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「がん治療は不要」に非科学的と指摘の医師 過剰な治療は反対

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「抗がん剤は効かない」「手術をすることで寿命を縮める」――近年、このような「がん治療不要論」の声が大きくなっている。

 そうした「がんは治療せずに放って置いたほうがいい」という論を聞くと、“治らないなら、苦しい治療を受けたくない”と考える人がいても当然のことだろう。しかし、実際に“がんを放置”した患者を受け持った医師からは疑問の声が上がっている。

「ある患者さんの話です。最初に行った病院でステージ3の乳がんだと診断されましたが、“進行していないので治療しないほうがいい”と言われて放置していたら、がんが進行して骨に転移してしまった。慌てて私の病院に転院して来たのですが、結局亡くなりました。最初の時点で治療を受けていたら、助かった可能性は充分あったので非常に残念でした」

 そうしたケースを受けて、日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科医の勝俣範之さんは次のように指摘する。

「『がんは治療しないほうがいい』という主張には医学的根拠がありません。逆に、抗がん剤の治療の有効性が認められた論文は何百とある。1970年代、イタリアのミラノがんセンターによって乳がんの手術後に3つの抗がん剤を投与した人と投与しなかった人を20年間追跡調査した結果があります。

 投与しなかったグループでは、179人中48人(約27%)が再発しなかったのに対し、投与されたグループは207人中74人(約36%)が再発しませんでした。生存率も投与しなかったグループは25%ですが、投与したグループは34%。つまり、抗がん剤治療を受けた患者のほうが受けなかった患者より生存率が高く、再発率が低かった。それぞれ10%も違うのです。

 そして今は、より効果のある薬が開発されています。2014年には米国の研究で転移再発乳がんに新薬『ハーセプチン』(抗がん剤。日本でも承認済み)を投与した場合、10年生存率が75%から84%に改善されたとの報告があります」

 重要なのは調査の手法だ。

「『これまでに診てきた○○人の患者は治療しなくても治った』という医者の主観的な経験ではなく、科学的な手法を用いて比較しています。

 自分が診察した患者さんだけを対象にした場合、病状が悪化して病院に来なくなった人のデータは含まれない。治療をしなくても経過が良好な人のデータだけが、必然的に集まります」(勝俣さん)

 ただし、「過剰な治療はやめよう」という論には賛同できるという。

「ここ20~30年、拡大手術から縮小手術になってきているし、抗がん剤も進行がん患者さんへの過剰な投与はかえって命を縮めるということがわかってきています」(勝俣さん)

 治療をしなくてもがんが治ることはあるのだろうか。

「確かに、“ステージ0”といわれる超初期段階では、治療しなくても進行しない人がいる。しかし、進行する人は少ないながら確実にいます。今の医学ではそれを見極めることはできないし、進行してしまったら取り返しがつかない。また、治療の効果は“治る”か“治らない”の二択ではありません。

 治らないがんでも治療を続けることで、多くの人が仕事をしたり旅行に行ったりして“がんと共存”できるようになってきているのです」(勝俣さん)

※女性セブン2015年1月8・15日号


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