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岩盤規制改革は成長戦略につながるのか?

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【原英史・株式会社政策工房 代表取締役社長】 

岩盤規制改革 成果と課題                           (図表作成:政策工房)

 

岩盤規制改革 主な課題

この1年間の成果

次期通常国会の課題

<「これからの成長分野」を阻む岩盤規制>

農業

農協改革

△: 6月成長戦略で方向は決定

法案提出予定 ⇒法案の内容は?(改革完遂か骨抜きか?)

株式会社の農地保有解禁

-: 前進は限定的

予定なし ⇒踏み込めるか?

医療

患者申出療養(混合診療)

△: 6月成長戦略で方向は決定

法案提出予定 ⇒法案の内容は?(改革完遂か骨抜きか?) 

医学部新設

-: 2013年から議論継続しているが、前進は限定的

現時点でスケジュール不明 ⇒実現できるか?

介護

株式会社参入・イコールフッティング

-: 前進なし

予定なし ⇒踏み込めるか?

エネルギー

電力改革

○: 第二弾改革法案(小売参入自由化)成立

第三段(送配電分離)提出予定 ⇒法案の内容は?(改革完遂か骨抜きか?)

教育

公設民営学校解禁

△: 臨時国会に法案提出(国家戦略特区法)したが廃案

法案再提出予定?

<分野横断的な岩盤規制>

労働

労働時間規制改革

△: 6月成長戦略で方向は決定

法案提出予定 ⇒法案の内容は?(改革完遂か骨抜きか?)

外国人

就労資格拡大

△: 臨時国会に法案提出(国家戦略特区法)したが廃案 

法案再提出予定?

交通インフラ

インフラの民間開放(道路コンセッション解禁など)

△: 臨時国会に法案提出(特区法)したが廃案

法案再提出予定?

 

  安倍首相は2014年1月のダボス会議で「今後2年間で、残された岩盤規制をすべて打ち抜く」ことを宣言した。この方針は、その後6月に政府が公表した成長戦略(「日本再興戦略改訂版」)や、年末の総選挙での自民党公約でも踏襲された。

 
 現政権の成長戦略、つまりアベノミクス「第三の矢」の最大のポイントは、この「岩盤規制改革」を主軸に据えたことだ。過去の歴代政権も毎年のように成長戦略を公表してきた。いずれも「これからの成長分野」として農業、健康・医療、環境・エネルギーなどの分野を掲げ、政策的な支援・誘導を図ってきた。しかし、残念ながらいずれの分野も、いまだ「これからの成長分野」のまま。理由は、これら分野はいわゆる岩盤規制の宝庫で、新規参入や新たな創意工夫が厳しく制約され、ここに手をつけられずにきたからだ。

 
 規制改革というと、「大企業に便宜を図り、消費者や労働者の利益は置き去り」といったステレオタイプ的な批判がありがちだ。筆者は、政府の内部、自治体、民間などさまざまな立場で規制改革に関わってきたが、その経験からすれば全く見当はずれな批判だと思う。規制は、往々にして利権を生み出す。例えば、新規参入規制と参入済みの既得権者との関係を考えればわかりやすい。経済社会状況が変わって規制の必要性がなくなっても、規制が「岩盤」のように維持されたり、更に強化されたりするのは、こうした規制利権のためだ。大企業はしばしば規制利権の恩恵を受ける立場にあり、むしろ規制改革を阻む側にいることがよくある。

 逆に、そうした岩盤規制によって最も不利益を蒙るのが、消費者や一般国民だ。これも、過度な新規参入規制によって、商品・サービスの選択の余地が奪われている状態を思い浮かべればわかりやすい。岩盤規制改革は、「これからの成長分野」のくびきを解き放ち、国民全体・経済社会全体に利益が行き渡るようにするため、避けて通れない課題なのだ。

 
 6月の「日本再興戦略改訂版」では、「2年間で岩盤規制改革」の方針のもと、農協改革、保険外診療(混合診療)など、何十年も課題とされ続けてきた「岩盤中の岩盤」にも手を付けることを決定した。また、そのための切り札として「国家戦略特区」を活用し、いきなり全国一斉には難しい難題では、意欲ある地域(自治体・民間)と首相官邸が直結して改革を進める方針も示した。これらは、過去の成長戦略とは異なる画期的なことといってよい。

 
 一方で、懸念材料にも触れておく必要があろう。本当に実行できるのかどうかだ。

1)まず、6月に公表された「日本再興戦略改訂版」や「規制改革実行計画」では、まだ手のついていない岩盤規制がいくつも残されている。例えば農業分野では、「一般の株式会社は農地を所有できない」という規制などだ。

2)また、農協改革なども、6月時点ではあくまで、改革を進めるという方向性を決定した段階にすぎない。こうした改革は法案化・具体的な制度化が鍵だ。下手をすれば、法案化までの段階で骨抜きされてしまうおそれも否めない。

3)「国家戦略特区」もまだまだこれからだ。2013年の制度創設時に設けられた規制改革メニュー(容積率緩和、病床規制緩和など)に加え、秋の臨時国会で追加規制改革メニュー(外国人在留資格拡大、公設民営学校解禁など)を盛り込んだ法案が提出されたが、解散のため通常国会に先送りとなった。

 
 総じていえば、この1年間で法案として実現した岩盤規制改革はほぼ皆無(通常国会で成立した電力改革第二弾ぐらい)。安倍首相が「今後2年で・・」と約束してから、すでに1年が経過してしまった。約束は果たすために残された時間はあと1年しかない。2015年1月からの通常国会で、どれだけの岩盤規制改革を実現することができるかどうか。大いに注目する必要がある。

    

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記者:

霞が関と永田町でつくられる“政策”“法律”“予算”。 その裏側にどのような問題がひそみ、本当の論点とは何なのか―。 高橋洋一会長、原英史社長はじめとする株式会社政策工房スタッフが、 直面する政策課題のポイント、一般メディアが報じない政策の真相、 国会動向などについての解説レポートを配信中!

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