越え、友情を育み、国際的な感覚を持つ、ということはどういったことなのか?

笑いものにするのと笑いにすることは違う

映画のストーリーに話を戻しましょう。映画の中でも、これだけの多国籍人が寄り添って生活をしていると、やはり問題は起こります。このそれぞれの国民性や慣習の“違い”を、茶化すキャラクターが登場します。それがイギリス人のウィリアムです。ウィリアムはイギリスから、姉の留学先スペインへと旅行に訪れ、滞在中はスパニッシュ・アパートメントに居候するのですが、彼の言動に皆がイライラし始めます。

「ドイツ人って、皆バカ真面目なんだから!」などと、国民性、国籍をネタにして、茶化し始めるのです。そんな中、「スペイン人ってみんなこんな風に喋るよね」と、スペイン語を真似た言葉でいかにも、というような大袈裟な身振り手振りと独特のアクセントで話し出したウィリアムに、怒ったスペイン人女性はこう言い放ちます。

「皆って言うけど、あなたはスペイン人を何人知っているの?」

そう、私が実際に感じた生活習慣の違いや一緒に暮らすことで現れた価値観の違い、というものは、確かに国民性や出身地の違いからきているものかもしれません。しかし、だからと言って、「スペイン人だからこうでしょ?」、「日本人って皆こうだよね」、「アメリカ人は違う」などと、国民性や国籍をすべて一緒にしてからかったり、茶化したりするのはナンセンスである、ということを映画は伝えてくれています。

違いを笑うのではなく違いを笑い飛ばせ

とはいえ、やはり感覚や美意識、常識は各国それぞれ、違います。日本人らしさ、日本人の習性が逆にアイデンティティーや強みになることだってあります。そんなありのままの事実を、笑いものにするのではなく、笑い飛ばせばいいのです。

昔、こんなことがありました。アフリカ系アメリカ人の友人と一緒に鏡のあるバスルームで着替えを始めた際、彼女の綺麗に引き締まったお腹があまりにも黒くてビックリして言いました。「ねぇ!!あなたって、お腹も真っ黒ね!私と全然違うわ!」
私はアフリカ系の血を持つ女性の裸を生で見るのが人生で初めてだったので、その黒さに驚いたのです。こう言われて、彼女は怒ったでしょうか? 彼女は一瞬キョトンとしてから、大声でこう返しました。「当たり前じゃん、アタシはブラック(アフリカ系)なんだから!」
その後、彼女と2人で大爆笑しました。

これは、私にとっての、違いを笑いものにしたのではなく、違いを笑い飛ばした瞬間でした。

それでも人種や国民性だけで語ることをよしとしない

国際的な感覚というのは、こういったことなのではないでしょうか。エスニックな多種多様性、違いを笑い飛ばすこと。国民性や人種で一括にして決めつけ、語りたがるのはナンセンス。どんな国でも個人同士の血の通ったコミュニケーションをする大切さと楽しさ。

そんなことを考えさせてくれる、『スパニッシュ・アパートメント』。もし気になったら、是非ご覧になってみてくださいね。

(ライター:飯塚京子)

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