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【うちの本棚】241回 ありがとう涙クン!/塩森恵子

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 「うちの本棚」もこの記事が2014年最後のものになります。そこで『31日・水曜日』という大みそかを舞台にした塩森恵子の作品が収録されている『ありがとう涙クン!』をご紹介することにしました(今年の大みそかも水曜日ですし)。

 この1年を振り返りつつ、2015年、よいお年をお迎えください。

【関連:240回 春に眠る/布浦 翼】

 塩森恵子は『希林館通り』や「アフロディーテ」シリーズなどで知られると思うが、1974年に「週刊マーガレット」の『雪…雪…雪』でデビュー。以後「週マ」で活躍したあと「ヤングユー」などの大人向け漫画誌に移籍。2010年からは同人でBL作品も手がけている、ようだ。

 正直な話し「マーガレット」系の作品、作家はあまり読んでいなくて、塩森恵子の作品もこの『ありがとう涙クン!』しか読んでいない。さらに言えば、収録されているデビュー4作目の『31日・水曜日』が読みたかったために単行本を購入したにすぎなかったりする。塩森の作品リストを見ると、表題作の『ありがとう涙クン!』の前に『31日・水曜日』、後に『リスボン いま秋』が発表されたようだ。
ちなみに『ありがとう涙クン!』は、塩森の初連載作品となる。

 『ありがとう涙クン!』は、卒業を控えた高校生の話で、早々に私立大への進学が決まっている3人の男子が、卒業式に「ロミオとジュリエット」を上演するとこになるというもの。その台本を書くことになったのが泣き虫の主人公なのだが…。現役高校生にもかかわらず飲酒シーンがあるなど、現在の基準ではパスしないところもある。また全体としてどこか散漫な感じがして、初の連載作品ということで構成力に課題を残した印象だ。というのも、収録されたほかの2編の短編がよくできているので、よけいそう思えてしまう。

 『リスボン いま秋』は、日本人の大学生が旅先で知り合った少女との一週間の出来事を描いた作品。少女は某国の国立バレエ団のバレリーナで、講演で各国に出向いても観光することもできない窮屈な生活から、ひとりで抜け出し、主人公に出会う。自由を知らない、恋を知らない少女との触れないの中で、主人公は少女をバレエ団に帰したくないと思うのだが…。

 『31日・水曜日』は、大みそかの午前5時から元旦の日の出までを描いた作品で、東京・山手線沿線で主人公が出会う人々と主人公の心の揺れを描いている。24時間のあいだに出会うさまざまな人々を通して、大学生の主人公が感じた「生きる」という意味は発表から40年近くが経った今でも古くなってはいない。

 収録された3作は、どれもある種の期限がついているという共通性がある。『ありがとう涙クン!』では卒業式まで(約2か月)、『リスボン いま秋』ではバレエ団の帰国する土曜まで(一週間)、『31日・水曜日』は大みそかの1日という感じだ。たまたまなのだろうが、3作に共通していることで塩森の得意とするところなのかなと思ってしまう。

 今年は少女漫画を中心に取り上げてきました。まだまだ紹介したい作家や作品が山ほどあるし、少女漫画の有名作品や人気作家で取り上げていないものも多々あります。とはいえ少年漫画や劇画作品でも取り上げたいものもたくさんあって…という状況で、2015年はどうなりますか…とりあえず「うちの本棚」を眺めながら、除夜の鐘を聞きつつ考えましょう(笑)。

初出:ありがとう涙クン!/集英社「週刊マーガレット」昭和51年14号~18号、リスボン いま秋/集英社「週刊マーガレット」昭和51年41号、31日・水曜日/集英社「週刊マーガレット」昭和51年5号

判 型/新書判
定 価/340円
シリーズ名/マーガレットコミックス(MC 275)
初版発行日/1977年3月20日(所持しているのは1979年7月15日発行の5刷)
収録作品/ありがとう涙クン!、リスボン いま秋、31日・水曜日

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

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